第20話 ユーコのレベルアップ
お昼を過ぎても戻ってこないマーコとニーコを心配して、私は一人、門扉の前で待っている。
消えかけの結界と、ユーコの結界で二重に守られているせいか、外の音が全然聞こえないのもあって少し不安に感じてしまう。
『雅、屋根、直してきた』
「え、あ、ありがとう」
私は気付いていなかったけれど、どうも平屋の屋根の瓦が、今回の転移で一部壊れていたらしい。雨漏りするほどではないけれど、ユーコが直せるというのでお任せした。
『おかげで、私もレベルアップ』
「え? レベルとかあるの?」
『うむ。家の管理を重ねていけば、私もレベルアップする』
私の隣に立って、同じように門扉の外に目を向けるユーコ。
「レベルアップしたら何ができるの?」
『今回のでは、修理の機能がアップした。壊れているところや、古くなって傷んでるところがあれば直すぞ』
「へぇ! じゃあ、何をするとレベルアップできるのかな?」
『庭で野菜を育てたり、さっきの屋根の修理もそうだな。一番簡単なのは、この家で雅が生活をすることだ』
「なるほど……」
一番簡単というだけあって、私が生活するというのは、レベルアップには微々たるものらしい。
早くレベルアップしてもらうには畑の野菜が育つまでは時間がかかる。
むしろ、修理してもらえるような場所は探せば出てきそうだし、そのほうが早くレベルアップできるんじゃないか、と思っていると。
『あ、レベル上がった』
「え、今は何もしてないよね」
『あっち』
ユーコがテケテケと駐車場のほうへ向かうので、私も後をついていく。
『あれ』
ふわりと浮かんだユーコが指さしたのは、駐車場の門扉の前に倒れている獣。たぶん、結界にぶつかって倒れているんだろう。
「え、猪?」
『どうかな。マーコたちが戻ってきたら『鑑定』してもらうといい』
「あの子たち、そんな能力もあるのね」
『あれの攻撃を防御して倒したので、私のレベルがあがったようだ』
「はぁ~、なんか凄いねぇ」
『うむ。レベルが上がったから、一部屋追加することができるぞ』
「え」
予想外のユーコの発言に驚く私。
『どこでも追加できるぞ。どうする』
「いやいやいや、部屋、どこに作るっていうの? そんな敷地に余裕なんかないわよ?」
『敷地はいらんぞ? ドアをつければ、そこが部屋だ』
ユーコの不思議回答に首を傾げる。
『例えば、家の中の廊下の壁にドアをつけてもいいし、玄関入ったところに別の扉をつけてもいい』
「な、なるほど?」
ちびっ子三人と私の合計四人で生活するだけなら、新しい部屋は必要ない。
「で、でも、今はいいかな」
『そうか? 必要になったら、いつでも言え』
「ありがと。それよりも、ユーコ、屋根の修理ができるんだったら、駐車場の門扉も見てもらえる?」
改めて縦格子の門扉を見たら錆があちこちに浮かんでいて、みっともない気がしてきたのだ。
『ん。これは幸太郎が作った物だな』
幸太郎とはなくなった祖父。DIYが得意で、この門扉も祖父が自作したものだった。
『少し、立派にしてやろう』
ユーコはそういうと両手を門扉のほうへと差し出す。
ピカッと一瞬光ったかと思ったら、錆だらけだった門扉が、黒いしっかりした縦格子の門扉に変わっていた。
「おお~」
『フフン、どうだ』
「凄いね! おじいちゃんのよりも頑丈そう」
『当然だ。私が作ったんだからな』
偉い、偉いと頭を撫でると、上機嫌だ。
ちなみに、座敷童になってから撫でても、私の年齢は変わらない。それは、マーコたちへの鼻チューも同様で、彼らがバージョンアップ(?)するのに必要だっただけなのだそう。
『むむっ、何か来るぞ』
ユーコが眉間に皺をよせ、門扉の外に目を向ける。
ドン、ドンッ
地面に何か落ちた音がしたかと思ったら。
「マーコ?! ニーコ?!」
突然、服だけではなく、顔にも汚れをつけた二人が現れた。




