第5話 平穏な土曜日の朝、猫たちに起こされる
朝はいつもキジトラとサバトラの姉弟猫に、決まった時間に起こされる。今日はお休みだというのに、いつもと同じ朝の五時半に起こされた。
キジトラのメスは『マーコ』、サバトラのオスは『ニーコ』という。命名は祖父だ。どんな意味があるのかと思ったら、昔好きだったアイドルの名前らしいと、祖母から聞いた。一瞬調べようかとも思ったけれど、祖父のプライドもあるだろうと、調べるのを止めたのを覚えている。
それでも、オスに『ニーコ』はどうだろうとは思ったが、もう慣れてしまった。
祖父が生きていた頃は何かと甘やかしていたせいか、コロコロに太っていたのに、二十歳になった今ではだいぶ痩せた。でも、お腹の上に二匹で乗られたら、それなりに重い。
「はいはいはい、ごはんね。ちょっと待って」
肌寒い中、布団から起き上がり、パジャマ代わりのジャージに半纏を着ると、台所へと向かう。古い家だから冷気が下から上がってきて、なかなか厳しい。
薄暗い台所で、私は二匹のごはん用の皿にお気に入りを出してやると、大人しく皿の前で待っていた二匹が勢いよく食べ始める。
その間に、昨夜ポットにいれておいて温くなったお湯を、水飲み用の深皿に入れてあげた。
二匹をそのままに、私は朝食を作り始める。
昨夜は寝る前に一杯、祖父が亡くなる前に漬けた梅酒を飲んで寝た。毎日、少しずつ飲んでいたので、そろそろ残りが少なくなった。
――おじいちゃんみたいに、作れればいいんだろうけど。
あまり器用でも、まめでもない自分を自覚しているだけに、深いため息が漏れる。
古い電灯に照らされた薄暗い台所。
スマホでBGMにボサノバを流しながら、小さなフライパンで、目玉焼きを焼く。ジューッという焼ける音を聞きながら、私はリビングの窓のほうへと目を向ける。
「……雨かぁ」
厚手のカーテンを閉めたままなので、外の様子はわからないけど、激しい土砂降りの雨が、窓ガラスにぶつかる音が聞こえる。
まだ肌寒い秋の雨に、余計に家の中が冷えている気がする。
朝から身体が怠く感じるのは、昨夜のお酒のせいだけではないのかもしれない。
雷は聞こえないものの、線状降水帯にでも入ったのかと思うくらい、ここまで酷い雨は体験したことがない。
近くには川は流れてはいないけれど、排水溝から水が溢れやしないか心配になった。
皿には焼きあがったソーセージが3本。そこに目玉焼きを加える。
お湯を沸かして入れるのは、インスタントコーヒー。お気に入りのカフェオレのスティックタイプだ。
チーンッ
キッチンのトースターの音が聞こえたので、いれたてのカフェオレの入ったマグカップを古びたダイニングテーブルに置く。
2枚並んだトーストを取り出して、皿に載せてテーブルへと戻る。気まぐれに買った、ちょっとお高めのバターをトーストに塗る。
「そういや、夜中の地震、大きかったなぁ」
まだ布団の中で寝ている時に、あまりにも激しい揺れに、思わず飛び起きた私。
しかし、しばらく待ったけれど、新たな揺れも起きず、直下型だったのかもと思った私は、すぐに二度寝してしまったのだ。
サクリと音をたててトーストを食べる。
――せっかくの週末なのに、どうにも気が晴れないな。
古い祖父母の家の部屋は、電気をつけても薄暗く感じる。そのせいもあるのかもしれない。
朝食を食べ終えた私は、食器を片づけようと椅子から立ち上がった時。
ズドンッ
再び激しい揺れが起きた。




