閑話:魔道具屋/薬屋
◆魔道具屋
目をキラキラさせて入ってきた子供たちを見て、魔道具屋の店主は嬉しそうに微笑んだ。
こんな奥まった店にやってくるのは、魔道具好きな偏屈な大人ばかり。あーだ、こーだとうんちくを垂れる連中がほとんどだ。
それを相手にするのが嫌なわけではない。むしろ好きだ。
――孫の作った魔道具に文句を言われるのだけは我慢ならんがな。
今年成人した孫の作った魔虫除けは思いのほか売れて、残り1つとなっていた。
その孫は、今は素材の仕入れのために王都へと向かっている。
息子は跡を継いではくれなかったが、孫はやる気があるようで、一人前になるまでは、とこの店を守っているところだ。
店主は品出しを終えると、カウンターのそばに座る。
――あの子も、こんな風にキラキラした目で魔道具を見てたっけなぁ。
「おじいさん、これいくら?」
男の子が声をかけてきた。
「ん~? ああ、そいつは1000ノルだな」
男の子は、男のような格好をした女性に、聞いたことのない言葉で話している。
「在庫は?」
「おまえさんが持ってるので最後だな」
女性は少し悩んだようだったが、お金を出して男の子に渡した。
「ん? 買うのかい?」
「うん。ちょうどだよね」
男の子は1000ノルぴったりの銀貨を差し出した。
――値切らないとは、いいとこの子だね。
常連客でも少しでも値切る者もいるなか、そのままの金額を払う気風の良さに、おまけをつけてやる気になった。
「おお、ちょうどだ。ありがとよ。おっと、そうだ」
カウンターの中にしまってあった、娘が手慰みに作った剣帯飾りを取り出す。
「こいつはおまけだ」
「いいの?」
「ありがとう!」
子供たちの嬉しそうな笑みに、寿命が伸びた気持ちになった店主であった。
◆薬屋
薬師の祖母から、少しの間だけ薬屋の留守番を頼まれた娘。隣村の実家から追い出されて、母方の祖母の元へと身を寄せていたのだ。
小さい頃から誰にも見えない何かと話をしている彼女は、家族にすら気味悪く思われてきた。
それに耐えられなくなったのは、一つ上の姉。
家族の中でも可愛がられていた姉の言葉に、妹だった娘が追い出される結果となった。
その彼女が店番をしていた時に、不思議なモノをつれた女性が店にやってきた。
――何か浮いてる。
彼女の身近にいたのは、とても小さな小さな妖精だったけれど、今、彼女の目に映っているのは、5、6歳くらいの女の子。それも見たことがない服を着ていて……浮いているのだ。
女性はどこの国の言葉かもわからない言語で、その子と話をしていた。
結局、女性は何も買わずに出て行ってしまったが、出ていく時に、浮いている女の子と目があった。
ニヤッ
女の子が笑ったのを見て、娘は身体がビクッとなった。
――な、なんだったんだろう。
娘は、口をあんぐりと開けたまま何も言えずに見送るだけだった。




