第48話 薬屋に入る
マーコとニーコが手をつなぎながら、ご機嫌で私の前を歩いている。よほどいいことがあったのだろうか。
二人がご機嫌なのは私も嬉しいので、ニコニコしながら後をついていく。
「あ、雅」
「ん?」
「あの店、あの店、行っていい?」
マーコが指さした店は、軒先にドライフラワーらしきものを下げている。
――花屋さんかな。
しかし、生花らしきものは見当たらない。
マーコとニーコがドアを開けて中に入ったのだが。
「むー」
「だめだこりゃ」
酷いしかめっ面をして店の中に入らずに立ち止まってしまった。
「何、どうしたの」
「あー、ここは薬屋さんだったの」
「ちょっとぼくらの鼻では、入れないや」
「え、そうなの?」
二人に言われて入ってみると、少し薄暗い店内に椅子に座った小さな女の子が驚いた顔で固まっている。
店内は、確かに薬臭い感じはするけれど、私には彼らが言うほどニオイは気にならない。
『店番の娘のようだな』
ユーコは気にせず中へと入っていく。
「私たち、ここで待ってるから、雅は見てきたら」
「そうそう。薬屋がどんな感じか見てくるのも大事だよ」
「そ、そうかな」
「そうそう」
マーコがニコニコしながら店の中へと押し込むので、私は苦笑いしながら中へ入る。
「私たち、外で待ってる」
「ユーコ、よろしくな」
『はいはい』
――確かにユーコがいれば、なんとか意思疎通はできるか。
苦笑いしながら店の中に入ると、店番の女の子がじーっと私を見ている。私はペコリと小さく会釈だけして、店内を見回す。
壁には外にあったドライフラワーらしきものが下がっている。
カウンターの向こう側には、私の胸くらいまでの高さの古びた木製のタンスが壁際に並んでいる。それには小さな引き出しがたくさんあって、引き出しごとに、ヒエログリフっぽい文字が刻まれている。
「あの中に薬が入ってるのかな」
『いや、素材となる乾燥した薬草が入っているようだぞ』
「そうなんだ」
カウンターには小さな甕が並んでいて、しっかり麻紐のようなもので封をされている。
「これは」
手に取ってみると、中は液体が入っているようだ。
『そいつは二日酔いの薬みたいだな』
「へぇ、よくわかるね」
『フフン』
ユーコは得意そうに胸を張っている。
カウンターの端に小さな巾着タイプの麻袋がまとめておいてあるケースがあったので、一つ手に取ってニオイを嗅ぐ。微かにミントのようなスーッとした匂いがする。
『そいつは胃薬みたいだぞ』
異世界あるあるでポーションみたいなものがあるんじゃないかと、内心期待してたのだけれど、それらしき物は見当たらない。
ここは家庭薬を取り扱う感じなのだろうか。
私が一つ一つ見ている間、女の子はジーッと見てるだけ。声をかけてくることもない。たぶん、独り言を呟いている変な人と思われているのかもしれない。
『このあたりの薬だったら家にあるから、買うほどのこともあるまい』
「ポーションとかだったら買ってみたかったけどな」
『ポーション?』
「フフフ、なんでもない」
結局何も買わずに、その店を出た。女の子は最後まで声をかけることなく、私を見つめるだけだった。




