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勇者パーティーから追放された異常な【賢者】のイカれた行動と【勇者】の善行  作者: 金銅才狸


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20/21

え、4章、姉妹1、【ニコ】


 老マフィアから女を紹介してもらう事と引き換えに彼を見逃した。

 老マフィアに連れられ、マフィアの拠点の一つに落ち着いている。

 広い屋敷。

 広い庭までついている。

 マフィアのくせに生意気だ。

 ま、紹介される女次第では、ここは廃墟になるのだけれども。

 

 そんな事を考えてると、マフィア達がコソコソ俺の噂を……


「ボス。何故あんな奴に、お嬢を紹介するのですか? 我々に命じてくだされば、あんな奴」


 マフィア部下が老マフィアボスへ噛み付いている。

 が……


「やめんか、奴は猛獣じゃ」

「しかし……」

「猛獣を飼い慣らすには女をあてがうに限る」

「しかし……何もお嬢を……」


(お嬢ってなんだろう?)


「あてがう女に血縁関係がある方が猛獣を飼い慣らすには都合が良い。それに孫娘妹の方も、そろそろなんとかしなくてはと思っとった所じゃ」

「しかし、そんな事をしなくても人間の一人や二人消すくらい」

「既に我が組織の被害は甚大じゃ」

「だからこそ仇を」

「やめんか! 既に仇をうてたとしても、損害を取り戻せん。戦力低下は甚大じゃ。ソレならいっそ我々に損害を与えた戦力を取り込んで、他組織へぶつけて損害を取り戻す。」

「……なるほど」


(全部聞こえてるんだけどなぁ)

 マフィア達が、そんな都合の良い皮算用をしていた。



 俺はひとまずマフィアと和解した。

 と言うか、一時的にマフィアを見逃した。

 結局、最終的には見逃すつもりはなかったのだけれども、俺も少し熱くなりすぎた。


 調子にのって、危うく都市ごと自滅しかけてしまった。

 失恋直後って怖い。

 何をしでかすか自分でもわからないのだから。


 頭を冷やす意味でも、少しだけマフィアに猶予を与えたつもりだった。

 マフィアに女を紹介されるまでは……


 


 一人の女が目に入る。

 その瞬間にイロイロ感覚がバグる。

 なんだ?

 今、自分は何を目にしている?

 ダレを目にしたのだろうか?

 一瞬で女に目を奪われた。

 一目惚れをしてしまった。


 一目惚れと言うのも生ぬるいのかもしれない。

 一目見ただけで堕ちた。

 この女は自分の生涯出会う女の中で最高の女だ。

 そんな確信めいた予感がある。


 かつて、この世界の片隅に呼出された直後、はじめて初恋の相手に一目惚れした時のように

 

 



「勇者パーティーから追放された時は、俺の人生終わったと思ったが、まさかこんな……出会いがあるとは」


 目の前にはちょっとひくほど魅力的な人がいた。

 長い黒髪、眠そうな黒目。

 その目がときおり油断のならない猫の様に輝く。

 フワフワした女。

 高級なフルーツパフェを目にした時の様な感覚が視覚から俺の感情を刺激する。



 あぁ世の中捨てたもんじゃない。

 世の中には、まだまだ俺の知らない魅力的な人がいる。

 当たり前だけど、俺は忘れていた。

 ここの所、ずっと魅力的な勇者の光に魅了されていたから。

 

 勇者以外にも凄い人はいるもんだ。

 俺は感動にカラダを震わせていた。


「感動してる所に悪いがアレは違う。アレもワシの孫じゃが、ヌシに紹介したいのはアレの妹のほうじゃ」


 胸を高鳴らせてる俺。

 そんな俺に老マフィアは俺の胸の高鳴りに水を挿す。


「アレで良い」


 俺は即断した。


「良く無い。アレは駄目じゃ」

「アレが良い。アレに決めた」

「アレは素行が良く無い。アレの妹を呼ぶからソッチにしておけ」

「アッチが良い」

「アッチはダメじゃ、尻軽じゃ」

「エッチが良い」

「ヌシ……今なんと言った?」


 老マフィアの孫は見ただけで、なんかフワフワしてて柔らかいエッチな雰囲気が……ある。

 そんな出会いがあった。


 俺は老マフィアの孫娘から目が離せない。

 そんな俺に……


「何があっても、ワシは知らんぞ。ホントに知らんぞ。責任をとらんぞ。アレはワシの孫じゃが悪魔じゃぞ。妹は天使じゃ。ソレでも良いのか?」

「アレが良い」


 老マフィアがしきりに警告してきたが、俺の耳にはとどかない。

 そのくらい俺の目ははじめてあった老マフィアの孫娘に魅了されていたから。




 俺は、何だかエッチな雰囲気を漂わすマフィアの孫娘【ニコ】と恋に落ちた。

 恋に堕ちた。

 すぐに仲良くなれたが……

 老マフィアの言うとおりに、中々大変な女だったり……


 そんな時

『クラスチェンジ準備期間が終わりました。貴方のあたらしいクラスは『マフィア』です。今日から貴方はマフィアです。マフィアとして、この世に一定の秩序と退廃と混乱をもたらしてください』


(なんてこった)

 マフィアの孫娘に興味をしめしたせいか、マフィアに関わりすぎたせいか、俺の新しいクラスは『マフィア』になった。

 なってしまった。

 『マフィア』は接近戦力の下位クラス

 最悪だが……


(まぁ、別に良いか。)

 俺は楽観的だった。


 どうせ俺のレベルアップは絶望的だし。

 勇者パーティーを抜けた為に大量の経験値を得る機会もほぼ無いから。

 レベルアップに必要経験値が10倍になるデバフ持ちの俺には、これ以上のレベルアップ自体が極端に難しい。


 ソレに既に今まで身につけたステータスとスキルは失われる事は無い。

 俺は魔王討伐を目指さないなら十分すぎる程強い。

 

 それでも……クラスが『マフィア』になってから、レベルが一つ上がった。

 レベルが36のマフィア。


(なんだかなぁ。凄く堕ちた気もする。元魔王と戦ってた勇者パーティーの賢者だったのにな)


 勇者パーティー時代に、次のレベルアップ寸前まで経験値を蓄積していたらしい。

 マフィアの要請で、他のマフィアを蹴散らしてたらレベルアップした。


 しかし次のレベルアップは絶望的。

 人間相手に戦っても殆ど経験値を得られない。人間の猛者は殆ど残っていないからさ。

 人間相手に戦っても自然と経験値をあまり

持ってない雑魚刈りになる。


 レベルアップにともない、新しいスキル『マフィアキック』を入手した。

 フィジカル依存のキック技。

 賢者時代はレベルアップすると、必ず召喚スキルを入手していたのに……

 

(……なんだかなぁ)

 元々が知力職賢者の俺には、フィジカル由来のキックスキルなんか、あんまり使い道がなさそうな気もする。





 ある日、老マフィアボスの孫娘【ニコ】が泣いていた。


「信じられない」

「お? どうしたどうした」

「聞いてよ。私の友達達。ほぼ全員に私の悪い噂が……おかげで知り合いの男達が皆逃げちゃッタ」


 そう言ってニコは泣いていた。


「落ち着け。落ち着け。一体全体どんな噂流された?」

「私が性病に感染してるって。しかもソレは治らない性病で伝染るんだって」

「オマエ性病なの?」

「違うよ。誰かに嘘の噂を流されたんだよ。わたしん家マフィアだから元々悪い噂流れてて……皆簡単に悪い噂を信じるの」

「あらら。そりゃご愁傷様。ま、そんな嘘を気にするな」


 俺が自然体で言うとニコは……


「貴方は私を信じてくれるの?」

「何を?」

「私が性病なんかじゃ無いって」

「ああ。信じるよ。オマエはそんな嘘つかないだろ?」

「……うぇぇぇん」


 ニコは泣き出した。

 そんなに性病だと噂が流れたのがショックだったのかな?

(女心はわからん)


 ニコの男友達は去ったか?

 いくら美人でも治らない性病持ちに需要は無いか。

 ま、それはそれとして今がチャンスだ。俺はニコを慰める。


「泣くなよ」

「だって……だって誰も私を信じてくれなくて、皆が私から離れて……グス」

「ソレは……つらかったね」

「貴方はどうして信じてくれるの?」

「俺は人の噂を信用しない。基本的に自分の目で見たものと自分の耳で聞いた事しか信じない。何よりニコが嘘をついてないと知ってるし」

「……!」


 ニコは目を見開いた。

 変わったモノを見た様な顔でこっちを見てる。

 

「俺の目と耳は……


 俺の言葉。

 何がそんなにニコの琴線に響いたのか、ニコは泣き出した。

 その姿を見て罪悪感を刺激される。


 う〜む。

 ちょっとやりすぎたかもしれん。

 俺はニコが嘘を付いてないと確かに知っている。


 だって……

 ニコの悪い噂を流したのは俺なんだな。


 何せニコは人の目をひく。

 俺が一目惚れする程とびきりの美人だ。

 無限に男友達がいる。

 その気になれば一日で数ダースの彼氏が出来るだろう。


 俺はそんな……

 ニコの男関係を根こそぎ消したかった。

 俺のライバルになりそうなニコの男関係リセットしたかった。


 性病疑惑くらいの噂をアッサリと信じるとか、甘い甘い。

 美人の周りには、必ず美人を狙う異性が複数群がってる。

 そこに男女の別は無い。


 美人を手に入れたければ、そういった有象無象を出し抜くか追い払う必要がある。

 ニコの男友達達はチョロすぎる。

 俺の流した偽情報にアッサリと引っかかりやがった。

 ニコもチョロい。

 アッサリと引っかかった。


 でも……たぶんコレでライバルとなる男共は、ある程度排除出来た。

 俺はニコの関心も買えた。

 つまり……このまま順調に行けば……

 コレでニコは俺のモノ。


 魔王軍や他の勇者達を出し抜いてた、もと賢者の知力を、今全力で恋愛に使っている。

 もと賢者なめんな。

 ニコに群がる男共は全員返り討ちだ。

 元賢者なめんな。


(いや、もう本当に俺は最悪だわ。今の姿を魔王と今も戦ってる勇者に見せられないわ)



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