第42話 冒険者ギルド(2)
ドアを開けて中に入ると、なんとも男臭いニオイが充満していて、顔を顰めてしまう。
――なんか、運動部の部室みたい。
そう思いながら周囲を見渡すと、正面にはカウンター、左手には何か掲示してある場所、右手は飲食ができるようになっているようだった。
そして、色んな格好の人々(主に男性)がそれぞれの場所に集まっている。
ファンタジー脳の私は、てっきり、ドアが開いたらバッと視線が集中するとかあるのかと思ったのに、誰も気にしていない。
変に絡まれたりするのも嫌なので、それはそれでいいか、と思う。
「あ、あのおじさんのところ行こう」
「ちょっと待って」
ニーコがカウンターに座っているおじさんのところへと走っていく。
正面のカウンターには三人の受付担当らしき人が座っていて、ニーコが向かったのは一番左の席、壁際に座っていた中年男性のところだ。
眼鏡をかけた口をへの字にして厳しい顔つきの中年男性。残り二人は若い女性で、列ができているけれど、男性のところには誰もいない。
【冒険者登録お願いしますっ!】
【お願いしまっす!】
受付のカウンターは、マーコとニーコには少し高いようだ。二人並んで背伸びをして、カウンターに顎を置くように声をあげている。
その様子に受付の男性はへの字を真一文字に変えた。
【……冒険者登録をするためには、年齢が10歳以上でないとダメだ】
男性が渋い声で二人を諭すように話した後、チラリと私のほうへと目を向けた。
【あんた、保護者か。こいつらは、まだ登録できん】
【なんで】
【みかけで判断しないでくれない?】
【あ?】
【私たちの種族は、皆小さいのよ】
【そうだぞ】
【私たち、こう見えて二十歳なのよ?】
【はぁ?!】
カウンターの中の男性が、驚きの声をあげる。そのせいで、周囲の視線が私たちに向けられる。
「な、何、どうしたの?」
『フフ、こやつらが実年齢を言ったものだから驚いたのさ』
「あ、あー」
どう見たって、5、6歳の子供にしか見えない二人。そりゃ、驚きの声をあげるのは仕方がない。
【(まさか、ドワーフ……いや、小人族の血か!?)んんっ、あー、じゃあ、後ろの保護者はもっと年齢がいってるとか?】
【まぁ! 女性に年齢を聞くなんて】
【マーコは自分で言ったじゃん】
【それはそれ、これはこれよ】
ぎゃいぎゃいとマーコとニーコが言い合っていると、中年男性が考え込む。
【……あー、と、とりあえず、仮登録だけしておこうか】
【仮登録?】
【ああ。申告している年齢が、本当かどうかはわからんからな。おまえさんたちの様子じゃ、ここで登録できなかったら、よそでも同じことをやりそうだ。だったら、うちで登録しておいたほうがいいだろう】
【わかってるじゃない】
【フン、で、保護者のほうは、登録済かい】
【いいえ】
【じゃあ、ここで登録してくかい】
「雅、登録でいいんだよね」
「あ、うん。マーコ、大丈夫そうなの?」
「仮登録はしてくれるみたい」
「よかった」
【なんだ? 言葉が通じないのか?】
【だから、私が通訳してるんじゃない】
【そ、そうか。じゃあ、この紙に必要事項を書いて、サインしてくれ……って文字は大丈夫なのか?】
【私もニーコも大丈夫。雅のはサインは彼女にさせるわ】
【お、おお(本当に二十歳なのかもしれんな)】
中年男性は、終始、マーコにたじたじとなっていた。




