第11話 神様からのメッセージ(2)
異世界に飛ばされた初日。
家の周りと食料を確認した後、気持ちを整理するつもりで(いや、現実逃避が正しいか)、洗濯や家の掃除をして一日が終わってしまった。
結局、神様からの続きのメッセージは来なくて、不安に思いながら一夜を明かした。それでも、自分の家で使い慣れた布団で休めているだけ、マシかもしれない。
今朝もマーコとニーコに乗られて目が覚めた。
「なーご」
「にゃにゃにゃ」
私の顔の目の前で鳴いているのはニーコだ。マーコは私のお腹を跨いで、頭のほうに歩いてきて声をかけてくる。
「わかった、わかったって」
のそりと身体を起こす。これはいつもの日常と変わらない。
台所に行って、二匹のエサを皿に入れる。二匹のエサはネットでまとめ買いしてあるから、しばらくもつはず。それでも、ずっとというわけではない。
カリカリ、カリカリとエサを食べる音を聞きながら、私は自分の朝食を準備する。
今日はご飯に海苔の佃煮、タマネギの味噌汁。冷蔵庫の少ない中身を考えたら、少しずつ食べるしかない。
「はぁ。参ったなぁ」
食べ終わって食器を洗っていると、スマホが鳴った。
慌てて濡れた手を拭き、スマホを手に取る。送信者は「ノナ」だ。
『ネコマタについてですが、貴女の猫たちはなりたてのため、まだまだ力がありません』
――え、挨拶もなしに、いきなり続ける?!
そんな私の驚きは完全に無視され、言葉が続く。
『もう少し力をつけてもらうために、貴女の齢を二匹に分け与えて下さい』
「は? 私の齢? 年齢ってこと?」
年齢を分け与えるってことは、私が若返るということ?
メッセージの意味がわからなくて、首を傾げる。
『分け与え方は、渡す齢分、猫たちと鼻チューをして下さい』
「え、それだけ?」
思わぬ方法に声が漏れる。
『そうすれば、ネコマタとしての齢が重ねられ、彼らの力となるでしょう。むしろ、そうしなければ、彼らはこの世界でも弱い魔物と変わりません』
『そして、彼らに授ける「ちーと」を使いこなすためにも、必要な手段なのです』
鼻チューなんて、毎日のようにしている。昨日も鼻チューしてるけど、あれはカウントされてないんだろうか。カウントされてたら、いくつか若返っているはずだけど、私の年齢(39歳)まできたら、1歳、2歳くらいの増減では見た目の大差などないか。
――それに「ちーと」って、あのチートのこと?
再びファンタジー脳が活発化する私。自分の年齢が変わるかもしれないということよりも、チートの響きにワクワクしてくる。
『ネコマタたちにはすでに『ちーと』が与えていられています。それらを使えるようになるために、貴女の齢が必要なのです』
いつのまにか足元でお座りして見上げている二匹。彼らのキラキラと輝く目に意思を感じる。
「ちょっと待ってね」
二匹に声をかけて、もう一度画面に目を向ける。
『それと、もう一つ、アマテラス様より、伝言です』
『ネコマタの二匹の他に、もう一人、貴女を守る者をつけます。貴女の家のオシイレにしまわれている四角い木箱を探してください。その者も貴女を守ってくれるでしょう』
――木箱?
そんな箱あったっけ、と、自分の部屋のほうへと目を向ける。なんだか不安しか感じない。再び画面を見ると。
『では、楽しい異世界生活を!』
そこでノナからのメッセージは止まった。
「はぁ? もう終わり? もっと必要な説明があるでしょ? 電気とか水道とか、食料とか! あと、肝心な異世界情報! もうっ! 何が、楽しい異世界生活を、よっ!」
思わず画面に叫んだのは言うまでもない。




