第32話 お金を工面しよう
※ここからは、異世界の言葉は【】で表現します。
ユーコのおかげで相手の言ってることはわかるものの、私の方の伝えたいこと(村に入りたいこと、宿はあるか)は身振り手振りで必死に伝えた。
村に入るお金は必要だったけれど、手持ちのお金(日本の紙幣や小銭を見せた)を見せたら、おじいさんが100円玉を気に入って、それを取って中に入れてくれた。
それでいいのか、と思わないでもないが、入れてくれたのは助かった。
どこかで何かと換金してお金を手に入れないといけない。とりあえず、一泊だけ泊れる宿を紹介してもらうことができたのは、奇跡に近かった。
宿に行く前に、現地の通貨を手に入れるために、こっそりマーコが渡してくれた狩ってきたウサギの魔物の毛皮を見せたら、近場の雑貨屋のようなところに中年女性が案内してくれた。
そこで10枚ほど毛皮を売ったら、銀色のコイン5枚を渡された。
『こちらの通貨の単位はノルというみたいね。それで500ノルだって』
「……それが高いのか、安いのか、わかんないけどね」
【宿屋に泊るなら、それじゃ足りないよ】
『……どうも足りないようだね』
【他に売れる物はないのかい?】
中年の女性が私のほうに手を差し出して、雑貨屋のカウンターをトントンと叩く。もっと出せ、と言っているのだろう。
私は他に何かあったか考え込みながら、リュックを下ろして中を探す。
『マーコがキツネの毛皮があると言ってる』
「(じゃあ、それもちょうだい)」
マーコが渡してくれたのは、キツネの魔物の毛皮、これも10枚。
【あんたのそれは、マジックバッグなのかい。悪い奴に見られないようにしな】
『おばさんが、マジックバッグなら悪い奴に気を付けろって』
「(わかった)」
マジックバッグではないけれど、気にかけてくれる中年女性にコクリと頷いて見せる。
キツネの魔物の毛皮は、ウサギよりも高かったらしく、銀色のコインが21枚カウンターに置かれた。
『2100ノルだって』
【これなら、あの宿なら二、三泊くらい余裕でできるだろ】
【あんた、もうちょっと色を付けてやったらどうなんだい。こいつなんて綺麗に剥いでるじゃないか】
中年女性が毛皮の一枚を手にして、店主に見せつけるように何か言っている。
【何言ってんだ。色付けて、この値段だ】
【かー、男のくせに肝の小さいこった】
『……おばさんが、店主に色を付けろって言ってる』
私はユーコの言葉に慌てて二人の間に入って、中年女性のほうを押しとどめる。そして素直にコインを受け取り、リュックの中へ入れて、頭を下げる。
【まったく……じゃあ、宿屋はあっちだよ】
中年女性が店の外に出て指さした先に宿屋があるらしく、私はコクコク頷いてそちらに目を向ける。一軒だけ小さな看板が下がっている家があった。きっとあれのことだろう。
私は中年女性に頭を下げると、宿屋へと向かった。
* * * * *
「あんたねぇ、あんな小さい子が言葉もわからない土地でなんとかしようとしてんだ。もうちょっと、なんとかしてやったらどうなんだい」
中年女性が店主に文句を言う。
「ハッ、うちは慈善事業ができるほど余裕はねぇってんだよ」
「ほんとにあんたって人は」
「そんなに言うなら、お前さんがどうにかしてやりゃいいだろう」
「言われなくたって」
中年女性はフンッと鼻息を吐いて、雑貨屋を出て行った。




