第49話 食べ物の匂いにつられる
薬屋から出ると、マーコとニーコの姿が見えない。路地の左右を確認するけれど、人の姿すら見えない。
「マーコ! ニーコ!」
名前を呼ぶが返事もなく、一気に不安になる。彼らなら、私の声を聞いたらすぐに戻ってくると思っていたから、尚更だ。
「え、どっか行っちゃった?」
まさか誘拐か、とチラリと思ったけれど、あの二人が普通の人に遅れを取るイメージはわかない。むしろ、ズタズタにしそう、と逆に相手のほうが心配になるほどだ。
『うーむ、あいつらのことだ。すぐに追いかけてくるだろ(まったく、不審者がいたんだったら、その辺に放っておけばいいものを。あいつらのことだ。どこかで甚振ってるんではないだろうな)』
私たちがやってきた方向を見ながらユーコが言う。あっちのほうにでも行ったのだろうか。
「ま、まぁ、私がマーコたちを探すより、マーコたちに探してもらったほうが確実ではあるね」
苦笑いを浮かべつつ、私は路地の道をゆっくり歩く。あまり人通りは多くないけれど、長閑な感じではある。
突き当りのT字路まできたので、どっちに向かおうか悩んでいると、ふわりと香ばしい匂いが漂ってきた。
「これは……肉を焼いてるのかな」
クンクンと鼻を上に向けて匂いを嗅いでいると。
「雅!」
「いたいた!」
後ろからマーコたちが走ってきた。
「もう、二人ともどこに行ってたのよ」
「ごめん、ごめん(思ってたより早く出てきちゃったんだもん)」
「ちょっと気になったお店を見てきただけだよ(嘘だけど)」
「だったら言ってよ。一瞬、心配したんだから」
「一瞬なの?」
「だって、マーコとニーコよ? 私なんかよりも力も強いし、口でも負けないみたいじゃない」
「まーねー」
「まーねー」
ニマッと笑いながら声を揃えて返事をする二人に、思わず笑ってしまう。
「それよりも、何、この匂い!」
「食欲を刺激する~」
そう言って、顔を見合わせた二人。頷き合ったかと思ったら、すぐに左手の道を走り出す。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
慌てて追いかけると、道の先は大きな通りに繋がっていたらしく、その通りには食べ物を取り扱っている店が集まっていた。
先程までの通りとは違って、歩行者天国か、というくらいに人通りも多い。それも大きい荷物を手に歩いている人もいる。この時間は買い出しの人が多いのかもしれない。
「この匂いはあっちだ!」
「おう!」
追いついたかと思ったら、また走り出す二人。今度は右手へと走っていく。そして人込みの中にあっという間に紛れ込んでしまった。
「もう~」
『落ち着け、雅。私がいるから、奴らの場所はわかる』
「あ、うん。そうだけど、心配は心配じゃない?」
『フフフ』
肩の上あたりにいるユーコに応えると、笑われてしまった。
マーコたちが進んだほうに歩いて行くと、屋台が並ぶ場所に出た。すでに生鮮食品を扱っている店はない。調理した物を売っている店が並んでいるようで、ところどころで、モクモクと煙があがっているのが見えた。




