第45話 冒険者ギルド(5)
奥から現れたのは、見事なビール腹の白髪を一本にまとめた、六十代くらいに見える男性。
ギラギラした青い目がヤバそうな感じだ。
【ロイド、こいつらだよ】
【はぁ!?】
驚いた顔の男性が、マーコたちに目を向ける。
【冗談だろ? そっちの嬢ちゃんだったとしても、信じられないが】
【私とニーコで狩ってきたのよ】
【なぁ、いつまでかかるんだ】
【あ、ああ、すまんな。ロイド、これの買取、どれくらいかかるよ】
【マジかよ……ああ、えーと、必要な部位とかはないか?】
【全部買取でいいよ】
【必要なら、また狩ってくればいいしな】
【……ちょっと待ってろ】
六十代の男性は若い人といっしょに、魔物の状態を確認して、種類ごとに数を数えると、小さな紙に何か書きつけている。
【……ほんとにおまえらが狩ったのか?】
チラリと目を向ける六十代の男性。
【何よ、文句ある】
ギラリと睨みつけるマーコ。見た目、5、6歳なのに迫力がある。
【いや、あー】
【なんだよ】
今度はニーコが不機嫌そうだ。
【……フォロンフロッグがあるんだったら、もしや他にもフォロン系の魔物があったりは】
マーコとニーコが目を合わせる。
「なあに? なんか言われてるの?」
「フォロンの森の魔物が欲しいみたい」
「まだ爬虫類系が残ってるんだけど」
「鹿とか猪とか、お肉美味しい奴は、出したくないでしょ?」
「ああ、確かに」
マーコの言葉に、ジビエのお鍋が頭をよぎる。売ってしまうのは、もったいない。
私の顔にその感情が浮かんでいたんだろう。マーコとニーコはニヤリとしながら頷いた。
その間、六十代の男性はこちらを気にしながら魔物のチェックをしていた。
【あるけど、売らない】
【ぼくたちのご飯だからな】
【なっ!? いや、しかし、売った方が金にはなるんだぞ! それに金があれば、美味い店で食える。そうだ、いい店を教えてやるっ】
たぶん、マーコたちが断ったからだろう。男性が慌てて何か言っている。
【自分たちで料理したほうが、美味しく食べられるからいい……ねぇ、まだ?】
マーコの目が据わってきた。
【す、すまん。ミージー、金額はこれだ】
【おう……すげぇな】
【もし、もし! 売る気になったら持って来いよ。できるだけ高く買ってやるからよ】
【……その気になったら~】
【おじさん、早くお金】
【あ、ああ】
私には会話の内容がわからないまま、買取の作業は済んだようだ。
受付のカウンターのほうへ戻ると、受付の男性はカウンターの中へ、私たちは先程の席に戻った。
【よし、えーと、内訳はこれだ】
六十代の男性から受け取った紙を、マーコたちに見せる。
【ふん、ふん。へぇ、フォロンフロッグって、そんなにいい値段するんだ】
【ああ。あれは狩るのに手間がかかるんだが……しっかし、本当によく狩れたよな】
【まぁね】
【で、この金額、全部渡す形にするか? 一応、ギルドで預かることもできるが】
「雅ー、ギルドでお金を預かってくれるらしいけど、どうするー?」
後ろに立っている私に、マーコが顔を上げて聞いてくる。
「結局、いくらになったの?」
「えーと、六万七千ノルだから、金貨6枚と銀貨70枚かな」
「おお~、凄いね」
「ムフフ~」
「でも、それくらいだったらマーコの『収納』にしまっておけばよくない?」
冒険者ギルドにお金を下ろしにわざわざ行くのは面倒ではないだろうか。
ATMみたいなのがあるとは思えないし、急に必要になった時にギルドのない場所だったら、最悪だ。
それに、これから買い物をしてみたいと思っているので、手持ちの現金は必要だ。
「わかったー!」
【お、どうするって】
【預けないで貰うー】
【大丈夫か?】
【何が?】
【いや、たまに物騒なのもいるからな。気を付けろよ】
【はーい】
【はーい】
何やら、受付の男性が心配げに話をしていたが、マーコたちの軽い返事のせいか、より一層不安そうな顔になった。




