閑話:ノナ、『ちーと』の準備する
12人の神々のいた部屋よりも二回りほど狭い部屋に、美少女神ノナと天照大御神、地球のある世界の神のヘプタと今回の原因でもある馬面のペンタがいた。
「と、とりあえず、こんな感じでよかった?」
ノナは手元のA4サイズのメモを見ながらため息をつく。
そのメモは、日本の神々が調べてきた『ちーと』な力一覧だ。さすがに全ての力を猫又になりたての二匹に付与することは難しいので、いくつかに絞った。
「インフェルノなんてデカい魔法なんぞ、いらんだろ」
「コキュートスとか、馬鹿じゃないか?」
「転移だと!? そんなもん、うちでも使える者などおらんぞ!」
「マッピングって何だ?」
「おい、お前の世界にあるから言ってきてるんじゃないのか」
「そんなもんはないっ!」
「まぁまぁまぁ。でも、レベル? とかいうのを上げると使えるようになればいいんじゃない?」
「はぁ?」
リストを出してきている日本の神々のほうは、完全にゲーム脳である。一方でペンタ、ヘプタ、ノナが真面目に相談している。
その後も喧々諤々と言い合いながら、なんとかまとめた『ちーと』な能力。そのメモを見ながら、天照大御神は考え込む。
『そうじゃのぉ。ここがギリギリなところかの……しかし、二匹だけでは、心もとないか』
「そうは言っても」
「あの家にいるのは娘以外では、ネコマタだけであろう?」
『そうなのだが……そうじゃ、アレを使えるようにできれば……』
ニンマリと笑う天照大御神。美しい顔に浮かぶ迫力のある笑みに、ノナにヘプタ、ペンタも背中がゾゾゾッとする。
『ノナ殿、これも伝えるときに加えておくれ』
「は、はひっ」
『そろそろ、あちらに戻らねばならぬ』
「は、お、お気をつけて」
『……〇✕■△、我らが見ていることを、努々忘れるでないぞ』
「は、はいっ」
天照大御神がスーッと消えていくのを確認してから、三人の神たちは盛大なため息をついた。
「なんなんだ、あの女神はっ!」
「ペンタ、抑えろ。戻って来るぞっ」
「まさか」
ヘプタの言葉にギョッとした顔で背筋を伸ばし、キョロキョロするペンタ。
「冗談ではない。あの方は我が世界でも屈指の神力をお持ちなのだ。本来であれば、あの方が代表をされてもおかしくはないのに……」
「なっ」
「自分の土地だけでも十分大変だからって、私が押し付けられたのだ……」
唇を尖らせる初老の男の姿は、誰得なのだ。
「そ、それよりも! です」
ノナが二人の会話に割り込む。
「こんなにたくさんの『ちーと』、私だけでは無理なの、おわかりですよね?」
「う、うむ」
「わ、わかっている」
上目遣いでお願いするノナに弱い、ヘプタとペンタであった。
天照大御神から託されたことの準備を終えて、ホッとするノナ。
――あ、そうだ。神託も下ろしておこっと。
たとえ、ネコマタたちがいても、現地で生活していくのであれば、現地の者の助けは必要だろう、とノナは思ったのだ。
彼女の世界には、ヘプタほどではないけれど四人の神がいるが、主神はノナ。彼女の神託が下りれば、四人も気にかけるだろう。
彼女の親切心で、彼女の世界の各国にある神殿に神託を下ろした。
『我が気にかける者がフォロンの森の奥に落ちてしまった。誰ぞ保護をしておくれ』
――これで誰かしらが助けに行くに違いない。
満足げに笑みを浮かべたノナだけれど、その神託が、後々、雅たちをトラブルに巻き込むことになるなど、予想もしなかった。




