第66話 帝都に入る(2)
帝都の中に入る大きな門が見えてきた。
そこでは長蛇の列が出来ていて、これに並んだら一時間以上、いやそれ以上待たされそうだな、と思っていると、途中から脇道にそれて進んでいるのに気付く。
「ねぇ、門の道から逸れてない?」
私は右肩の上に乗っているユーコにこっそり問いかける。
『この列の先の大きな門の隣に、少し小さい門があるようだ。そこに向かってる』
「へぇ」
少し進むと、前を行く聖騎士たちの先に、ユーコが言う門が見えてきた。
――思ってたよりも壁、高っ。
マーコの背に乗りながら見上げる。あの上はどうなってるんだろう。やっぱり衛兵みたいな人が立ってたりするんだろうか。
【おかえりなさいませっ!】
門衛の男性が胸に手をあてて、何か叫んでいる。
年齢は元の私(39歳)よりも上くらいだろうか。濃い髭の中年男性が厳しい顔で直立不動の体勢をとっている。聖騎士たちのキラキラする鎧と比べると、なんか少し薄汚れているように見える。それだけ、外で仕事をしてきたということだろう。
【うむ、ご苦労】
【はっ! ……えっ、ま、魔物っ!?】
ビシッと返事をしたおじさんだったけれど、ニーコの姿を見てギョッとして、腰に下げている剣を取ろうと身構えた。
【こちらは神獣様だ。不敬な行動は慎めっ】
【し、神獣様……】
聖騎士からの言葉に、呆気にとられている中年男性。
確かに、これだけ大柄な猫を見れば、そういう反応になるのは当然か。心の中で『すみませんねぇ』と呟く。
私たちはそれ以上のチェックもなく、そのまま、門の中に入っていく。さすが聖騎士団だ。
石壁はかなり分厚く、門の中を抜ける間は短めのトンネルのよう。そこから出た途端に視界がパッと明るくなる。
「おお~」
街のざわめきが、ぶわっと押し寄せる感じに、ちょっと腰が引ける。
特に周囲の視線が、街道を進んでいた時の比ではない。
大きな道の両脇には人だかりができて、皆が皆、聖騎士の一行に目を向けている。
【騎士様~!】
【キャー!】
【おかえりなさーいっ!】
なんか黄色い声があちこちから聞こえてきて、肩をすくめてしまう。
「みゃう~」
『ああ、騒々しいのぉ』
マーコが不機嫌そうに鳴く。彼女の耳が伏せられてる。よほど煩いんだろう。ユーコまで文句を言うくらいだ。
「聖騎士って、人気者なんだね。まぁ、あれだけ美形の集団だもんな」
アイドルへの歓声もこんな感じかなと、どこでも女性は変わらないと思いながら苦笑いする。
【あら、あの魔物に乗っている子は?】
【変わった服装だけど】
【ちょっと、かわいいんじゃない】
女の子たちの私に向けられる視線が気になり、目を向けると、バチッと視線があったので、ニコッと愛想笑いを浮かべてみせる。
【きゃぁ!】
【やだ、私!?】
【何言ってるの! 私よ!】
「え、な、何っ」
『前を向け、前を』
「う、うん」
一層騒がしくなった彼女たちに、思わずビビった私。ユーコに叱られ、すぐに視線を外して前を向く。
【ハッハッハ、愛し子様も罪作りですなっ】
私の近くで馬に乗っていた聖騎士の一人が、何やら楽しそうに声をかけてきた。
「なんだって?」
『……罪作りだと』
ユーコがニッと笑う。
「は?」
『……フフフ。雅、お前、あの女どもに男と間違われてたぞ』
「マジッ!?」
ユーコの言葉に、ショックを受ける私なのであった。




