第68話 イダ神殿の聖女との邂逅
聖騎士一行が大きな扉の前に止まり、騎士たちは下馬する。それは馬車に乗っていた聖女候補のヘルカたちも同じ。
そして私もマーコから降りると、大きな猫の姿のマーコとニーコが、袴姿の人型へと変わる。
【おおっ!】
【人の姿にっ】
【なんだ、あの格好は】
【こ、子供!?】
【変な服~】
神殿の前に集まっていた聖騎士たちを見にきていた人々が、あちこちで声をあげている。相変わらず、何を言ってるかわからないけれど、きっとマーコとニーコのことだろう。
「うるさいなぁ」
マーコが不機嫌に言う。ニーコは半目になってジロッと見てる。
【愛し子様っ、神獣様っ】
扉の前にいた年老いた聖女様がひょこりひょこりと階段を降りてくる。それは見ている方がヒヤヒヤするような降り方だ。
それを気遣うように、後ろからは初老の騎士とローブを着た人がついてくる。彼らもかなり心配そう。
急いで降りたせいか、勢いづいてしまって、階段を下りきったところで躓きそうになる聖女様。後ろにいたローブの人のほうが手助けしている。
【あ、ゴーグリ、ありがとう】
【落ち着いてください】
【ええ、ええ、わかってるの。わかってるのだけれど】
何やら、ローブの人が諫めている様子だけど、聖女様はローブの人の手を抑えて、私のほうを見てきた。
【ああ、ご無事で何よりです】
ハラハラと涙を流されて、私のほうは困惑するばかり。
【アイリス様】
【聖女様】
聖女様の後に立っている初老の騎士とローブを着た人が、聖女を気遣うように声をかける。
【ご、ごめんなさいね。本当に心配だったものですから】
聖女は涙を拭って、後ろの二人に何か言っている。
『どうも、雅のことが心配だったらしいぞ?』
「え?」
【まぁ! 貴女様は?】
ユーコの存在に気が付いたようで、涙に濡れた顔の聖女様が問いかけてきた。
『さすが聖女だな。私のことが見えるとは。私はユーコ。そこの雅の守護者である』
フンッと胸を張るユーコ。
「ちょっと、ユーコ、何、偉そうに言ってるのよ」
「そうだぞ。守護者というなら、僕たちだってそうだぞ」
マーコとニーコが私の足に抱きつきながら、ユーコに文句を言っている。
聖女様は、そんな三人の様子に薄っすら笑みを浮かべてから、手に胸を当てて片膝をついた。それに習うように、老騎士とローブの人も片膝をつく。
【愛し子様、神獣様方、守護者様、聖女アイリスがご挨拶申し上げます】
「えっ? えっ?」
【うむ。アイリス、立ちなさい】
【無理な体勢はよくない】
【ありがとうございます】
私が慌てていると、ニーコとマーコが何か言ったようだ。聖女様がすくっと立ち上がると、後ろの二人も立ち上がる。
――デ、デカッ! そんで、怖っ!
聖女様は私よりも少し小さい感じなのに、後ろの二人のデカいこと。特に老騎士は、一緒に行動してた聖騎士たちよりも大きい気がする。それに二人とも顔が怖いんだけど。
【愛し子様、どうぞ、神殿の中へ】
聖女様が手を神殿のほうへ向けている。これは中に入れ、ということだろう。チラリとマーコとニーコに目を向ける。
「大丈夫」
「ぼくらがいるから」
「……よろしくね」
私はゴクリと唾を飲みこみ、なんとか笑みをはりつけて、神殿の扉へと向かった。




