第59話 聖騎士団との遭遇
もう一度、マーコのところにブレスレットを見せに行こうかな、と思ったら。
『雅、なんぞ来たぞ』
ユーコの硬い声で私も足が止まる。
この家はユーコの結界のおかげで、外から中が見えない。白い土塀に変えたこともあって、こちらからも外がよく見えないはずなのだが。
「なんかキラキラしてる人たちが……いっぱい来たね」
彼らは馬に乗っているのか、土塀越しでもしっかり姿が見えていた。
『……どうも、雅のことを呼んでおるようだな』
防音もしていたので、我が家の敷地は静かだった。仕方がないので、ユーコは防音を切った。
【愛し子様! 愛し子様!】
【どうぞお姿を現わして下さいませ!】
【愛し子様!】
甲高い女性の声がよく聞こえてきた。他にも男性たちの声も。言っている内容はわからないけど、かなり必死な様子だ。
それと同時に、ドタドタドタという階段を駆け下りてくる音。
マーコとニーコだ。リビングの窓から身を乗り出している。
「なんだ、なんだ」
「もう来ちゃったの?」
二人とも作業着にしているのか、お揃いのオーバーオールで登場した。
「なんか言ってるんだけど、あれ、私たちを呼んでたりする?」
「うん。愛し子様って言ってる」
「愛し子?」
「たぶん、ノナの神託で伝えられてるからじゃない?」
「なるほどね……この格好で出て行っても大丈夫かな」
彼らのかなり必死な様子に、早く外に出てあげたほうがいいんじゃないかとは思うものの、今の格好は、かなりカジュアル。オレンジ色のハイネックのセーターにジーンズ生地のロングスカートなのだ。
「いいんじゃない? あんまり騒がれると、街からも出てきそうだし」
「あ、もっと面倒なことになるか」
「そうそう」
はぁ、とため息をつきながら、行こうか、と声をかけると、マーコとニーコはいつもの袴姿に変わり、ぴょんと外に出る。ユーコは定位置の私の肩のあたりに浮いている。
私たちは車庫の門を開けて、外に出る。まだユーコの結界の範囲内だ。
『大丈夫だ。何があっても私が守るからな』
「よろしく」
「その前に、私たちが制圧しちゃうから大丈夫」
「余裕、余裕」
三人の言葉を信じて、私は結界の範囲からぬるっと抜け出す。
【なっ! いきなり人が!】
【もしや、あの方が!】
男の人たちの慌てた声とともに、馬上にいた人たちが一気に降りて膝をついている。
――か、カッコいい。
まるで洋画のファンタジー映画のようで、思わず目を見開いてしまう。
【愛し子様でいらしゃいますかっ】
一番身体が大きい男性が、大きな声で話しかけてくる。
それが少し怖く感じて腰が引けると、マーコとニーコが私を庇うように前に立った。
【うるさい】
【もう少し声を抑えられないの】
二人の不機嫌そうな声が聞こえる。
【お前たちは彼女の従者か】
【神獣様が一緒だと伺っていたのだが】
あちこちで何やら話している中、後ろのほうから一人の女性が早足で進み出てきた。騎士たちとは違い、ローブを羽織っている様子に、魔法使いか神官か、と思ってしまった。
【愛し子様、神獣様、失礼いたしました】
男性たちの前に出てきたと同時に、同じように跪く女性。
【え、神獣様って】
【まさか】
騎士たちが再び騒めきだしたところで、ポンッという音とともにマーコとニーコが大きな猫に変化した。




