表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティーから追放された異常な【賢者】のイカれた行動と【勇者】の善行  作者: 金銅才狸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/21

あ、1章、7そんな事は無いはずだ。





 俺は『賢者』、成長力が超鈍化する前の昔の俺は凄かった。

 すっげぇ期待されてた。


 低レベルでも魔王軍幹部を倒してみせた。

 そんな期待のホープだったから……

 だから、ちょっとくらい無茶苦茶しても許されると、愛されると勘違いしてた。


 誰も彼も勇者も初めは俺に好意的だった。

 良くやったと頭をポンポンされたりもした

 良い思い出が多い。

 本音を言えば離れたく無い。

 離れたくないよ。

 

 そういえば……

 その昔、皇女と初めて喧嘩したとき……


「俺は強いから……何をやっても……皆から好かれる」


 己の才能に思い上がってた俺が、そうと言うと皇女は……


「そうだね。君が弱かったら誰からも嫌われてたね。強くてよかったね」

「オイ待て待て待て、ちょっと待てくれよ」

「何よ!」

「今、なんていった?」

「私は事実を言いました」

「俺は、そんな駄目男じゃないだろう?」


 そんな駄目駄目な自覚はなかった。

 賢者だし凄いし皆に尊敬されてるはず。


「皆、貴方の才能には感心してる」

「だろ!」

「けれども、貴方の人格は嫌われてるよ」

「そ、そんな事は無いだろ?」

「そんな事あるよ。最低人間だよ君」


 キッパリと生まれて初めて出来た彼女に『最低人間』と言われた。

 かなりのショックだった。


「う、嘘だろ。俺の事を皆、尊敬しているよな? 俺はレアな『賢者』だし」

「『賢者』って事だけは尊敬されてるよ」

「だろ! そうだろう」


 俺はちょっとホッとした。

 が………


「『賢者』って事以外は、軽蔑されてる自覚は無いの? ほんとに無いの?」

「軽蔑!!!」

「確かに賢者としては尊敬されてるけど」

「そうだろ」

「でも……」


 言いよどむ皇女。


「何だよ?」

「他の部分は本当にダメダメだから、皆から嫌われてるよ。軽蔑されてるよ。改善して」

「!?」


 待て待て、ちょっと待って………

 俺はそんなにもダメな奴なのか???

 改善が必要なくらいダメ男なのか?


「貴方の本当の味方は、たぶん私だけ」

「マジで?」

「大マジ。貴方の人格は皆から嫌われてる。貴方の周りは敵だらけです」


 昔、恋人にそんなことを言われた。

 自分の人格は駄目な奴だと……


 はじめに自覚したのは、たしか最愛の恋人皇女から指摘されたときだったか……

 あの時はガチで人格を否定された。


 でも……俺はモテた。

 だから改善しなかった。


 今思うと、彼女以外の人間は俺のステーテスに群がってただけだったとわかる。

 俺を都合よく利用したい人間が、俺に群がってただけだった。

 でも、昔は気がつけなかった。







 『召喚』されて初恋の人と結ばれ

 【魔王】と戦い世界を救う

 そんな何処にでも転がっている平均的異世界人ライフを、当たり前だと思っていた。


 昔を懐かしむ。

 あの時は少なくとも一人、味方がいた。


 例え全世界を敵に回しても、その一人が味方でいてくれれば、何も怖くは無かった。


 それでよかった。

 だから……反省しなかった。

 でも……今は……味方がいない。


 きらきらしていた俺の人生が……


 勇者パーティーから追放されたら……

 価値の暴落した俺は皇女にも無意味だ。

 皇女の未来と野望に俺は不要になるから。

 浮気も、許してはくれない。

 俺達の未来と野望は、もう真っ黒だ!


 あの時、素直に皇女の、恋人の言う事を聞いておけば良かった。

 

 今更後悔しても遅いが……

 くそう……

 幸せな時に幸せを自覚出来てなかった。

 謙虚に生きてさえいれば……

 成長力が鈍化した今でも……

 期待に答えられなかった今でも……

 きっと皇女は俺の隣にいてくれた……

 そもそも勇者パーティーを追放されなくて済んだ、かも知れないのに……


 もしも時間の針を戻して、やり直せるのならば、俺の大切な片方の金玉を生贄にでも捧げてしまっても良い。


 それ程後悔と己の馬鹿さ加減が今更辛い。

 俺の心は真っ黒だ。

 闇に染まって捻じくれ続ける。


 もう、どうでもいいか?

 どうでもいいや!

 国とか人類とか、知るか!

 恋人とか友人とか、知るか!


 皇女を失わなければ、皇女との良い想い出が俺をささえただろう。

 勇者が俺を追放しなければ……

 でも……現実はそうじゃ無かった。

 何かイロイロ失った。

 だから……何もかも知ったことか!


 好きな事をやりたい様にやってやる。

 それで駄目なら死ねば良い!


 どうせ死んでも元々だ。

 ここへ飛ばされてからというもの……

 ここしばらくは賢者の才能があると

 おだてられ

 のせられて

 命がけで魔王軍と戦えと、勇者達共々最前線送り。


 魔王と戦えと大声で叫ぶ奴ほど、実際は前線には出ないのだ。

 おれは、そんな奴におだてられ騙され命令されて……


 命がけで魔王軍に挑んでた命だ!

 楽しかったけれども!

 輝いていたけれども!


 才能が見せかけだったとバレて、メッキがはがれてからは、勇者パーティーにいるのに『2流賢者』とか呼ばれて馬鹿にされた命だ。


 それでも命を燃やして輝いてた。

 それでも魔王を討伐隊した勇者パーティーの一員として、皇女と世界を取ってやろう。

 そんなささやかで平凡な夢を見てた。


 ごく平凡な……世界制覇と言う夢だ。

 ささやかで一般的地球人が持つに決まってる野望ライフをおくろうと夢見てた。


 だから一生懸命に人類の中でライバルになりうる『他の勇者パーティー』の足を引っ張って全滅させたりもした。


 他にもイロイロ悪事もやった。

 俺が魔王討伐の名誉を得る為に。

 世界制覇の為には魔王討伐の名誉はマストだったし……


 その名誉で皇女と共にさらなる野望を

 全ては野望の為に……

 その為ならばライバルは何人も犠牲になろうと、人類がどうなろうと知るか!

 って思ってたね!


 世界制覇。

 それが無理なら、せめて皇女と共に……

 皇女の国を皇女の親兄弟から乗っ取ろう。


 そして侵略戦争で更に領土を広げよう。

 何処にも負けぬ強国を作ろうと、ごくごくありきたりな平均的召喚人の、つつましい夢を皇女と語り合ってた。

 俺の命はそんな命だ。


 が!


 それが魔王討伐直前に勇者パーティーを追い出されるだと?

 それじゃあ、計画は脆くも全部駄目になってしまう……

 皇女にも嫌われた。

 

「おれ……野望や大切なものを失ったのか」

「それって自業自得だよね」


 俺の独り言への勇者のツッコミも耳に入らない。

 それくらい俺は不幸だ。

 だが……



 勇者パーティーを追放されたら不幸になるしかないのか?

 恋人にふられたら、何が何でも落ち込まなきゃいけないのか?

 人間は人生の目的と野望を失ったら、もうどこにも行けないのか?


 誰かと付き合っていたら、他の魅力的な異性を口説いてはいけなかったのか?


 地球人が良くわからない世界に来て、命がけで、はっちゃけてはいけなかったのか?


 恋愛、名誉、世界を守る為に戦う、勝利、野望、金、力、権力、幸福、充実感、勇者パーティーに所属していたから沢山のモノを手に入れられたが、それだけが幸せだろうか?


 また、勇者パーティーから抜けたら、それらを再び手にする事は出来ないのだろうか? ソレを願う事は罪なのだろうか?


【いや! そんな事は無いはずだ!】



 魔王討伐に向かった勇者パーティー達の中で、多分俺だけが途中下車する。

 俺の勇者パーティーは魔王を倒すだろう。


 また……

 リタイヤして逝った『他の勇者パーティー』の者達は、一足先に一人残らず潔く散った。

 俺だけが魔王に挑まず生きていく。


 俺は他の勇者パーティーを全滅させた原因の一部なのに、その俺は魔王に挑めない?


 いずれ自分が魔王に挑んで世界を救う。

 そう確信出来ていたから数々の非道な行いも許容正当化出来た。


 なのに……俺が世界を救うと言う前提条件が崩れてしまった。

 ならば俺の今までの非道な行いは、何を持って正当化、浄化すればいい?


 もしも何をしても浄化出来ないとすれば

 俺の罪はどうすれば良い?

 俺は許されない大罪人では無いだろうか?



 【いや! そんな事はないはずだ!】


 俺がおこなった非道の上に、【俺の勇者】はスクスクと育ったのだ。

 俺が俺の勇者、真の勇者を育てたのだ。

 多くの犠牲、屍の上に。

【俺の勇者は完成した】


 そして俺は役目を終えたのだ。


 【俺の勇者】は世界を救うだろう。

 確信を持って言える。

 俺が、この俺が、その勇者達を全身全霊全力でスクスクと育てたのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ