あ、1章、8死んだりしないでね?
俺は『勇者パーティー』を追放されて全てを失う。
しかし……
俺が全てを失ったのは、不幸になる為じゃない。まだ見ぬ新しい何かに出会い掴むために違いない!
その為の時間を、自由を、俺は手に入れたのだ。そうに違いない。
きっと、その為だけに今まで持ってた全てを俺は手放しただけなのだ。
「今、全てを失って俺は自由だ。解き放たれた! ヒャッホウ!」
「ん? ……ねぇ人の話聞いてる? 何かしら、おかしな事考えてない?」
はっちゃけた俺を見て勇者が訝しむ。
勇者のコチラを、うかがう声。
だが俺は……聞いちゃいなかった。
「自由に気ままにやってやる!
地球人に負けは許されんぞ!
頑張れ俺!
日本人は、転んでもただでは起きないぞ!
ケーケッケ」
俺がはっちゃけると……
「何を今更、君は私のパーティーにいた時から、やりたい放題、自由にしてたじゃないか」
俺の力強い宣言に……
勇者が冷静に分けのわからない事を言う。
だが……知らない。
勇者の言葉……
なんの事だかわからない。
それよりも……
「今まで以上に自由気ままにやってやる! クケ、クケーッケッケッケッ。俺には弱気になっていい時間なんて無い。無駄に
して良い時間など1分1秒もない。勿体無い」
「………………あ〜、壊れちゃったかな〜」
勇者が自分の顔を手でおさえつつの言葉。
「オマエが俺をクビにして俺を壊したんだ」
「……キミは元々おかしかったよ。壊れてたよ。だからパーティーから抜けて欲しかったわけで……」
失敬な。
なんて失礼な事を言う勇者だ。
淡々と訳のわからない事を言う勇者。
かつては仲の良かった勇者の言葉。
「おい、恋も野望も失った俺に、もっと優しくしろよ」
『世を儚んで死んだりしないでね。世界を呪ったりしないでね』
「………お、おう!」
急に………
ゾッとする様な冷たい勇者の声。
冷静な勇者の声に、一瞬ビビッた。
【レベル250オーバー勇者】の本気の声にビビッた。
ついつい忘れてしまうが……コイツは魔王を超える怪物だった。
それにしても……
死ぬ?
俺が?
なんでさ?
自殺って事か?
流石に、まだまだそこまでは追い詰められてはいない。
とか考えてると、一転して勇者は明るい声に戻って……
「あ、そうだ。僕はパーティーの一員『青の魔法使い』と付き合う事になったんだ」
「なに? あ、あの女とつきあう?」
俺は動揺した。
「そだよ」
「嘘だ!」
「本当さ」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ〜」
よりによって【俺の勇者】が、性格の悪いあんな女とつきあうはずがない。
そんな事はおこってはいけない。
自然の摂理に反するはずなのに。
だが勇者は平然と……
「僕達は幸せさ。でも……恋人にふられるキミは死んだりしないでね」
「オイ、待て。それはどういう意味だ?」
俺に死んだりしないでねだと?
『青の魔法使い』とつきあうだと?
勇者パーティーに最後に加わった女。
俺と仲の悪い俺の天敵。
あの女……いつの間に勇者と出来てた!
「キミは今にも死んじゃいそうなくらい不幸に見えるけども、僕は幸せさ。だから死んだりしないでね」
「……おい。待てよ勇者、オマエ……」
『キミの不幸は自業自得ダシネ』
「!!!」
再びゾッとする勇者の声。
【自業自得だしね】
なのか、それとも……
【自業自得だ。死ね!】
と勇者に言われたのか、判断できん。
勇者がマジギレしてるのだけは分かった。
思ったよりも勇者は怒ってた。
こんなのとコレから戦わなけりゃならない【魔王】に、俺は心底同情する。
「私は新しい恋人も出来たし幸せさ。キミは……まだまだ死んだりしないでね」
「……おい」
「私は恋人とコレから魔王を倒して英雄になるけど……。これからキミは一人で平凡な人生とか歩む事になるけど【死んじゃだめだよ】」
「オイ! もしも俺が自殺や失踪でもしたら、その原因だけはハッキリしてる。オマエだ! オマエの精神攻撃が俺の死因だ!」
勇者は俺にウインクして
「君のコレからの転落人生にサチあれ」
「転落人生! ってなんなんだよ? 勝手に人の人生を転落させるなよ」
「それも、きっと断崖絶壁を転落する人生さ。馬鹿だな。馬鹿だね。本当に君は馬鹿だなぁ」
勇者の奴………
精神的に弱った俺に死体蹴りかましてきやがった。




