第46話 服屋に入る
冒険者ギルドを出た私たちは、そのまま街の中を見て回っているうちに、雑貨屋や服屋、靴屋や家具を売っているような店が並んでいる路地に入った。
ここは馬車も入れる道幅のせいか、石畳になっている。実際、小さい馬車が入っていく私たちとすれ違って行った。
「そうだ。こっちに合った服を買っておいたほうがいいかな」
通りの向こう側を歩いて行く中年の女性を見て、少し考える。
季節柄なのか、厚手のジャケットのようなものに足首が見えるくらいの長さのロングスカートをはいている。色も茶系統の地味な感じだ。
「ん~? 雅が気になるなら」
「別に今のままでもいいんじゃない?」
マーコとニーコが、周りをキョロキョロしながら言う。
今の私の格好は、紺のトレーナーにチノパン、それに黒のスリッポンスニーカー。それにリュックを背負っている。
確かに街中の人たちとは明らかに違う格好だし、時々、視線を感じたことはある。こちらに馴染んだ格好のほうがいいのかな、と思うものの、先程の女性の格好を見て、少し考えてしまう。
「ん~、いいなって思うものがあったらでいいかぁ」
「それでいいと思うー」
「じゃあ、さっそく服見に行くー?」
ニーコがタタタッと駆けだしたので、私も追いかける。
「ここ、ここで服売ってるー」
看板で判断したんだろうか。追いついてみると、店内が見えるようなディスプレイなどはなく、本当に服屋なのかと思ってしまう。
中に入らないとダメなようで、私が躊躇していると、マーコがさっさとドアを開けてしまう。
【……いらっしゃい】
少し低めの女性の声。カウンターの奥で中年の女性が何やら作業をしていたようで、チラリと私たちのほうに目を向けたけれど、そのまま作業を続けている。
「雅、こっちにワンピース売ってるー」
「どれどれ~」
確かにワンピースっぽい服が何着かぶら下がっているが、ほとんどは棚に無造作に積まれている。確実にシワシワになっているだろう。
全体的にくすんだ色合いの服が多い。それも無地ばかり。柄物のようなものはないのだろうか。
――そういえば、最初の村の人たちも、地味な感じの服ばかりだったような。
マーコがくすんだ緑のワンピースのスカートの部分を指でつまんだ時。
「あっ」
小さくマーコが呟いた。
「ん? どうした?」
「いや、うん。大丈夫」
一瞬驚いた顔をしたマーコだったけれど、私が声をかけたらニッコリと笑みを浮かべる。
「ニーコ」
「ん? なぁに、マーコ」
男性の服は見当たらなかったのか、手持無沙汰な感じだったニーコ。マーコに呼ばれて顔をあげる。
マーコがニーコのそばへ駆け寄り、コソコソと話している。
――何か気になることでもあったのかな?
私はマーコが見ていたワンピースを手にしてみる。
――ちょっと生地は荒い感じだね。チクチクしそう。
他のワンピースも似たような感じ。それにスカートばかりでズボンのタイプが見当たらない。
「雅、買いたいのはあった?」
「ん~、無理して買いたいほどじゃないなぁ」
それなりにお金は稼げたけれど、ここは使いどころじゃない気がする。
「じゃあ、私が買ってもいい?」
「欲しいの、あったの?」
「うん」
するとマーコは、先程触れてた緑のワンピースと棚に載っているオフホワイトのブラウスを指さしたので、それを手にしてカウンターへと持って行く。
【……試着しなくていいのかい】
【大丈夫。これでいくら?】
【なんだい。嬢ちゃんが払うのかい。二着で110ノルだね】
「110ノルだって」
「ん~と、銀貨1枚と銅貨が10枚?」
「そう」
リュックの中から財布を取り出し、お金をカウンターに載せる。
【……ちょうどだね】
私のほうをチラリとも見ずに、女性はお金だけ受け取って、そのまま作業に戻ってしまった。随分と無愛想だ。よくお店を続けてられる、と、逆に感心してしまう。
「服、ちょうだい」
カウンターに載せていた服を手にとって背を向けたタイミングでマーコに渡す。ドアを開けたタイミングで『収納』にしまったようだ。
「さて、次はどこに行く?」
「あそこ!」
再び、ニーコが気になる店を見つけたようだ。
猛ダッシュで走っていってしまった。




