う3マフィア5【ぶっ壊れ】
マフィアのボスが勇者に泣きついたせいで、余計複雑な感情持っちまった。
認めたくは無いが、俺は未練タラタラだ。
自分の失われた未来に……
勇者パーティーに……
無くした恋人に……
ずっと
勇者と並び立てると思っていた。
思っていたんだ。
思っていたんだよ。
自分の成長が勇者に及ばないと自覚した後も……
ずっとずっといつの日か……
いつか自分も……
ずっとずっとずっとずっとずっとずっと
あそこに届くと信じていた。
必死に手を伸ばした。
届かなかった。
昨日ソレを知った。
悔しい。
悔しいなぁ。
悔いが残るなぁ。
(クソが……!)
余計な事を、感情を思い出してしまった。
思えば夜の送別会から、『青の魔法使い』の魔法の箱を盗んだのは深夜の事。
その後、朝が来て、夕方になるまで一睡もせずに徹夜でマフィアと戦い続けていた。
八つ当たりしてた。
悪人を燃やしてた。
その結果が、この不快な気分だ。
夜から飲み会後泥棒。
朝からマフィアを倒し続け。
沈みつつある夕日の太陽。
徹夜の目に眩しい。
沈みつつある太陽が、俺の栄光が沈みつつある様に思えて心が沈む。
「う、う、あああぁ、畜生! 畜生が」
「な! なんじゃ急に暴れおって」
マフィアのボス、爺が騒ぐ。
勇者のせいで元気になってら。
俺がこんなにも気が沈んで不幸なのに。
せっかくへし折った精神が蘇ってる。
マフィアのくせにナマイキだ。
コイツも【勇者】も『青の魔法使い』も街の住人も、みんなみんな許せん。
俺が不幸なのだから……
みんなみんなもっと不幸になるべきだ!
だから……
「沈みつつある太陽さん。
そして………
かわりに登りつつあるお月様。
お願いだ………
落ちろ!
今、ここに堕ちろ!」
「お主、何を言うとるか!」
「この地に落ちろ。命令だ。
太陽も月も星星も………
4.5発一度に、この街に落ちてくれ。」
「な、急に何を言っとるか? 狂ったか?」
俺が騒ぐ。
俺の狂気が本気だと悟ったのか?
マフィアのボスが大慌て。
「俺の切り札。魔王にも通用する大禁術だ!
『月召喚』『太陽召喚』
擬似月と擬似太陽を地面に墜落させる召喚自爆術。
俺最大の対魔王用【切り札】だ。
街ごと吹き飛ばしてやる。
皆で不幸になろうぜ〜!」
俺の切り札の大禁術。
本気で打てば街一つ吹っ飛ばせる。
と、思う。
「やめろ! ふざけるなぁ〜」
「俺は真面目だぁ」
「ここには【魔王】などおらんぞ。ワシは死にたくない。不幸になりたくない」
俺の突然の言葉。
その迫力に本気を感じたのかビビる老人。
それを尻目に。
「俺……もうわかった。時間がたつほど実感する」
「何がじゃ?」
「元の場所に戻れる可能性も、俺の夢も希望も打ち砕かれた。だから、街ごと逝ってもいいかなぁ?」
「まて! 何言っとる? 自殺に儂も巻き込む気か?」
「うん」
「冗談じゃない。巻き込まれてたまるかぁ〜。ガンバレ、頑張って生きるんじゃ。生きてりゃ良いことあるんじゃぞ」
自滅に巻き込まれるのを恐れ、俺を励ます老人。
軽く無視する。
「……いっそ、この地に10発くらい太陽と月を落として死んでやる〜!」
「そんな事を出来る人間がいるか〜」
「俺には出来る!」
自信満々に答える俺。
「な、何ぃ?」
「対魔王用に用意してた俺の奥の手だ! 俺の手にはおえない制御不能の未完成禁術だ!
前に『月召喚』を使った時は死にかけた。 『太陽召喚』は始めて使うから、どうなるかさっぱりわからん」
「!!! 使うな! そんなもの」
「疑似太陽や疑似月や隕石を呼び落とす大禁術召喚。成功しても失敗しても、ろくな事には多分ならん。が、破滅的な未来だけは約束してやる」
「よし落ち着け。自殺なら一人でやれ。ワシを巻き込むな、な」
ハイになった俺と、慌てる老人。
「ククククク。もしも【俺の勇者】が【魔王】に敗れた時。一緒に逝く為に、とっておきに温存していた、【対魔王用最終自爆召喚】。大禁術召喚『太陽召喚』と『月召喚』『星星召喚』今こそ見せてやる〜」
「なんじゃその禍々しい名前は? やめんか若造」
成功しても失敗しても、多分結果は変わらない自爆召喚を発動しようとする俺。
そんな本気の俺を、なんとか止めようとする老人。
「今まで人類の為に魔王軍と戦ってきた、その若造が覚悟決めてんだ。今まで散々悪さしてきたマフィア。しかも老い先短いマフィアのジジイがジタバタするな」
「な〜〜〜!」
「十分生きて思い残す事はないだろ? コッチは未練タラタラ『恋愛未練賢者』なのに覚悟決めてんだ!」
「変な覚悟に初対面のワシを巻き込むな! やメロ〜! やめてくれ!」
泣き叫ぶ老人。
「なら、お前が俺と勇者を取り持つか? 俺を勇者パーティーに復帰させてくれるのか? 出来ないだろ? なら一緒に不幸になろうぜ!」
「無茶苦茶言うな〜。ヌシの言い分は理不尽すぎじゃ〜」
俺が余計な事を感情を思い出したのは、全部、このマフィアのせいだ。
マフィアのボスめ。
どうしてくれよう?
いっそ本当に、この地に数発『疑似太陽』を落として街ごと崩壊させても良い。
俺も死ぬかもしれんが……知るか!
人生初恋の本気の失恋は……キツイ!
死んでしまいたい!
ジワジワくる失恋のその実感
思い出すだけで……爆発したい。
【リア充爆発しろ!】どころじゃない
【初恋破れた爆発したい!】
そんな気分だった。
イロイロな感情が……発火した脳が、そんな狂った判断をする。
あぁ、でも駄目だ。ダメダメ。
勇者と約束した。
勇者との約束は破らない。
マフィアのボス、老人の命は………取れないな。
では?
何を取れば気が晴れる?
考えるが何も思いつかない。
もう……約束を破っても良いんじゃあないだろうか?
「ああああぁ。生きてる意味がね〜んだよ」
「落ち着け若造」
「ああああぁ。アイツにふられたら、ただ生きていても仕方ね〜んだよ〜」
失恋辛い。
「女にフラレたくらいでヤケになるな若造」
「うああああぁ。俺にはアイツしかいないんだよ〜」
「女は星の数程いる。他にも良い女はいるぞ若造」
失恋の痛手で発狂する俺と、それを慰めようとする老マフィア。
「若造若造うるせ〜よ。マフィアの親玉が俺をなぐさめるんじゃね〜よ。おかしいだろ〜が」
「なぐさめなきゃ、お前さん『大禁術』で街ごと潰す気だろう?」
「ああああぁ。オマエラのせいで失恋のフラッシュバックが来やがったからよ〜」
「ワシらが何をしたと?」
「ああああぁ。世界なんか滅びればいいんだよ〜〜〜」
「若造、お主、世界を救う元勇者パーティーじゃろう? それが何をぬかすか?」
なんで俺がマフィアの親玉に説教されなきゃならん? 励まされなきゃならない?
「ああああぁ。神様仏様魔王様、どうか世界なんか、ぶっ壊してください」
「お前さん、今まで魔王と戦ってきたんと、ちがうのか? ちがうのか?」
その結果がコレだ。
だから知らん。
「魔王崇拝者になれば恋人が戻るなら喜んで魔王崇拝してやる」
「無茶苦茶じゃぞヌシ」
「あぁ日が落ちて辺りが暗くなる。きっと魔王様が俺の願いを聞いて世界を滅ぼしてくれる前兆に違い無い」
「ただの日没じゃ。落ち着け若造」
「ああああぁ。若造若造うるせいよ。あぁ星星が見える。きっと俺の為に、この地に4.5発落ちて、この街を壊滅、スッキリさせてくれるに違いない。星がキレイですね!」
「駄目だコイツ。ぶっ壊れおった。暴走しておる。こう言うのは何処に修理を依頼すればなおしてくれるんじゃろ?」
「人を壊れた電化製品扱いするんじゃね〜」
「ナントカ……ナントカ、ワシだけは助からねば……今逃げても広範囲禁術で逃げ切れそうにないし……どうすれば、どうすれば良いんじゃ」




