第55話 再び、教会にて
翌日、再び皆で街へと向かった。
教会で祈って、イダ様に帝国に行くのは嫌だなぁ、というのをマーコとニーコに伝えてもらうことにしたのだ。
二人が石像の前でしゃがみ、祈りだす。私も伝わるかわからないなりに、帝国はちょっと…という思いを祈っていると、バタバタと人が駆け込んでくる音が聞こえた。
――何事?
私は祈るのをやめて、後ろを振り向くと、教会の中に濡れながら入ってくる人々の姿が見えた。つい先程まで快晴だったのに、なぜか雨が降り出したようだ。
――まさか、神様のせい?
一瞬、そんな考えが頭をかすめる。
しばらくして、日差しが出てきたので、通り雨だったのだろうと、思っていたのだが。
「はぁ……」
「めんどくさー」
マーコとニーコが、死んだ目で呟いた。
「え、どうした」
「うん」
「まぁ、後ろの人に譲ってからね」
確かに、後ろに待っている人の列ができていたので、慌ててその場を移動した。
教会の後ろのベンチに座って、こそこそと話をする。
「何? 帝国行くの嫌だって伝えてくれたの?」
「伝えたよ? 伝えたんだけどさぁ」
「ぜひ今代の聖女に会って欲しいって」
「高齢で雅のところまで会いにいけないからって」
「一応、保護って名目で聖騎士団も出しちゃってるから」
「えー、それ、私、関係なくなーい?」
「そう思うんだけどさぁ」
マーコとニーコが顔を見合わせ、頷く。
「なんか、イダが、帝国の中でもイダの庇護された土地を用意するから、そこに住まないかって」
「今の場所も悪くはないと思うんだけどね」
「ここ、実はちょーっと危ない土地らしくって」
なんでも、フォロンの森には魔物が溢れる時期があるそうで、今年はこの国近くで起きると思われているらしい。
私たちが移動している間に、マーコとニーコが狩りまくっていた魔物たちは、実はその前兆だったのではないか、というのだ。
「え、じゃあ、あの村とかは」
「ん~、たぶん、大丈夫だとは思うんだぁ」
「あの、じいちゃん、めっちゃ強いしな」
「は?」
「雅が100円あげたじいちゃん」
「え、嘘」
「だいたい、森の近くにある村が、あんなに無防備なの、おかしいじゃん?」
「私たちが見えないところで、色々、準備はしてるんじゃないかなぁ」
「……だったら、ここにいてもよくない?」
「ん~、それはそれで、イダも心配なんだと思うよ」
「ノナにも頼まれているんだろうしね」
そう言われると、マーコたちにチートを授けてもらっているだけに、無下にもできない気がしている。
「だからね。聖女には会いに行く」
「でも、定住するかどうかは、雅しだい、というところで納得してもらったー」
『気に食わなければ、皆で逃亡してしまえ』
「ねー」
「ねー」
楽しそうな三人の様子に、そこまで拘らなくてもいいのかな、という気になってきた。
「さて、イダへの話はついたんだし、ちょっとお店を見ていかない?」
「それもだけど、冒険者ギルドの依頼もチェックしようよ」
『また、あの肉を売ってる店には行かなくていいのか?』
「行くー!」
「行くー!」
まだ教会の中だというのに、賑やかなマーコとニーコに、静かに! と注意したのは言うまでもない。




