第34話 宿に泊まろう(2)
異世界初の他の人が作ってくれた食事は塩味で素朴な煮込み料理と黒っぽい硬いパンだった。
正直、家で食べるレトルトのシチューのほうが美味しい。硬いパンは少し酸味が強い気がした。煮込み料理のスープにつけながらなんとか食べきった。
こちらの味というのが気になってはいたけれど、想像通りにイマイチではあった。
これは村が田舎だからだろうか。もう少し都会だったら、味の違いなんかも出てくるのだろうか。
【お客さんの従魔は?】
食事を終えた私が部屋に戻ろうとした時に、先程私を呼びに来た女の子が声をかけてきた。
「ん? なぁに?」
【あの従魔は?】
『マーコたちのことだろう』
「ああ! えーと、部屋、部屋で寝てる」
ジェスチャーで寝ている格好をしてみせると、少し寂しそうな顔をされてしまった。
【ああ、お客さん、ごめんなさいね。私が可愛い子たちだと言ったから、この子も気になっちゃったみたいで】
何か謝られてしまったので、手を振って私は部屋へと戻った。
「結局、なんて言ってたの?」
『女将がマーコ達のことを可愛かったと言ったから、あの子も気になったようだよ』
「あー、それは可哀想なことしたね」
「にゃぁう?」
いつの間に戻ったのか、マーコとニーコはベッドの上で寝ていた。
「あ、おかえり。村はどうだった?」
私が声をかけると、マーコは人の姿に変わった。
「うん、まぁ、小さな村だけど、悪くはないと思うよ。ね、ニーコ」
「みゃぁ」
「一応、村長っぽい家と、鍛冶屋っぽい家もあった。でも、トイレは汚いし、お風呂もないみたいだよ」
「うっ、それはキツイ」
『雅、トイレは大丈夫か?』
「言われたら、いきたくなっちゃったじゃない」
森の中を移動中は空地を見つけては、ユーコに家を出して貰っていた。
しかし、さすがにこの村の中で出すわけにもいかない。
「ううう、とりあえず、トイレ行ってくる……マーコ、案内お願いできる?」
「仕方がないわねぇ。うちのトイレと違って、穴が開いてるだけだったわよ」
「うげっ」
そうは言っても、生理現象を抑えることはできない。
マーコは再び猫の姿になり、私と一緒に部屋を出た。
女将たち家族は二階にいるらしく、受付のところには人影はなかった。私はそのままドアを開けてトイレに向かう。
――ここも不用心だけど、大丈夫なのかね。
昔の日本も、村とかでは鍵を締めなかったという話を聞いたことはある。この村もそういう感じなんだろうか。
私は前を進むマーコの後をついていく。
トイレは村の共有になっているようで、村の端、畑の近くに数台の箱が置かれている場所にあった。
外はすっかり夜。月明かりがあるおかげで、村の中を歩ける感じか。街灯もない場所というのは、やはり怖い。
懐かしい田舎の香り……と言えなくもないが、顔を顰めてしまう臭いではある。
古びた木のドアを開けて……これ以降は何も言うまい。
げっそりしながら部屋に戻った私。
――あれが、ここの普通のトイレだったら、無理だ。
呻き声をあげながら、ベッドに倒れこんだ私であった。




