第86話 帝都散策 ー冒険者ギルドー
大金を手にした私たちは、来た時と同じ神殿の裏門から出て、冒険者ギルドに向かっている。
ブレスレットの代金をどう使うかは後で考えようと、素直に受け取ることにしたのだ。
渡されたお金の入っている革袋は思ったより小さくて、本当にあんな大金が入ってるのか、と思ったのだけれど、革袋の中のお金を見たマーコが顔をしかめて、「このお金じゃ買い物できないじゃん」と文句を言った。
なんで、と思ったら、なんと、一枚で100万ノルの価値のあるコインが7枚入っていたのだ。
というか、そんなお金をほいっと出せる神殿が、ちょっと怖い。
しかし、これを崩すとなると、そっちのほうが準備できない、とか言われたので、どうせすぐに使うわけでもないからと、そのままマーコが預かってくれている。
「あ゛ー、なんか疲れた」
思わず、変な声で言ってしまう。
「お疲れ、お疲れ」
「さ~さ~、さっさと冒険者ギルド行こう~」
マーコとニーコが私の背中をポンポンと叩く。
「愛し子様、冒険者ギルドには何用で行かれるのです?」
前を歩くルーカスさんが振り返りながら問いかける。
「えーと、一応、何か依頼を受けようかと思って」
「え」
「愛し子様がですか?」
後ろにいたランドルフさんが驚いた声をあげる。
「え、ダメですか」
「いえ、その、ダメでは、ない、と思いますが」
そろそろ依頼を受けないと、ギルドカードの身分証としての有効期間が切れてしまう。何せ、マーコとニーコは最低ランクのGだし、私も下から二番目のFランクのまま。
今後、この国を出る時に身分証が使えない、ということになったら凄く困る。
再登録するにもお金がかかる。
大金があるんだからいいじゃん、と言われそうだけど、それはまた違う話だ、と思うのだ。
ということをルーカスさんたちに話したら。
「身分証ですか? でしたら、神殿でもご用意いたします」
「ええ。ちゃんと『愛し子様』だとわかるようにいたしますから」
「え、それ、面倒なことに巻き込まれるの確実なヤツですよね?」
思わず顔をしかめて言うと、二人ともが、うぐっ、と声を漏らす。
帝都に入る時に顔バレしてしまったことや、聖騎士たちを連れ歩いたことで、自分が『愛し子』とばれることが、色々面倒を呼びそうだということを痛感したのだ。
さすがに私も学ぶ。
裏道らしき通りを抜け、大通りに出る。
「この辺りに各種ギルドがかたまっています」
ルーカスさんが、あれは商業ギルド、あっちは魔道具ギルドと指さしながら説明する。それぞれに大きな看板が下がっているので、なんの業種なのかすぐにわかるようになっている。
「それで、あれが冒険者ギルドですね」
「おお~」
指さされた建物は、まさに冒険者っぽい人たちが出入りしているのが見える。看板にもデカデカと『冒険者ギルド』と書かれている。
ほんとに文字が読めるようになってよかったとつくづく思う。
「ありがとうございます。じゃあ、ここからは私たちだけで行ってきます」
「え、ですが」
「聖騎士が一緒だと目立つでしょ」
「僕たちがいるから大丈夫だよ」
「しかし」
「いってきまーす!」
私たちは二人を残して、猛ダッシュで冒険者ギルドへと向かった。




