第47話 魔道具屋に入る
「ここ! ここ!」
ぴょんぴょんと跳ねるニーコ。よほど気になる店のようだ。
私たちが追いついたタイミングで、さっさとドアを開けて中に入っていくニーコ。
【いらっしゃ~い】
暢気な男性の声が私たちを出迎えた。
ちょうど品出しでもしていたのか、少し腰の曲がった白髪頭の老人が品物を棚へと置いているところだった。
【気になる物があったら、棚から出すから、声をかけておくれね~】
【はーい!】
ニーコがキラキラした目で品物を見ている。
「マーコ、ここは何屋さん?」
「ここはね、魔道具屋さん」
「ま、魔道具!?」
まさに異世界なワードに、私のファンタジー脳が刺激される。
ニーコと一緒に棚の上に並んでいる商品に目を向ける。様々な大きさの四角い箱だったり、水晶のような透明な球体だったり。アクセサリーのような物もあれば、棚に入らない大きなサイズの縦長の袋に入ったものが壁に並んでいたり。
何に使うのかさっぱりわからないような物ばかりで、私の眉間に皺がよる。
カウンター近くの壁には金属製の盾がかかっていたり、大きな古びた樽には剣が何本か入っているのが置かれていたり。そこだけは、まるで武器屋さんみたいだ。
そんな中、ニーコが棚から小さな四角い箱を手に取る。ニーコの手のひらに載るくらい小さい箱だ。
「あっ」
パッと顔をあげて少し離れたところにいたマーコのほうに顔を向けるニーコ。
「ニーコ」
「うん」
二人は顔を見合わせて、ニンマリしている。
いったい何があったのか、すごく聞きたいけれど、二人ともここで話すつもりはないようだ。
「雅~」
「なぁに」
「これ、これ買って」
手にしていた小さい箱を差し出してきた。
「何の魔道具?」
「魔虫除けだって」
「ま、まちゅう?」
「うん。移動中とかに腰に下げとくと寄ってこないみたい」
「え、だったら、私やマーコにも」
「……ちょっとお高いと思うよ?」
「いくら?」
【おじいさん、これいくら?】
ニーコは、品出しを終えて、カウンターのそばに座っていた老人に声をかける。
【ん~? ああ、そいつは1000ノルだな】
「銀貨10枚だって」
「えっ(1000ノルって最初の村の宿代の倍以上じゃん)」
【在庫は?】
【おまえさんが持ってるので最後だな】
「これが最後の一個だって」
「……仕方ない」
私はリュックから財布を取り出し、銀貨10枚をニーコに渡す。
「ありがとう!」
【ん? 買うのかい?】
【うん。ちょうどだよね】
ニーコが老人に銀貨を渡す。
【おお、ちょうどだ。ありがとよ。おっと、そうだ】
老人がニコニコしながら、カウンターの中から小さな石の飾りのついたストラップのような物を三個取り出した。全部、薄緑の細い紐に透明な石を使っている。
【こいつはおまけだ】
【いいの?】
【おお(値切りもせずに買ってくれたんだ。この程度、安いもんだ)】
【ありがとう!】
「雅、マーコ、はい」
「ほー、可愛いね」
「『鑑定』したら、ちょっとだけ運があがるみたい」
「へぇ! そんな効能があるんだ」
【おじいちゃん、ありがとう!】
【アリガト】
【ほっほっほ、どういたしまして】
老人ににこやかに見送られた私たち。先ほどの服屋とは違い、気持ちよく店を出ることができた。




