第60話 聖女候補との邂逅
マーコたちの突然の変化に、騎士たちは立ち上がり身構えた。
「みゃぁうぅぅ」
「にゃぁぁぁ」
「マーコ、ニーコ、どっちかは人型になってよ。そうじゃなきゃ、話ができる人がいない」
苦笑いしながら、二匹を撫でる。
私の言葉に顔を見合わせた後、口が達者なマーコだけが人型に戻った。
【おおお!】
騎士たちから歓声があがる。
そんな中、ローブを着た女性が深々と頭を下げる。
【神獣様、大変失礼いたしました】
【あなたたちが、イダが言っていた聖騎士団と聖女候補?】
【はい、さようでございます。私、聖女候補のヘルカと申します】
【思ったよりも早かったのね】
【はい。聖女様より、イダ様から授かった地図をお借りしたので、すぐに向かうことができたのです】
「うわー、どんだけピンポイントで目安をつけてるのよ」
マーコがうんざりしたような声で言う。
「なあに?」
「私たちの居場所、地図にして彼女たちに渡してたんだって」
「……ストーカー?」
「ねぇ?」
【あ、あの?】
【なんでもない。それで、私たちはイダ神殿に向かえばいいの?】
【はいっ】
【でも、今日はもう移動しはじめるのはちょっと厳しいかな】
【あ……そ、そうですね。愛し子様のご準備もございますよね】
【うん。明日以降でもいいでしょ?】
【はい。あの、できれば私どもを愛し子様のお近くで野営させていただいてもよろしいでしょうか】
女性が何やら頼んでいるようだ。
「……雅、この近くで野営してもいいかって」
「え、でも街にいけば宿もあるし。せっかくならベッドで休んだほうがいいんじゃないの?」
【愛し子が、宿屋で休まなくてもいいのかって】
【とんでもございません! 私どもは愛し子様をお守りするためにやってまいりました。ですから、お近くにいさせてくださいませ】
かなり必死な形相。それは女性だけではなく、後ろに控えている騎士の方々もだ。
「雅を守るためにも、近くにいたいみたい。ユーコの結界があるから大丈夫なのにね」
「あー、そうなんだ。でもさぁ、この大人数って、街のほうからも見えたりしない?」
『雅が気になるなら、奴らの野営の範囲までを結界にいれてやろうか?』
「えっ」
『なぁに、家を守る結界と、視界を遮る結界と二重にかけるだけのこと』
「ユーコ、凄いわ」
思わず感心の声をあげる。ふと、視線を感じて目を向けると、ローブを着た女性が驚いた顔をしている。
「どうしたのかな」
『ふむ、やはり聖女候補だけあって、この女、私が見えているようだな』
「え、聖女候補!?」
驚く私をよそに、ふよふよと女性のほうに飛んで行くユーコ。
【お前、私が見えているのであろう?】
【は、はいっ】
返事をするとともに聖女候補の女性が深々と頭を下げる。
【(この街にも、同じように見える娘がいる。もし、娘が望んだら、神殿に連れて行ってやるがいい)】
【えっ】
【(あくまで、本人が望んだら、だ。余計なことはするな)】
【(か、かしこまりました)】
何やら、ぼそぼそと言い含めるような感じのユーコ。何を言ってるのか、少しばかり心配になる。
ユーコと聖女候補がやりとりをしている間に、マーコが騎士の男性のほうへ近寄り、説明を始めた。
その間、他の騎士たちからの視線がビシバシ飛んでくる。今までの人生で、ここまで男性に見られることがなかっただけに、居心地が悪い。
「私、戻ってもいいかな」
『ふむ……マーコが色々話をつけるであろう。私もついている。ニーコ、お前は雅と一緒に戻っていろ』
「みゃぁう~」
私は騎士たちに向かってペコリと小さく会釈をすると、そそくさと家の結界の中へと戻るのであった。




