あ、1章、3勇気が足りないんだ
『他の勇者パーティが全滅』したおかげで人類が魔王に対抗する手段が激減して、皇女の国も正直激ヤバイ。
皇女もその事に怒ってる。
俺、正直やりすぎた。
かなりマズイと反省もしてる。
ここまでやる気は無かったんだぁ〜!
最後に残った『俺達の勇者パーティー』
が、
ほとんど人類最後の希望になってしまった
この勇者パーティーが負けると……
俺のせいで人類が滅びるかもしれない。
その可能性が見えてきた。
『正直ビビってる』
俺は世界を救うどころか世界を滅ぼすキッカケを作ってしまった。
新たに次の勇者を育てる時間も……あるかどうか?
魔王は、その時間を与えてくれまい。
それだけに、ここで俺が『勇者パーティー』を抜けるというのは不味い。
人類の為?
違う違う。
他の勇者パーティーが存在しない為だ。
ここを抜けたら俺は……他の勇者パーティーへ移籍でき無いじゃん。
他に勇者が存在しないから。
俺抜きで、『俺の勇者』が魔王を討伐すれば、俺は魔王討伐の地位も名誉も得ることができない。
魔王討伐成功の栄誉を俺が入手出来ない?
ソレは俺達の野望と計画と俺達の恋の破綻を意味する。
なんの為に、他の勇者達が犠牲になったのだろうか?
それは……
世界の為そして俺の幸福の為だ。
彼等の犠牲の為にも、俺は魔王討伐の栄誉を手に入れねばならないのに……
なのに……全てを失いかけてる。
世界や人類も絶体絶命だが……
それよりも俺は、俺達の恋は絶望的だ。
人類の国は、まだ一国も滅びていないのに、まだ、どこの王家も魔王に滅ぼされていないのに……
今にも俺の恋や『俺が思い描く理想の我が家』は滅びそうだった。
まだ結婚しても無いのに、
幸せな一家を作っても無いのに、
幸せな我が家は、作る前に滅びそう。
だから俺は勇者パーティーにしがみつく。
石にかじりついてでも、という心境。
勇者パーティー追放と言う、絶望的な運命に必死に噛みついた。
「く……! 魔王に挑むのは、もう少し待ってくれよ」
俺は土下座しそうな勢いで、必死に勇者に頼み込んだ。
「ダメ!」
「そこを何とか」
「すぐにでも魔王討伐に出かけるよ」
ソレは不味い。
「せめて俺のレベルが50になる迄」
「あんまなめんな! 今まで我々どれだけ待ったと?」
「そこを何とか頼む勇者!」
「それにレベル50? それでもレベル10足りないよ」
「わかってる」
「他の勇者の二の舞だ。僕らはともかく。キミ死ぬよ!」
勇気が真っ直ぐに俺の事を見てくる。
勇者は普段、自分の事をワタシと言うが、プライベートになると僕と言い出す。
つまりは勇者が僕と言うときは、感情的になってる時だ。真剣なときだ。
「俺、レベル差の10くらい。愛と勇気と夢と希望と努力と執念で埋めるからさ」
「あんまなめんな! キミ、そんなにイロイロ持ってないでしょ?」
「いや、しかし……レベル差の10くらい」
「それなら勇気で、今すぐ今のレベル差25埋めてみてよ」
「オイ。無茶言うな」
勇気でレベル差25埋めろって……
オマエ……
「勇気が有ればレベル35プラス勇気レベル25で合計レベル60。魔王に挑めるね。さぁ行こう。今挑もう。今日行こう」
「勇気だけで、そんなに埋まるか〜!」
俺も大抵無茶を言ったが……
勇者も、かな〜り無茶苦茶言いやがる。
勇気で、そんなにレベル差が埋まるかよ。
「勇者ポイントマイナス1千万点。君には勇気が足りないね」
ずいぶん大きく減点されたなオイ。
『勇者ポイント』が何かは知らんけども。
「レベル35の俺がレベル差25を埋めるのは、勇気で済む問題か?」
「勇気があれば何でもできるのに」
「オイ無茶苦茶言うな」
何か無茶苦茶なようで、真理ついてる様な事を言うな。
そりゃ後先考えなければの話だろ。
勇気を持ってれば何処へでも突っ込めるさ
でも返り討ちにあったら洒落にならん。
仮に魔王に勇者パーティ4人で挑むとする
帰るときにはパーティー3人になってるな。
魔王と戦い始めた時、戦場には5人。
戦いが終わる時、
そこには【魔王】と【勇気を持った俺】の
死体が残るだろう。
それじゃあ魔王に勝っても意味無いんだよ
「君には勇気が足りない」
「だから無茶言うなよ」
「君には常に勇気が、更に勇気が、めちゃくちゃ勇気は君に必要さ」
流石は勇者。
勇気に満ち溢れてる。
しかし俺は勇者じゃ無い。
「そんなに俺に勇気があったら。俺は【賢者】じゃ無くて【勇者】になってると思う」
俺の否定的な意見に勇者はフーと1つため息をついて……
「ねぇ、私達勇者パーティー。君以外、他3人のレベル知ってるよね?」
「う……」
勇者の一人称がワタシに戻った。
冷静になった証拠だ。
冷静に俺を理詰めで追い込む気だ。
言い負かす気だ。
勇者は頭が良い。
俺も頭には自信があるが、勇者には負ける
ヤバイ、この先の言葉が何かはわかる。
その言葉を聞きたくない。
「私達のレベル。君以外は全員……」
「言うな! 聞きたくない」
「私達、既にレベル250を超えてるんだよ!」
それは勇者からの死刑宣告だった。
俺の聞きたくない事実ナンバーワン。
やめてくれ。




