閑話:イダ神殿
第二聖騎士団一行がイダ神殿に戻れたのは、Bランクパーティ『暁と夕闇』と別れ、5日ほど経った頃のことだった。
強力な魔物との遭遇もなく、天気も崩れずにすんだこともあり、かなりのハイペースで戻ることができた。
かなり急ぎ足だっただけに、聖女候補たちは疲れ果てていた。特に、カーリに至っては、疲れもあって熱を出して寝込む始末。
「お疲れさまでしたね」
出陣式のあった聖騎士団の訓練場にて、高齢の聖女アイリスからの優しい労りの言葉に、深々と頭を下げる面々の中に、カーリの姿はない。
「申し訳ございません。我々がもう少し早くお迎えに上がれれば……」
「あなたたちのせいではありません。イダ様のお言葉によると、神獣様たちが森で生活している間に、かなり成長されたようです」
「おお……」
「それと、愛し子様たちが、いらっしゃる場所もわかりました」
「なんと!」
「モブル王国のレザマという街にいらっしゃいます。そちらの教会で、イダ様とお話をしたようです」
「レザマというと、モブルの中でも西側にある街ですな」
「ええ」
愛し子がどこにいるかはっきりしていなかっただけに、今回の情報で疲れ果てていた聖騎士たちのテンションもあがる。
「せっかく戻ってきたばかりだというのに申し訳ないですが……」
聖女アイリスが、眉を八の字にして困った様子を浮かべる。
「愛し子様たちに一週間だけ、お時間をいただきました。どうか、それまでにお迎えにあがって欲しいのです」
「レザマであれば、我々であれば馬を使えば四日もあれば到着します。聖女候補ヘルカ殿も馬に乗れるようですから、少し遅れたとしても、一週間もかかりません」
「ああ、よかった……」
ホッとしているアイリスの背中を優しく撫でるゴーグリ神殿長。
「あ! そういえば、途中で別れた『暁と夕闇』にも連絡をいれておかないと。先にモブル王国に入って愛し子様を追ってもらっているのです」
「わかった。それは私のほうで手配しよう」
ゴーグリ神殿長の言葉に、その場にいた者たち全員がホッとする。
「今日は、このままゆっくり休んでください。明日の朝、もう一度、この場所で。その時には、追加の聖騎士たちを紹介しよう。ああ、『獅子の咆哮』の諸君も、他の依頼があったのに、無理をさせて悪かった」
「いえ、貴重な経験をさせていただきました。また何かありましたら」
「うむ。依頼料はギルドで受け取ってくれたまえ」
神殿長の言葉に『獅子の咆哮』の面々は、軽く会釈をすると颯爽とその場を去っていった。
翌朝早く、聖騎士団の訓練場に再び集まった面々。
その中には聖女候補のカーリの姿はない。同行していた聖騎士たちのほとんどがホッとする。しかし、その一方、新たに同行することになったメンバーに気付き、顔つきが変わる。
「まさかベルナルト殿が参加されるとはな」
「確かに選抜戦では惜しいところまで来てはいたが」
「他の連中は、それほどでもなかったよな」
「……全員が高位貴族出身なのは確かだ」
神殿で家名を名乗ることはなくとも、身内の者が来ればどこの家の者なのかは嫌でもわかる。
「……愛し子様が、どう思われる方なのか、見物ではあるな」
無表情に呟くアレクシスに、そばにいた騎士たちは小さく頷いた。




