第36話 マーコとニーコ、服装を変えてみる
食事を終えた私は、そのままチェックアウトした。
まだ朝早いせいで、家々の人の気配は感じるものの、村の中に人の姿は見えない。
村を出る前に、何か食料を買って行きたいところではあったけれど、まだ店は開いていないようだ。
「みゃう~」
『そうだな。買い物なら、次の村でもよかろう』
「にゃ」
「にゃぁ」
私たちは村から入ってきた門とは逆の門のほうへと歩いて行く。
そこにいたのは、昨日のおじいさんとは違って中年男性で厳しい顔をしている。朝早くから、お疲れ様なことだ。
私はペコリと頭を下げてから、未舗装の道を歩き始めた。
だいぶ歩いて振り向いても村が見えなくなった。
周りは平野で遠くまで見通せるが、人の姿は見られない。轍の跡が残っているところからも、ここは馬車で行き来するようなところなのかもしれない。
「この辺りで道から離れて、家を出さない?」
『おう、そうだな』
道から離れてしばらくしたところで、ユーコが家を出してくれた。
「あー、やっぱり我が家が一番ー!」
『フフフン』
「にゃぁ~」
「にゃにゃ~」
皆も同じ気持ちなのだろう。
門扉を開けて敷地の中に入ると、マーコとニーコは袴姿に変わった。
「あー、雅とおしゃべりできないのは、めんどくさいー」
「ほんとだよー」
私の後ろをついてきながらブーブー文句を言っている。
「私もだよー。ユーコがいてくれたから、通訳してもらえたけどさぁ。二人も会話わかってるんでしょ?」
「わかる」
「わかるー」
「……ねぇ、村とかに行った時は、袴姿じゃない人型になれない?」
玄関のドアを開けてから、振り向いた時。
「こんな感じ?」
「これでどうだ?」
なんと二人は、宿屋で会った女の子と同じ格好(アイボリーのシャツに少し色褪せたオレンジ色のスカート)をしていたのだ。
同じ格好の二人は、髪の色の違う双子の女の子に見える。
「ウフフ、レベルが上がったから、服も変えられるようになったの」
「身体の大きさだけじゃないんだぞ」
自慢げに胸を張る二人なのだけれど。
「ニ、ニーコは男の子だよね?」
「うん? そうだよ? 何、当たり前のことを」
「その格好は女の子の格好なのよ」
「!?」
「いや、ニーコが気にしないならいいけどさ。でも」
「やだ! 男の子の格好って、どんなの?」
「そうだな。スカートじゃなくて、ズボンなんだけど」
「ズボン?」
「おじいちゃんが穿いてたの覚えてない?」
ニーコは腕を組んで、うーん、と考えてから、ポンッ、と手を打つと、ボワンッと煙が現れたかと思ったら、そこには白いポロシャツにグレーのスラックスを穿いたニーコが現れた。
「おお~!」
「これか? これならいいか?」
「こっちの人の格好として通用すればいいと思うよ」
「わかったー」
私たちは家の中に入ってリビングのソファにどさりと座る。
「あー、やっぱり、うちのソファが一番だー」
「一番だー」
「いっちばーん」
「うげっ」
私の膝の上に二人が飛び込んできた。
「人の姿は重いんだよ~」
思わず叫んだ私であった。




