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詠唱がクソほど長いエルフの返り咲き  作者: 真月 一蓮
四章

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第41話 しめしめ

 クレーターの前に立っている。一度見たはずのロフンは改めて思うところがあるようだ。


「キングスコルがぶっ飛ばされたんじゃなければ、魔法の跡だ」


「あんなでかいのが飛ばされるわけないだろ。それこそ化物じゃねぇか」


「そうだな」


「魔法ったって。これ」


 クレーターは中心の深いところで人がすっぽり入るくらいの高さだ。ロフンなら二人分になるかもしれない。


「地形変わってんぞ?」


「A級冒険者の魔法使いが四人くらい連携して一つの魔法をやればって感じだ」


「他の魔物の魔法とか」


「それこそ、キングスコルがぶっ飛ばされたと信じたい」


「どっちも地獄か」


「ああ、そうだ。マグルの意見も聞きたいとかエッダが言ってたな。どうだ?」


 その前に聞いてくれよ。もうそうとしか見えない。


「自然に出来たとか……。元々は池で水が抜けたとかどうだ」


「いい線だな、シブが最初に否定した意見だ」


「チッ、なんだよ」


「どこかから水源が伸びた痕跡はないし、下に水脈もないそうだ」


「憂鬱な二択だな」


 二人の元に戻る。テントが二つ用意されていた。いつもは厚い布を敷いて寝るマグルからしたら贅沢な光景だ。


「さすがに手際いいな」


 キングスコルの死体はほとんど手足を残すばかりだ。荷車が潰れそうなほど肉が乗せられている。


「ようやく戻ってきたか。半分にしづらいところはここで喰っちまおうって話だ。最高だろ?」


「じゃあ焚火を大きくしないとな」


 ラザニ村の人もそのつもりだったのか。どこからか網やら鍋やらが引っ張り出された。酒はない。村で作ったソースは肉に塗って焼くと馬鹿みたいに旨かった。なんでも果実を絞って作るそうだ。


「もう腹いっぱいだ」


「喰ったなあ。久し振りにこんだけ肉を喰ったぞ」


 みんなで焚火を囲み、焼けては食べ、焼けては食べを繰り返した。


「よく喰うやつが隣にいると普段より喰える」


 エッダがシブを見て、頷く。


「分かるぜぇそれ。二人の皿を見ろ。骨の数なんて五本もいってない」


「喰いたい奴が喰え。生憎わたしには適度っていう言葉があるんだ。うぷ」


「そう言わず喰えよ。魔力の回復も早まるんだろ?」


 エッダが骨付き肉をどんと皿に乗せる。隣のシブもついでとばかりに乗せた。


「もう、無理……」


 シブが皿を持ったまま横向きに倒れる。


「おいおい。勿体ねぇなぁ」


 村人たちは雑魚寝したり、夜通し起きるつもりのもいる。離れたところのテントを見た。小ぶりで、詰め込めば二人がなんとか入れる広さだ。


「テントが二つあるのは、普段から一つずつ使ってるのか」


「そうだ。狭くて悪いがマグルはあたしのとこで寝ろ」


「いいよ俺は。外で雑魚寝するから」


「遠慮するな。明日もいっぱい動いて貰う」


「まだこき使うつもりかよ」


「健康管理もリーダーの仕事だしな」


「じゃあ遠慮なく」


 これで虫に起こされる心配もなくなる。

 ニヤリとしたエッダの目がなまめかしく光ったのに、マグルは気付かない。


「そんなことより、さっきからキングスコルの頭が気になるな。あいつ魔法具を呑み込んでるかも」


「腹じゃなくて頭にかよ」


「かもだよ。魔力がそこから見える。残滓かと思ったけど違うみたいだ。ちょっと見てみろ」


「なんで俺が」


 頭の肉は人気が無いのか、それとも置いてあるだけなのか。ナイフでロフンが指示したところを開いた。


「お、当たりじゃん」


 ナイフの先に骨とは違う感触があった。ほじくると楽しい気分になってくる。見えないお宝っていいよな。

 五分ばかり格闘していると中から黒い宝石がぽろりと出てきた。横から見ると長方形で、バケットカットされている。

 鈍い輝きを放つそれをロフンに投げた。


「見たことない魔石だ」


 血と肉片がついたそれを水魔法で洗い、布で拭く。


「スコルが巨大化した理由か?」


 エッダはロフンに聞いたが、シブが答えた。


「そうだと思う……」


「なんでこれがあいつの腹の、頭の中か。あるのかは分からないけどな」


「――あそこに関係あると思うか?」


 先ほど見たクレーターのことだ。マグルが戻ってくる。


「もしそうなら。事態は最悪だ」


「なんでだよ。原因が分かったじゃないか」


「マグル。じゃあ、この持ち主が居たとする」


「そいつがあそこのクレーターを作った」


「それでもいい。じゃあそいつはどうなったんだ?」


「あ」


 魔石は持っていたのか、キングスコルみたいに取り込んでいたのか。そんなのどっちでもいい。


「化物を倒した、そのまた化物がいるってことだ」


「……」


「こんだけ騒いでも来ないなら今頃どっか行ってるだろっ。居たとしてもあたしらじゃどうしようもない」


 クレーターも古かった。


「寝る……」


 シブが立ち上がり、ロフンも続く。いつの間にか村人たちもお開きの空気だ。




 大きな声で目覚める。


「起きてるかあ。さっさと村長に報告するぞ」


 朝だ。腰が痛いし、眠い。

 桶の水で顔を洗う。三人は朝食を食べている最中だ。村人はもう準備を完了していて、肉の鮮度が落ちる前に一刻でも早く帰りたい雰囲気だった。


「よし。ラザニ村へ戻るぞ。調査依頼はこれで終わりだな」


 ご機嫌でエッダが言う。

 昨夜は同じテントだったせいで寝込みを襲われた。女のくせに手口がヤリチン冒険者じゃねぇかあいつ。

 くそ。なにが健康管理はリーダーの仕事だ、エッダのやつ。お陰で寝不足だぞ。


 村長の家に戻る。エッダが報告している間、俺たちは村人が作ってくれた昼飯を味わっていた。肉のお陰で、奥様たちは大喜びだった。無事に依頼達成の証を貰い、トマッ都へ戻る。


 冒険者ギルドで依頼の報告をする。エッダだけがギルドマスターの部屋へ通された。なにか話があるのだろう。報酬の分配は終わっているのでマグルとロフンは宿に帰った。


 久し振りのベッドで横になる。

 ギルドマスターの部屋へ、と言われた時のエッダに驚いた様子がなかった。依頼達成でいちいちそんなことはしない。

 なにか大きな事に巻き込まれるような、悪い予感がする。杞憂であればいいけど

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