第13話 ニーコに鼻チューする
目の前に正座しているちびっ子巫女さん姿のマーコ。 ちょこんと座っているマーコが凄く可愛くて、思わずニヨニヨしてしまう。
「さて、じゃあ、次はニーコをお願い」
そんな私のことは完全スルーして、マーコは彼女の背後に座っていたニーコをずるずると引っ張る。
「はい」
「え」
「私と同じ回数だけ、鼻チューして」
「あ、その」
私はマーコの勢いに押されて、少し戸惑う。マーコって、こんなに気が強い子だったんだろうか。
普段はどちらかというと、私にまとわりついているニーコを離れて様子を窺っている感じだったのだけれど。
「なぁに?」
「いや、齢を与えるって、やっぱり私、若返ってたりするのかな?」
正直、実感がわかない。
「そうよ。10年分貰えたから、こうして人化できたの。そうねぇ……あ、鏡! 鏡を見てごらん」
マーコが私を立ち上がらせて、私の部屋の姿見の前に立たせた。
「ほら、よく見て」
「……?」
マーコに言われて鏡を見る。何かが変わったのかと、真剣に自分の顔を見る。
「……シミが減った?」
「もう! 小じわも減ってるわ!」
地団駄踏みながら言うマーコ。その言葉に目元を見て、ああ、確かにと思った。でも、もともと薄っすらあったものだから、言うほどの違いはわからない。
しいて言うなら、肌が少しだけ張りが戻ったような?
「だから、同じ十回鼻チューすれば、あと10歳若返るの。さぁ、早く、さっさとやる!」
マーコの勢いにコクコク頷き、すぐに仏壇のある部屋に戻る。そこにはニーコがお座りをしながら待っていて、その目には期待が浮かんでいるように見える。
「じゃ、じゃあ、ニーコも鼻チューね」
「にゃ」
ニーコが返事を返してきたのでクスリと笑うと、そのまま畳に座り、ニーコを抱えあげる。ニーコはマーコと違って、目の色は黄色と緑のマーブルに黒い瞳孔だ。大きな目が可愛い。
「一回、二回、三回」
マーコと同様に鼻チューをしていくと、やっぱりニーコの身体が光りだした。今回は、予想ができていたので、どんなに光ってても気にせずに十回までやりきると。
「やっと、変われた~!」
ご機嫌な男の子が目の前にいた。
顔かたちはマーコとそっくりで、違いがあるのはグレーに黒のメッシュの髪色のショートボブに、目は黄色と緑のマーブル、そしてエメラルドグリーンの袴を穿いていた。
「さぁて、雅、もう一度鏡を見てごらん!」
マーコが元気に言うので、再び姿見をチェックすると。
「お、おお~!?」
肌も黒髪も艶々、目の下のクマも消えている。シミもない。両手で自分の頬を触っていると、手の甲も皺がなくなっているのに気づく。
ニーコも十回やったから、年齢は19歳ということになる。私が19歳の時といえば、高校を卒業して小さな工場に就職した頃。まだ、体力も気力も万全だった時期だ。
「うわ……」
さすがに私も言葉が出ない。
しばらく呆然と鏡を見ていると、後ろでゴソゴソ言う音が聞こえてきた。何事かと見ていると、猫部屋にしていた部屋の押入れの戸を開けて、二人とも入りこんでいた。
「あった、あった」
「凄い奥のほうにしまい込んでたみたいね」
押入れから出てきた二人の手には、古びた木箱があった。




