第14話 座敷童、爆誕
二人がかりで出してきたのは細長い古びた木箱。その箱には、なにやら達筆な文字の書かれた札が、何枚も貼られている。いわくがありそうで、見るからにヤバそうだ。
――じゅ、呪物!?
うちの押入れにそんなものがあるとは思いもしなかった私が呆気にとられている間に、二人はその木箱を床にドンと勢いよく放り投げた。
「さてと、お札は剥がしてぇ」
「まったく意味ないのを貼ってて、馬鹿みたいだなぁ」
マーコとニーコがべりべりと剥がしていく。
「え、え、だ、大丈夫なの?」
「だいじょぶ、だいじょぶ」
「ただのシールみたいなもんだから」
ニーコがそう言って最後の一枚を破いたと思ったら、マーコがパカリと蓋を開けた。
中に入っていたのは、白い絹に包まれていた古い市松人形。金糸や銀糸で刺繍が入った真っ赤な着物に、金色の帯。見るからに高価そうな着物を着た人形だけれど、顔の部分に茶色いシミが出来ている。
「じゃあ、雅、この子にも齢を分けてあげて」
「え?」
「この子の場合は、数回頭を撫でてあげれば大丈夫」
「そうだな。5回も撫でれば足りるんじゃね?」
マーコとニーコが、はい、と木箱を差し出す。
あと5歳も分けてあげたら、私は14歳。成人前になってしまうんだけれど、それは問題ないんだろうか。
「ほら、早く」
「え、あ、うん」
マーコの強い圧に負け、黒い髪を撫でる。艶々した髪は人毛だろうか。5回撫でてやると、マーコたちとは違った柔らかい光に包まれたかと思ったら、市松人形は宙に浮いて一際強く光った。
「お、起きたか?」
「ん~、でもちょっと弱々しいわねぇ」
マーコとニーコが腕を組みながら見上げている。
そこに浮いているのは市松人形ではなく、マーコたちと同い年くらいに見える女の子。
顔のシミは消え、先程までの豪華絢爛な着物は消え、真っ黒い髪に赤いちゃんちゃんこ、黄色い生地に赤の格子柄を着ている。
――座敷童?
先ほどまでの市松人形との違いに、首を傾げる。
「ほら、降りてきなさいよ」
マーコの言葉に従って、女の子はゆっくりと降りてきて畳の上に立つ。
俯いた状態だった女の子が、ゆっくりと顔をあげる。大きな黒い目がキラリと光る。
『お前たち、生意気』
女の子は口を動かさずに不機嫌そうな声で伝えてきた。
――テレパシー? 念話?
びしりと固まってしまう。
「生意気って言っても、あんたが一番最後なんだもの、仕方ないだろ?」
「そうそう。私たちが先に雅と出会ってるんだし」
『私のほうが年長者。敬え』
「は? ずっとしまい込まれてただけのくせに」
「そうだ。俺たちが出さなかったら、ずっと押入れの奥にしまい込まれてただろ」
『……猫又になりたてのくせに』
「ちょ、ちょっと、落ち着いて!」
私は険悪な三人の間に入って声をかける。
「雅、ここで上下関係をはっきりさせとかないとダメなのよ」
「そうだぞ。こういうのは最初が肝心だ」
「いや、それよりも、彼女は何?」
私の言葉に、二人は顔を見合わせてから、再び私に目を向ける。
「元は、あと1、2年で付喪神になるところだった人形よ」
「雅から齢を分けてもらって座敷童になった」
『以後、よろしく』
……やっぱり、座敷童だった。




