第41話 冒険者ギルド(1)
街に入っての第一印象は、道が整備されていること。整備といっても、アスファルトではなく、いわゆる石畳だ。ただ、細い脇道では土の道だから、雨の時はぬかるんで大変そうだ。
「おお~、これぞ中世の街並み~」
「そうなの?」
「そうなの?」
「テレビや雑誌で見ただけだけどね」
マーコたちの問いに苦笑いする私。
パソコンの壁紙が自動で変わるものの中に、ヨーロッパの観光地の美しい風景があった。それに似ている気がする。
「でも、ちょっと独特なニオイがするね」
「ああ~、下水とかじゃない?」
「うん、鼻をつままなきゃならないほどではないけど……ちょっとな」
ガラガラという音とともに、私たちの脇を凄い勢いで馬車が通り抜けていく。
「うわっ!」
「怖っ」
「危なっ」
服の端とかが引っかかったりしたら、そのまま引きずられて大変なことになりそうだ。
だけどこんな風景には慣れているのか、街の住人らしき人たちは顔色一つ変えていない。
――人身事故とか多そうだなぁ。
ちょっと不安になりながら、マーコたちと街の中を散策する。あちこちに看板を掲げているお店があるが、何の店なのかまではわからない。
「あ、あれが冒険者ギルドだね」
マーコが指さす先に、かなり大きな石造りの建物があった。大きな木製の看板に、見たことのない文字が書かれている。
「もしかして、あれ、冒険者ギルドって書いてある?」
「正解」
「……絶対、読めないヤツ」
英語のような文字だったら、なんとかなる気がしたんだけれど、あれはまるで、エジプトのヒエログリフみたいではないか。(遠い目)
「ま、まぁ、私たちがいるから、大丈夫だよ」
「そうだよ」
『最初から諦めるではない。雅なら、大丈夫だ』
「ユーコ、その根拠は何」
私たちがギルドの入口近くで話していると、その建物からゾロゾロと出てくる集団がいた。門のところにいたおじさんのような革の鎧に、腰に長い剣を下げている人や、ダークグリーンのローブを羽織っている人、長弓を背負っている人。
「彼らは冒険者かな」
「だろうね」
「おお……」
イメージ通りな冒険者である半面、ちょっと荒んだ雰囲気を持っている感じがして、若干腰が引ける。
彼らは私たちのほうは見ずに、そのまま道の向かい側へと移動して、私たちが来たほうとは反対の、街の奥の方へと歩いていってしまった。
「……ちょっと怖そうだね」
「冒険者にも色んなタイプがいるんじゃない?」
「それより、ここ、入るの?」
ニーコが冒険者ギルドのドアに目を向ける。
「雅の身分証を作ったほうがいいんじゃない?」
「あー、移動先の町や村に入るたびに、お金払うのも、地味に痛いか」
マーコたちにそそのかされて、旅をする前提になっている私。確かに、毎回、お金を出すのはもったいない気がする。
「前に並んでいたおじさんは商業ギルドの身分証を持ってたよ」
「そうなの?」
「うん。でも、雅は商人、って感じじゃないよねぇ」
マーコに言われて、自分のことを振り返る。
確かに接客業は未経験。ほぼ事務仕事しかしてこなかった私が、商人という柄ではないか。
『何か売買するようなことになった時に、考えればよかろう』
「そうだよ。まずは身分証を手に入れるという目的でいえば、冒険者ギルドが無難なんじゃないか?」
ニーコがワクワクした顔で私に言ってくる。
「もしや……ニーコが登録したいだけじゃないの?」
「グッ」
「えー、私も登録したいー」
ニーコは図星だったらしい。しかし、マーコも同じだったようで手を上げて主張してくる。
「……はぁ。たくさん魔物を『収納』してあるもんね。さっさと売っちゃいたいか」
「えへへ」
「でもさ、僕たちも冒険者ギルドのカードがあれば、お金払わないで済むんだよ?」
「た、確かに」
こちら【異世界】の人と会話ができない私が、移動先で毎回やりとりに苦労することを考えたら、確かにマーコたちと一緒に入れるようになっていたほうが無難ではある。
「じゃ、中に入ろう!」
「おー!」
意気揚々とドアを開けたマーコとニーコの後を、大丈夫かなぁ、と不安に思いながらついていく私であった。




