第17話 マーコとニーコの初めての冒険(1)
「ねぇ、雅、外行ってきてもいい?」
赤い袴姿のマーコが、首を傾げながら聞いてくる。
「僕も、行ってきたいんだけど」
マーコの後ろから顔を出すニーコ。こっちはエメラルドグリーンの袴姿だ。
「ほら、レベル上げないと使えない魔法とか、スキルとかあるからさ」
マーコの言葉に、うーん、となる。
確かに、魔法がいくつかリストアップされているのに、使用不可になっているものがあると言っていた。いわゆるステータスの画面に表示されているらしい。彼らにしか見えないのが残念なところ。
「でも、家の周りの魔物って強いんじゃ」
私が見たのは蛇だけで、まだ実際に魔物は見ていない。
しかし、マーコたちから聞いたこの森の状況を考えたら、この子たちで大丈夫なのか、心配にはなる。
「でも、戦わないとレベル上がんないし」
「厳しかったら、すぐに逃げてくるよ」
「うーん」
マーコとニーコが可愛い顔で見上げてくる。これを拒否できる人はいるだろうか。
いや、いない。
魔法や爪で木を切り倒す姿を見ているから、そう簡単に魔物にやられない……はず?
結局、あんまり家から離れないことを条件に、外に出て魔物を狩ってくることを許した。
「いってきまーす」
「いっくぞー」
楽しそうに門扉を開けて飛び出して行くマーコとニーコを見送りつつ、私は不安でいっぱいだった。
* * * * *
雅の家から飛び出して、森の中を走るマーコとニーコ。袴姿に足元は足袋に草履
なのに、ぴょーんぴょーんと、とんでもないスピードで駆け抜けていく。
そして、ものの数分で魔物と遭遇する。
「ほお~、これが魔物という奴か」
「マーコ、ただの蛇じゃないのか?」
マーコたちの目の前に現れたのは、以前、雅の家のそばをかすめていった蛇だ。
「うむ。『鑑定』によると、グリーンヴァイパーとかいう魔物のようだぞ」
「あ、そうか。『鑑定』ってのがあったっけ」
のんきに話している間に、当のグリーンヴァイパーが鎌首を上げる。長さは1メートルほどで、マーコとニーコの身長よりも少し足りないくらい。胴の太さは10センチくらいと、なかなかの太さ。こんなのに巻きつかれたら大変なはずなのに、マーコもニーコも余裕の表情。
「へぇ、こいつの肉は鶏肉みたいに淡白みたいだよ」
「これ持ってったら、雅、喜ぶかしら」
「そういえば、肉がないって嘆いてたよね」
雅へのお土産にいいかもしれない、と思った二人の目がキラリと光る。
それに気付いたのか、グリーンヴァイパーはビクリと身体を震わすが、見た目が子供の二人は、狩りやすい獲物にしか見えていない。
「ほんじゃ、いっただっきまーす」
シャキンッという音とともにマーコの両手の爪が長く伸び、グリーンヴァイパーに飛び掛かる。
ザクッ
マーコの一撃が、グリーンヴァイパーの首を切り裂くと同時に、ピロロンという音が頭の中に響く。
「ほえ? 何の音?」
「どうかした?」
駆け寄ったニーコに聞かれ、変な音がしなかったか確認するが、ニーコはプルプルと首をふる。
「それより、とりあえず、そいつは『収納』しておこうよ」
「あ、そうだね」
首を切り落とされてなお、びくびくと身体を動かしているグリーンヴァイパーをつかんで、マーコは『収納』にしまいこんだ。




