第23話 人型の魔物の存在
異世界に飛ばされて5日が経った。
その間、マーコとニーコは人の姿で森に出かけレベル上げに勤しんでいた。
彼らが獲ってきた魔物の生肉(ヘビとかネズミとか犬とか)は、どう処理したらいいのか迷ったが、ウサギの肉はジビエ料理でも使ってたのを思いだして、シチューにして食べてみた。
意外に美味しくできたので、ウサギの肉だけは使うことに決めた。他の肉は『収納』してもらっている。
ちなみに、マーコとニーコは人の姿になってもカリカリを欲しがる不思議。
私のご飯を分けようとしたけれど、ニオイだけ嗅いで食べなかった。人の姿でお皿のカリカリを直接食べている姿は、かなりシュールだった。(遠い目) そのうち、普通に食べてくれる日は来るのだろうか。
ユーコは我が家の不具合チェック&メンテナンスと、小さな畑の面倒をみてもらっている。
私(160センチ)の胸元くらいだった経年劣化していたブロック塀を、私の身長くらいの高さの白い土塀(瓦付き)に変えてもらった。ただ、部屋の窓からでしか外の様子が見えなくなったのは、いいことなのか悩ましい。
畑の日当たりが心配だったのだけれど、予想外に畑の野菜の成長が早くて、あと2、3日したら収穫できそう。ありがたいといえば、ありがたいけど、少し怖い。
ユーコは食事は必要ないようで、食事中はどこかに行ってしまっている。それは、それで寂しいところだ。
そんな中、私は森を移動するための準備をしていた。
マーコたちの話によると、彼女たちが動き回った森の中は比較的平坦ではあっても、当然、人が歩いた後などはないから、まともな道などはない。
私が持っているのは職場に履いて行った白いスニーカーか、黒のスリッポンスニーカーくらい。森の中を歩くなら、白くてもしっかり紐で結ぶタイプのスニーカーのほうがいい気がする。
他にも動きやすい上着やジーンズ、リュック、非常食などを用意した。
ユーコが家を持ち運べるとはいえ、いつでも出せる環境にあるとは限らないし、万が一、はぐれてしまったらと思ったら、最低限の用意はしなくては、と思ったのだ。
そして、5日目の夕方、マーコたちが戻ってきた時に、ユーコが重々しく宣言した。
『そろそろ移動したほうがいい』
「へ? なんで?」
『魔物が戻ってき始めた。そうだろう? マーコ、ニーコ』
ユーコの言葉に驚いた二人は、互いに顔を見合わせてから、私に向かって頷いた。
「獣のタイプの魔物が多かったのが、少し離れたところで人型の魔物と遭遇した」
「ひとがた?」
「ゴブリン一体だったけど、あれが一体いるってことは、すでに複数のゴブリンが戻ってきてるってこと」
「ゴブリン一体ならマーコの一撃でいけるけどさ、そのうち集団で襲ってこないとも限らないし。ゴブリンがいればオークや、下手すればオーガも出てくる可能性もあるんだ」
二人に真剣な顔で言われて、ゾクッとする。
ゴブリンとかオークとかオーガとか、某ファンタジー映画でのイメージしかないけれど、それに追いかけられて襲われるなんて怖すぎる。
それでも、少しだけ猫又の二人だったらなんとかなるんじゃ、と思ったけれど、足手まといの私がいる。
あの表情だと、私を守りながらは彼らでも難しいということだろう。
「……わかった。猶予は?」
「ほんとは、明日にでも移動したいところ」
「マーコの言うとおり。あいつらの移動速度は侮るとダメなやつ」
『特に雅は、背が縮んだからの』
「背が縮んだから何?」
『……足も短くなっとろうが』
「! 余計なお世話よ!」
『カカカカッ』
ユーコの楽し気な笑いに、その場の空気が少しだけ和らいだ気がした。




