第70話 イダ様のお願い
真面目な顔のイダ様に見つめられ、固まる私。
――うむ、イケメンである。
聖騎士のキラキライケメンが霞むほどのイケメンに、思わずじっくり見てしまう。これが黄金比の顔というヤツだろうか。
『この国に住むのは、嫌かい?』
「え」
イダ様の言葉で現実に戻る。
――この国に住む?
いつかは、どこかに定住したいとは思う。
しかし、それがこの国なのか、と言われるとわからない、というのが正直なところ。今回は聖女に会うためが主な目的だし。
ここまで同行してくれた聖騎士たちや聖女候補のヘルカさんには、よくしてもらったけれど、この国の人たちが皆そうだとは限らない。
むしろ、こんな人たちのほうが一部なんじゃないか、と思ってしまう。
特に、パレードみたいな形で街に入ってきた私たち。しっかり目立ってる。
そんな私が『愛し子』と呼ばれる存在と知ったら、色々ちょっかいだしてくる存在もいるんじゃないかと思うのは、考えすぎだろうか?
神罰が下るとは言っていても、そもそも、ちょっかいをかけられたくはない。
私が答えに困っていると、イダ様が優しく笑みを浮かべる。
『貴女は主神たるノナ様の愛し子。だからどこに住んでも構いはしない。貴女の自由だ。しかし、私たち四神の手が届くところは限られている……この世界には私の他に三人の神がいるのは知っているよね?』
諭すような声で語りかけてくるイダ様に、私はコクリと頷く。
移動している間に、神様情報についてはマーコやニーコがチョコチョコ教えてくれてはいた。
この世界の創造神はノナ様だけれど、その世界を実際に管理しているのが四神と言われる神様なのだと。
『それぞれに管理している管轄はあるものの、私たちの手が入らないような場所もある。四神の管轄が接する場所がそうだ』
イダ様が主に管轄しているのが、ここアルタン帝国と、その属国。モブル王国もその一つらしく、だからレザマの街の教会で、マーコたちに話しかけることができたらしい。
モブル王国の先、山脈を超えたところにはナークス王国という国があって、ここは夏の神様の管轄で、その山脈付近は神々の力が反発しあってしまうそうだ。
大陸の中央にあるフォロンの森に至っては、四神の管轄が接するから、反発する範囲が広いらしい。
『貴女には、神獣たちがついているとはいえ、私たちの力が及ばない場所では、残念ながら何かあった時に力にはなれない』
「なるほど……でも、それって、本来、普通のことでは?」
『う、うむ?』
確かに、神様の力で守ってもらえるのは、非常にありがたいことではある。
でも、あちらにいた時だって、申し訳ないけど、神様に守られてたと感じたこともない。そもそも、こうして神様と話をすることなんて、どんなファンタジーか、という話なのだ。
「ただでさえ、神獣のマーコにニーコ、それにユーコまでいる私には過剰なことなのではないか、と思うのですが」
「雅」
「雅~!」
『……』
私の言葉に、マーコとニーコが嬉しそうに抱きついてきて、ユーコは腕を組んでムフーと鼻息を吐く。
その様子に、イダ様は目を大きく見開いてから、フフフと笑った。
『それでも、私たちは貴女たちを見守らせて欲しい。だから、どこかに定住するのなら、四神のうちの誰かの力が届く場所に住んでくれ。これは私たちからの《《お願い》》だ』
眉を八の字にしたイケメンに頼まれてしまうと、私も強くは言い返せない。




