第57話 新しい部屋作り
買い出しから戻って一息ついたところで、ユーコがまた家をいじると宣言した。
「今度は何?」
『ずっと作らないでおいた部屋を二つ、追加しようと思うのだ』
「二つも?」
『おお。マーコの裁縫部屋と、ニーコの魔道具工房の部屋は必要であろう?』
「欲しい!」
「いるっ!」
ユーコがフフンと鼻で笑う。
その部屋がどれくらいの大きさになるのか、どこに作るのか、凄く心配な私。
すでに、この家の形というものが決まっているのだ。どこに、そんな余裕があるのだろう。
『さて、まずは部屋を作る前に、階段を作らないとね』
「それって、二階建てにするってこと!?」
『見た目は平屋のままだけどね』
ユーコの言葉にワクワクしてくる。それはマーコとニーコも同じ。
どこが適当か、ユーコが家の中をふよふよと飛んで行く。新しく階段を作れるような場所なんてあるだろうか、と思って見ていると、ユーコがぴたりと止まった。
そこは玄関からリビングへと向かう廊下。左手にはトイレや洗面所、お風呂といった水回りがまとまっている。
そしてユーコが手を伸ばしたのは、その反対側の壁。この壁の向こうは、私と猫部屋の押入れになっている。
『やっぱり、ここかな』
そう呟くと、フンッという気合とともに、木製の階段が現れた。
「え」
「え」
「え?」
思わず階段の下から上を見上げる。日差しが入ってきているのか、だいぶ明るい。
「いくよっ!」
「おー!」
私の横を抜けて階段を駆け上がっていく二人。私も後を追いかけて上がってみると、六畳くらいの洋室が二つできていた。
「こっち、私!」
「こっち、僕!」
二人が嬉しそうに部屋の入口で宣言した。
「はいはい。さて、どんな感じ?」
マーコの部屋のほうをのぞいてみる。
腰高のカウンターっぽいところに出窓がある。部屋が明るいのは、これのおかげだろう。床はフローリング。猫の姿だったら、爪とぎしそうと思ってしまう。
そのまま今度はニーコの部屋を見ると、マーコの部屋とまったく同じだ。
「カーテンをかけないと、冬場は寒くなりそうだね」
「あっ」
「そうか」
「今日だって、日が完全に落ちたら寒いんじゃ」
『そこは私の力で、寒くはならんぞ』
ユーコの言葉に「そうだったね」と返事をする。
それにしても、立派な部屋ができたけれど、外からはどう見えるのか気になる。ユーコは平屋のままだって言ってたけれど、本当にそうなのか、と私は階段をおりて、そのまま玄関から外に出て見る。
「……ない」
平屋のままの我が家に唖然とする。
「マーコたちには、私は見えるのかな」
私は手を振ってみるけれど、何もない場所から反応が返ってくるわけもない。そのまま家の中に戻って、階上の二人に声をかける。
「ねぇ!」
「なーにー」
「私が手を振ってるの見えたー?」
「見てなかったー」
「ごめーん」
上でゴソゴソやっている音が聞こえる。何をしてるんだ、と思って階段をあがり、マーコの部屋をのぞく。
床には街で買ってきた布がいくつも広げられている上に。
「え、よく見つけてきたね」
マーコが昔使ってたこたつを出してきていて、その上に祖母が使っていた古いミシンをのせていた。
「ユーコを探し出した時にあったのを覚えてたのよ」
マーコはかなりご機嫌だ。
「僕も、ちょっと下行ってくる!」
ニーコは慌てて階段を降りて行った。
今日は、夜遅くまでバタバタしそうである。




