第58話 ブレスレットを作ってみる
新しい部屋が出来てから、ここ三日程、マーコとニーコはずっと家に引きこもっていた。
マーコはタンスの肥やしになっていた古い服も持ち出して、こちらの布と合わせて私の服を作っているようだ。
ニーコは物置から祖父が使っていた工具とかを見つけ出して、何やら作業をしているらしい。
この二人が出かけなければ、私とユーコだけで街に行く勇気はないので、家事を一通り終わらせた私は、家でできることはないかと考えた。
「久しぶりにアクセサリー作ってみようかな」
手慰みで作っていたビーズのアクセサリー。糸やビーズの在庫がまだ残っているはずと、押入れの中を探したら、案の定、大きなお菓子の缶詰にしまい込んでいたのを発見した。
中途半端に作ってあるビーズのアクセサリーを発見して、懐かしく思う。
作る途中だった物を崩して、ビーズの状態まで戻していく。
その作業をしながら考えたのは、スキルのアクセサリー細工がレベルアップしたら、どんどん上等な物を作れるようになるんじゃないか。
ちょっと期待してしまうのは仕方ないと思う。
――これ、ネックレスとかブレスレットにしたら、街で売れるかな。
私はブレスレット用の少し太めの糸を見つけ出し、大きな石やビーズを使ってブレスレットを作り始める。
自分用もそうだけど、マーコとニーコの分も作ろうと思って、ふと手が止まる。
――ユーコに作ったら、ユーコは着けられるのか。
試しに作ってみればいいか、と黙々と作っていると、あっという間にブレスレットが四本出来上がってしまった。
色は赤、青、黄色、ピンク。それを手にして、二階へ上がる。
部屋のドアは閉まっており、ドアにはそれぞれの名前のプレートが嵌めてある。これはユーコが作った物だ。
まず最初に、奥のニーコの部屋をノックする。
『はーい』
「ニーコ、今、いい?」
『はいはーい』
返事が返ってきてから少し経ってから、ドアがあく。そこから現れたニーコは、マーコのお手製のオーバーオールを着ている。顔には何かの汚れがついていた。
一体、どんな作業をしたら汚れるのだろう。
「雅、どうした?」
「あ、これ作ったんだけど、ニーコにあげようかなって」
「お~」
嬉しそうな声をあげるニーコ。
「どれでもいいの?」
「うん」
「じゃあねぇ……この黄色!」
「え、青じゃなくて?」
「ん? ああ、雅はわかんないか」
ニーコが黄色のブレスレットを手にして自分の腕に巻く。
「これね。器用さがあがる効果があるみたいだよ?」
「へ?」
「この石の効果かな?」
ニーコが指さすのは、ブレスレットの真ん中に配置した一番大きな天然石。石の名前は忘れたけれど、昔、天然石を売っているお店で綺麗だったのでつい買ってしまったヤツだ。
「そ、そうなんだ」
「うん。あと、赤いのは魔力強化かな。青いのは知力、ピンクは魅力アップだね」
「な、なるほど?」
「えへへ。これ、ありがとね! おかげで作業がはかどるかも!」
嬉しそうな笑顔を浮かべて、ニーコはそのままドアを閉めてしまった。
私はそのままの流れでマーコの部屋をノックする。しかし作業中なのか、うんともすんとも言わないので、私は諦めてユーコの元へ行くことにする。
ユーコは庭で畑で野菜を収穫しているところだった。収穫といっても、直接触るわけではない。指先一つで抜いて、綺麗にして、リビングの窓際に山積みにするのだ。
「ユーコ」
『なんだ』
私の声にユーコは、ふよふよと近寄ってくる。
「あのね。ブレスレットを作ってみたんだけど……ユーコは着けられるのかな」
ずっと同じ着物姿なので、もしかしたら他の服とかは着られないんじゃないか、と思っていた。そうなるとアクセサリーも、と考えなくもなかったのだけれど。
『ほお、いい物を作ったではないか』
ユーコがどれどれと言って、手にしたのは青いブレスレット。ユーコは色の意味をわかって手にしているかはわからない。
『私はこれがいいのぉ』
「そ、そうか」
『どうだ。似合うか?』
嬉しそうに腕につけたブレスレットを見せてくれるユーコが、ちょっと可愛かった。




