第63話 見た目だけじゃない
モブル王国からアルタン帝国の国境まで、約三日程。
その間の道はガタガタした道だったけれど、国境を超えてからの道はかなり整えられていた。
――国力の差ってやつかな。
マーコの背に乗っている私は隣を走る馬車から聞こえる音の違いに感心していた。
初日から激しい振動でお尻が死にそうになった私は、翌日からの移動はマーコの背中に乗っての移動に変えてもらっている。
最初は聖女候補のヘルカさんと、女性騎士ヨルマさんに馬車に乗るように勧められたけれど、マーコの説明と私の絶望的な表情を見て諦めてくれたらしい。
どうもマーコが『この世界の乗り物じゃ、雅の身体が壊れる』と脅したらしい。その言葉で、逆にそこまで身体が弱いのか、と、心配されてしまったようなのだ。
――そこまでじゃないと思うけど。
それでも、とんでもないスピードでもない限り、マーコの背中のほうが楽なのは事実なのだ。
あとは会話ができないことが痛い。
一応、ユーコが通訳してくれはするものの、ヘルカさんのキラキラした眼差しと、それを見つめる女性騎士ヨルカさんの二人と一緒にいるのもキツかったのだ。
ちなみにニーコは先頭を走る聖騎士たちと並走している。大きな身体で動き回るのが楽しいらしい。そのおかげもあるのか、初日のオークという魔物との遭遇以外、魔物に襲われていない。
ユーコは私の前に座っている。ユーコの姿が見えるのは聖女候補のヘルカさんだけ。
ヘルカさんはユーコが気になっているのか、馬車の窓から、羨ましそうな顔でこちらを見ている。
【いやぁ、思ったよりも早くに帝国に戻ってこれたな】
【ああ。やはり神獣様の存在が大きいのかもな】
【魔物が全然出てこないものな】
前を走る馬に乗っている聖騎士たちが何やら楽しそうに話している。
私がマーコに乗った時には心配そうだった彼らも、余裕の表情の私に、安心はしたようで、気にはかけてはくれるが、これといって話しかけてはこない。
マーコとニーコが大きな猫の姿の時には会話ができなくて、私との通訳ができないのをわかっているからだろう。
――それにしても、美形揃いだなぁ。
聖騎士という役職のせいなのか、採用時にも外見は重視されるのだろうか。
まるで映画の俳優さんか、モデルのような美形ばかり。あまりにも綺麗すぎるのも、逆に怖いというか。むしろ、後方で警護している冒険者の人たちのほうが安心感がある。
そんな聖騎士の中でも、妙にキラキラしている若い男性がいる。
時々、私の近くで馬を走らせている彼は、私と目があうとニコリと笑みを向けてくる。スマイル0円、というやつだろうか。
彼の周りにいる聖騎士たちが気を使っている様子から、身分がある人なんだろうか。彼らから距離をおいている少し年上の聖騎士たちは厳しい顔をしている。
――人間、見た目だけじゃないと思うけど……。
私は馬車の中からでは気付かなかっただろう、聖騎士たちの様子を観察するのであった。




