第24話 雅たち、移動を開始する
ユーコたちの勧めもあって、私たちは翌日の朝早くに移動を開始した。
家を出た時には空が白んでみえた。ちょうど朝日が昇ってきているところのようだった。
我が家がユーコが手を伸ばしただけで一瞬で消えたことにはびっくり。育てていた野菜類はどうなるのか心配だったけれど、それも一緒に保存されるそうだ。しまった状態で野菜はどうなるのかと思ったら、時間経過はするようで、しっかり育つらしい。
私はリュックを背負いながら、ユーコはぽよぽよ浮かんで、マーコの後を追いかける。彼女は向かう方向がわかっているようで、迷いなく前へ前へと進んでいる。
「ニーコは?」
ニーコの姿が見えなくて、前を歩くマーコに声をかける。
「ちょっと離れた後ろにいるよ」
「そうなの?」
「うん。ちゃんと『マッピング』で確認しながら歩いてるから、大丈夫」
彼らの『マッピング』の画面は見ることができる人を選べるようで、今はマーコにしか見ることができないようにしているらしく、残念ながら私には見えない。
『雅は前に進むことだけ考えろ』
「う、うん」
ユーコの言葉に頷く私。
マーコが先行してくれてるから、少しは歩きやすくなっているんだろうけれど、草は茫々だし、太い木の枝が落ちてるしで、歩きづらい。
私よりも小さいマーコがずんずん歩いて行くのに、情けない。
ギャウンッ
「えっ」
後ろで獣の鳴き声が聞こえて、足を止めて振り返る。
「雅、前!」
「あ、う、うん」
マーコの叱咤する声に、慌てて足を進める。
――絶対、ニーコだ。
姿の見えない彼が、後ろから襲ってきた魔物を倒したのだろう。そう思わないと、怖くて歩けなくなる。
それが何度か繰り返された頃。
「あそこで、一旦休憩」
「はぁ、や、休める~」
ちょうど二、三本の木が倒れている空地があったので、そこで休むことになった。
私の膝たけくらいの倒木に腰をかける。腕にしている使い古した腕時計を見る。初めての給料で自分のために買った安物の腕時計だ。それを見ると、10時を半ば過ぎたところ。
「つ、疲れた~」
「なぁに? 雅、運動不足じゃない?」
「いや、だって、仕方ないよね?」
正直、職場と家の往復だけしかしてなかったし、そもそも14歳当時だって、帰宅部だったから、体育の時くらいしか運動なんてしてなかったのだ。
「まぁ、そうだけど。でも、これ見て?」
マーコが彼女の『マッピング』の地図を見せてくれた。
「ここが、元々家があったところ」
青い旗マークが立っている。そこからマーコたちの猫マークがついている場所までの距離がどれくらいなのかはわからないけれど、ほんのちょっとしか移動できていない。
あんなに歩いたつもりだったけど、マーコたちがマッピングした範囲からですら抜けられていないのだ。
「……全然、進めてないね」
「だいたい、4、5キロくらい?」
「えぇぇ!?」
朝から歩いたのに、これしか進めてないのか、と思うと、がっかりする。運動不足どころではない。
『まぁ、お茶でも飲んで、少し休め』
「あ、はい」
私はため息をつきながら、リュックの中から水筒を取り出した。




