第38話 引きこもりか、旅立ちか
一日ゆっくりと家で過ごした私は、だいぶリフレッシュできたと思う。
空がオレンジ色になってきた頃に、マーコとニーコが戻ってきた。
彼らが周囲を調べてきてくれたおかげで、『マッピング』で見ることのできる範囲がかなり広がった。
地図を見た感じでは、森などの木々が少なく、平野のような印象。小さい村を二つほど確認して、どこまで行ってきたのよ、と思う。
最初の村程度の規模であれば、泊らずに通過するだけでいいかな、と思う。
しいて言えば、マーコとニーコが人の姿になった時の、現地人の反応は確認しておきたいところである。
そしてユーコであるが。
「畑が広がった」
『むふふー』
私の隣でユーコが胸を張る。
驚くことに、うちの庭が広くなっているのだ。チラリと見ると車庫のスペースも、軽自動車ならもう一台くらい置けそうなくらいに伸びている。大きくなったマーコ一匹なら、アンモニャイト状態でなら寝られそうだ。
畑でいえば、畝が二つくらいしかできなかったのに、倍の四つほどの畝ができていた。
土塀の高さもあって日陰が多くなってたのだけれど、これで少しは日当たりがよくなっただろう。
『もっと野菜を育てられるぞ。それも季節感関係なくな』
ニヤリと笑うユーコに、グッジョブと右手の親指を立てる。
季節感関係ないとなったら、今の時期でも夏野菜が食べられるということだ。トマトやナス、キュウリ、トウモロコシなんかも植えられるのだろうか。
「……このまま、家に引きこもっていてもいいんじゃない?」
今更ながらに、そう思ってしまうのも仕方がないと思う。
結界もあって、魔物や悪い人に襲われることもない。ここまで生活に困らないのだ。
『いいのか? それで』
「面倒な人付き合いをしなくても、生活できてしまうのなら、わざわざ人のいる場所にいかなくてもいいかな、とか」
最初の村で、特別悪い印象があったわけではない。むしろ、かなりお世話になったと思う。
どちらかといえば、あちらでの人付き合いのほうが面倒だったから、余計にそう感じるのかもしれない。
『ふむ。私はそれでも構わぬが……』
「でも、雅~、あっちにいた時は、旅行行きたいねぇ、っておばあちゃんと話してなかった?」
「そうだよ。なんとか温泉? 一緒に行きたいね~、とか」
マーコとニーコの言葉に、うっ、となる。
確かに、仕事が忙しくて、どこかに旅行になんて行く暇もなかったし、身体を壊してからなんて、祖父母に心配ばかりかけてて、祖父母も旅行に行かせてあげられなかった。
「それにさ、もしかしたら雅の知らない美味しい物もあるかも? しれないし」
『私の知らない野菜や果物と出会えたら、うちの畑で育てるのもやぶさかではない』
ユーコまでが、私をもう一度旅に出るようにと、そそのかしてくる。
確かに、初めての村で美味しいピクルスと出会うことはできた。同じように、新しい何かと出会えるだろうか。
「ちなみに~」
マーコがフフフフと悪い顔をする。
「この『マッピング』の地図に載ってないこの先、ちょっと大きな町があった」
「何か美味しい物があるかも」
『なくても、観光に行ってみればいいだろ?』
「……本当は、あなたたちが行きたいだけなんじゃないの?」
そう言うと三人が顔を見合わせ、イシシシと笑った。
ちょっと可愛かったので、許す。




