第52話 自宅に帰宅
東側の門を出た。
時間も時間だったのか、街に入ってくる人のほうが多くて、門から出ていく私に気付く人はいなかった。
しばらく三人で街道を歩く。私たちとは反対に街に向かってくる馬車を見送り、しばらく人影が見えなくなったところで、街道をそれる。
『この辺でいいかの?』
「うん、お願い」
私の声と同時に、ドドンッと我が家が現れる。
門扉をあけて敷地に入ると、一気に安心感がわく。そのまま玄関を開けて家の中に入る。
馴染みの匂いに、帰ってきた、という気持ちになる。
「ただいまー」
「ただいまー」
「ただいまー!」
三人で声をあげて、玄関をあがり、洗面所に行って手を洗う。
――なんか、今更感あるけどね。
そのままリビングに行ってソファに座ると、私の両サイドに、いつの間にか小さな猫の姿に戻ったマーコとニーコがぺたりとくっついた。
「疲れたねー」
「みゃぁ」
「にゃあ」
しばらくボーっとしたまま、二匹の背中を撫でていた私。静かな部屋の中に、ゴロゴロゴロという猫の喉の鳴る音が響く。
「……で、何があった?」
そう問いかけると、喉の鳴る音がピタリと止まる。
――そんなに話したくないのかな。
そう思ったところで、ポフンッという音とともに、袴姿のマーコとニーコが私にへばりついた。
「はぁ」
「はぁ」
深い、深いため息。
「何よ」
「……」
「……あの教会、この世界の四神のうちの一人、イダの教会だったんだ」
「ん? ノナとは違うの?」
「ノナは、この世界の創造神。この世界を管理しているのが四神なんだって」
「なるほど?」
偉そうなメッセージをくれていたけれど、実働部隊は別の人、いや、別の神がやってるってことか。
「そのイダが、私たちにこれ以上移動するなって言ってきたの」
「え?」
「なんか、アルタン帝国のイダ神殿の人たちが、フォロンの森まで迎えに来てたんだって」
「だけど、私たちが凄い勢いで移動しちゃったから、すれ違っちゃって」
「あ……もしかして、人の集団って」
「たぶんね」
ファンタジー脳のお仕事(盗賊じゃないかと予測)は外れていた模様。
「追いかけようとしたんだけど、私たちが向かったのが神殿の所属している国とは違う国だからって、一旦、帝国に戻ることになっちゃったんだって」
「あらまぁ」
ニーコが口を尖らせながら「そんなのぼくたちのせいじゃないじゃんね」と文句を言っている。
「ただ、同行者に冒険者のパーティがいたから、その人たちに、私たちを追わせたんだって」
「で、帝国からも改めて迎えを出しているから、これ以上動くなってさ」
「ここ、帝国じゃないから色々手続きがあるんだって」
「あの森の中だったら、国境とか関係なかったんだって、叱られちゃった」
マーコとニーコのぶちぶち文句が止まらない。
「……ねぇ、その帝国ってとこ、行かなきゃダメなのかなぁ」
単純な『帝国』という言葉のイメージだけなので、向こうからしたら失礼な話なのかもしれないけど。
「雅が行きたくなければ、行かなくてもいいと思うよ」
「そうだよ。無理して行っても、楽しくないでしょ?」
マーコとニーコがギュッと抱きしめてくれる。
――そもそも、行ったところで、私には何の力もないしなぁ。
マーコやニーコ、ユーコみたいなチートな力があるわけでもないし、連れていかれても、何もできないと思うのだ。
それよりも、静かにゆっくり生活ができる場所を見つけて、定住できるのが一番だと思うんだけど。




