表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅椿茶寮の小さな毒騒ぎ  作者: お試し丸
PR
4/5

第4話 犯人との対面と小さな策略

事件から一週間後。

京都の裏路地にある「紅椿茶寮」は、いつものように静かで落ち着いた空気に包まれていた。雨が上がり、柔らかな日差しが障子を通して差し込む。


その日、志乃は少し緊張した面持ちで、茶寮の扉を見つめていた。

「今日、あの人が来る……」

心の中で小さくつぶやく。


間もなく、見覚えのある姿が暖簾の向こうに現れた。

――安斎の同業の作家、そして今回の事件の仕掛け人である人物だ。


「志乃さん……お話があります」

犯人は少し緊張した様子で、茶寮の中へ入ってきた。


志乃はゆっくりと頷き、茶を点てながら言った。

「どうぞ、座って。今日は茶と一緒に、少し落ち着いて話しましょう」


二人が向かい合うカウンターには、静かにお湯が湯気を立てている。志乃は茶碗を差し出しながら、穏やかに話を切り出す。


「安斎さんを驚かせた“唐辛子の仕掛け”、あなたがやったのですね」


犯人は小さく息をつき、頭を垂れる。

「嫉妬で……軽率でした。本当に、死なせるつもりはなかったのです……」


志乃は静かに茶を差し出し、そのまま説明を続けた。

「致命的ではなくても、危険を装うことで人の心を揺さぶるのは、危うい行為です。それに、茶寮の評判にも影響します」


犯人は俯いたまま、静かに頷く。


志乃は茶碗を手に取り、縁を軽く撫でながら言った。

「でも、今回は小さな“毒騒ぎ”で済みました。私が気づいたことで、誰も本当に傷つかなかった。これも、知識と観察の力です」


犯人は目を上げ、少し恥ずかしそうに笑った。

「志乃さん……本当に、すごいです」


志乃はわずかに笑みを返す。

「知識だけではなく、観察力と少しの冷静さがあれば、騒ぎも解決できます。覚えておくといいわね」


二人の間に静かな時間が流れる。茶碗の中で湯気が立ち、香ばしい茶の香りが漂う。

志乃の視線は、犯人の心の動きを見逃さない。


「さあ、これで今回の事件は終わり。茶を飲んで、少し落ち着きましょう」

志乃がそう告げると、犯人は小さく息をつき、茶を受け取った。


その午後、紅椿茶寮には再び静かな時間が流れた。

だが、客たちには気づかれない――

志乃の瞳には、少しの警戒心と、そして次に何か起きてもすぐに見抜ける自信が宿っていた。


紅椿茶寮の午後は、静かに、しかしほんの少しだけ、知識と策略の香りを漂わせていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ