表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちの猫、めっちゃ強いんですけど~愛猫たちと異世界満喫生活~  作者: 実川えむ
異世界に飛ばされる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/21

閑話:座敷童ユーコ

 押入れの奥にしまい込まれていた市松人形。

 これが松本家にやってきたのは昭和の初めの頃だった。

 元はとある地方にある松本家の本家が保管していたもので、大正時代に、当時の当主の娘のために手に入れた物だった。

 そこそこ裕福だった松本家本家は、市松人形の衣装にもこだわった。赤い絹の着物には金糸銀糸の刺繍がほどこされ、それには松本家の家紋も縫いこまれていたくらい。

 しかし、戦時中に一家離散、本家の屋敷に残されたのが、この市松人形。それを曾祖父が貰い受けてきたのだ。

 そんな市松人形が、なぜ封印されるまでになったのか。

 それは他家から嫁入りした、雅の曾祖母が『視える』と言いだしたから。


『これには、女の子供の霊が宿っている』

『このままでは、我が家が呪われる』

『封印してしまえ』


 キンキンと叫ぶ嫁に気弱な曾祖父は逆らうことなく、近くの寺で除霊とともに封印をしてもらった。しかし、それを寺に奉納するでもなく持って帰ってきたのは、曾祖父なりに思い入れがあったから。

 なぜなら、その市松人形の持ち主であった、本家の娘に対する淡い初恋の思い出があったから。

 実際のところは、曾祖母が曾祖父の未練に敏感だったせいの妄想から始まったことだったが、曾祖母はそこまでやってくれたならと、溜飲を下げたのだ。


 ――あねさんが、宿ってるなら、それでもいい。


 嫁の顔色もうかがいながら、そんな思いを抱いていた曾祖父。結局、市松人形を愛でることなく家の押入れにしまい込んだまま亡くなってしまった。


 ――繭子が宿るわけなんかないのにね。


 ユーコはかつての持ち主である本家の娘、繭子のことを思い出す。

 戦時中、疎開先で病気になって、二度と本家の屋敷に戻ることがなかった繭子。疎開先には持って行けずに屋敷に残されていたユーコの元に、繭子は魂だけの状態になってきたけれど、無言でそのまま消えてしまった。

 そして気が付けば、作られて100年を目前にしていたユーコ。このまま誰の目にも触れられずに、付喪神になるのかと思っていたが、家ごと異世界へと転移されたことで、彼女の人形としての生が変わった。

 神からの声が届いたのだ。


『この家の面倒をみてくれないか』


 天照大御神だと名乗る女の声に戸惑うが、自分に与えられた初めての使命に、ユーコは期待に震えた。

 そして、ついにマーコとニーコに見出される。

 雅によって、付喪神ではなく座敷童に変えられ、豪華な着物から、真っ赤なちゃんちゃんこに黄八丈の姿に変わったユーコだが、これも悪くない、と思っている。

 何より、意思の疎通ができるのが嬉しい。


 ――それにしても。


 目の前で、マーコとニーコと真剣な顔で話をしている雅を見て、口元が緩むユーコ。


 ――まさか、繭子がつけてくれた名前と同じ名を付けられるとはね。


 繭子が付けた名前は『裕子』。彼女の幼馴染だった女の子の名前だった。

 

 ――まぁ、神からのお願いだし、繭子と同じ一族だし、面倒みてあげましょう。


「ねぇ、ユーコ」


 雅がユーコに期待の眼差しを向けてきた。


『なぁに』

「庭に畑ができるって言ったじゃない?」

『ええ』


 この家の庭は、猫の額ほどの小ささで、畑というのもおこがましいが、雅一人が食べるのに困らないように、ユーコにもさりげなく『ちーと』が授けられているのだ。

 マーコやニーコのような派手さはないけれど、ユーコは自分の力を気に入っている。


「あのね、小松菜って植えられる?」


 雅の小さなお願いに、ニッと笑みを浮かべるユーコであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ