第62話 うちの猫、めっちゃ強いんです
ガラガラ、ガタガタと凄い音が車内に響く。
街から離れて小一時間経った頃、激しい振動が続いていて、お尻が痛くなってきて顔が歪む。
私たちは聖騎士たちが用意してくれた馬車に乗って移動することになった。なんと、マジックバッグにしまっていたらしい。
かなり大きな馬車なので、それが入るマジックバッグは凄いわ、と思う。
マーコたちの背中に乗らずに済んだのはよかった半面、馬車での移動の厳しさを甘く見てたと、反省している。
追いついたという冒険者たちは、そのまま私たちと同行することになった。彼らは馬車の御者と、護衛ということで馬車の後部に乗っているらしい。
そしてマーコとニーコは猫の姿になって、私の膝の上に乗っている。私の向かい側には、聖女候補のヘルカさんと、女性騎士ヨルマさんが座っている。
ヨルマさんは女性騎士なのだけど、今の私とそれほど背の高さは変わらない。むしろ、ヘルカさんのほうが昔の私の身長(172センチ)よりも大きい。
騎士なのに体格は関係ないんだな、とちょっと思った。
そんな彼女たちの視線はマーコとニーコに向けられていて、うっとりした顔をしている。
――この振動、気にならないの!?
二人とも、どんだけ頑丈なお尻をしてるんだろうと思っていると、寝ていたはずの二匹がヌッと身を起こした。
「どうした?」
『魔物だな』
「えっ」
焦って馬車の窓に張り付いて外を見ると、馬車のスピードがいきなり落ちた。そして馬に乗った聖騎士たちが馬車の周りに集まってきた。
――これって、馬車を守ってる感じ?
窓から見える聖騎士の顔が厳しい感じだ。
前の方が騒がしい。思わず身体が強張る。
「みゃぁ」
マーコが一鳴きしたと思ったら、膝から降りて馬車のドアをカリカリしだした。
『外に出たいらしいぞ』
「にゃぁ」
今度はニーコも鳴きだした。
馬車が停まったこともあり、ドアを開けようと手を伸ばすと。
【愛し子様、何を】
女性騎士のヨルマさんが焦った声を出す。
【マーコたちを外に出す。邪魔をするな】
【は、はい。ヨルマ、大丈夫です】
ユーコが聖女候補のヘルカさんに何かを言ったらしい。ヨルマさんを窘めている感じだ。
『開けてやれ』
「気を付けてよ」
「みゃ」
「みゃう」
小さな隙間から、二匹がするりと出て行ったかと思ったら、すぐに軽自動車サイズの大きさになって前のほうへと走っていった。
馬車の脇にいた聖騎士は、突然現れた大きな猫に驚いた顔をしていた。
前方のほうでの騒ぎが落ち着いた頃、マーコたちが大きな猫の状態で馬車まで戻ってきたのに気付いた私は、また少しだけドアを開ける。
すぐに小さな姿になったマーコたちがスルッと入ってきた。
その後を追いかけるように、興奮した顔の大柄な聖騎士が走ってやってきた。この人はアレクシスさんというらしい。
【神獣様! ありがとうございますっ!】
【アレクシス様、何が起きたのです】
ヘルカさんが心配そうに声をかけている。
【ああ。まさか、こんなところでオークの集団と遭遇するとは思わなかった】
【オークですって!?】
【いや、神獣様たちのおかげで瞬殺だよ。あの強さを見たら、フォロンの森で生き抜けていたのも納得だ】
【まぁ!】
「なんだって?」
そばを飛んでニヤニヤしているユーコに聞く。
『マーコたちが強いって褒めてたんだよ』
「なるほど。確かに、うちの猫たち、めっちゃ強いもんねぇ」
いつのまにか膝の上に戻ってきて寝ている二匹の背中を撫でると、ゴロゴロと盛大に喉を鳴らしている。
【オークを片づけたら、すぐに移動します。少しお待ち下さい!】
バッと頭を下げてアレクシスさんが前のほうへと走っていった。
【アレクシス様たちにお任せすれば、すぐですから】
ヘルカさんがニコニコしながら何か言ってるけれど、意味のわからない私はあやふやな笑みを浮かべて頷いた。
――もしかして、これからもこんな感じで進むのかな。
私たちは、ゆっくりと帝国へと進んで行くことになりそうだ。
ちょっとだけ、マーコたちに乗って移動したほうが早いかもな、と思ったのは内緒だ。
いつか、のんびりと生活できる場所に住むことはできるんだろうか。
「みゃぁ」
「みゃ~」
二匹の眠そうな鳴き声に、笑みを浮かべた私であった。




