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勇者パーティーから追放された異常な【賢者】のイカれた行動と【勇者】の善行  作者: 金銅才狸


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う3マフィア4【約束】



 俺はマフィアにやつあたりしてる。

 その自覚も信念もある。

 その心の一部をマフィアボスに語った。

 俺は魔王軍と戦う過程で獲得した狂気に満ちた目でマフィアをジッと見つめる。


 マフィアのボスは、何がショックだったのか口を開けてパクパクしてた。

 

「つまり………オマエは、ここでどうしようが、何を言おうが死ぬんだよ」

「き、きさまぁ。ワシを殺せば………」

「【魔王】をねらって、【魔王】に狙われてた元勇者パーティーメンバーの俺に、そんな脅しが効くか馬鹿」

「あ、あ、……」

「ようやくわかったか。オマエは餌だ」

「餌?」

「貴様の残った部下が貴様を助ける為に、ここに駆けつけたら、1人残らず灰にしてやる。不幸になった俺の八つ当たりだ。」


 召喚『ロケットランチャー』

 とっておきの武器を召喚して備える。

 コイツは爆発力が良い。


 飛び散るマフィアの群れ。

 想像するだけでが気が晴れる。


「何、だと………」

「精々、良い声で泣いて、いい餌になれ。お前らは俺がふられた記念のロウソクだ。みんなで不幸になろうぜ」

「ヒィ〜〜〜」

「俺の失恋八つ当たりアタックで、マフィアが壊滅すれば、それは愚行でなく凶行だ。そうだろ?」

「ヒャア〜〜〜」


 マフィアのボスが……

 ついに変な奇声を上げる。

 あ……!

 やりすぎたか?

 マフィアのボスの精神がどうやら崩れた。


 屈強な人間も、拷問を受け続ければ、いつかは何処かで精神が崩れる。

 人間は精神の耐久性にも限界値がある。


 人間を追い込むと………

 1まず哀願される。

 哀願が通用しないとわかると………

 2脅し反撃をはじめる。

 反撃も通用しないとわかると………

 3取引を持ちかけてくる

 取引でも通用しないと………

 4死を受け入れ始めて心が折れる。


 4のその時、人間は変な奇声をあげる。

 断末魔に近い叫び声。

 その声を放った人間は心が崩れる。



 一度崩れると精神は脆い。

 もう、戦えない。

 精神が崩れた人間は、良くて逃げる事しか選択しない。

 悪ければ死ぬのをただ待つ。



 コイツはマフィアのボスだけあって、精神が強いのか、元々壊れてるのか、追い込んでも反応の順番がグチャグチャだった。


 まだ……具体的な内容の取引を持ちかけられて無い事から、3の途中だと思ってた。

 4の死を覚悟まではして無いと思っていたが………


 それでも心が砕けた音、悲鳴はした。

 いつの間にか4の段階に達していた。

 コイツの心……折れたかなぁ。

 逃げ一択になった感じがする。

 逃げ一択まで精神を追い込まれた人間は……壊れるか?

 もう、俺には二度と逆らえまい。

 今までこの奇声を放った人間から、その後反攻された事が無い。


 そんな追い込まれたマフィアのボスと追い込んだ俺、そんな二人に向かって………


 

「ねぇ。やっぱり、『青の魔法使い』が見つからないんだ。一緒に探してよ」

「うお〜。びっくりしたぁ。【勇者】、何をやってる?」


 急にまた、突然に【勇者】が現れた。

 そして声をかけられた。

 なんでコイツが………

 どうしてここに………

 町外れのマフィアの拠点前だぞ。


 神出鬼没かコイツは!

 ちょっとビビった。


「それはコッチのセリフだよ。騒ぎがおきてると思って来てみたら、老人イジメて何やってるの?」

「コイツマフィアのボス。悪い奴」

「ああ、何だ。まだマフィア虐めてたんだ」

「いじめてたんだ言うな」

「お別れ会から昨日の今日で眠くないの?」

「フラレた俺に、睡眠など不要だ」


 俺の言葉に勇者は、なんとも言えない表情かおをした。

 その勇者に………


「た、助けて、くれぇ」


 マフィアのボスが勇者に助けを求める。

 俺が心を折ったせいか声が弱々しい。


「オマエは馬鹿か?」


 俺はマフィアボスに、呆れた声で聞く。


「え?」

「オマエが助けを求めてる奴は【勇者】だぞ。マフィアを助ける訳ね〜よ」

「ゆ、勇者」

「『目の前で悪事をはたらくものは、人間も魔族もみんな殺してしまった』がモットーの正真正銘の勇者様だ」

「げぇ!」

「勇者を何だと思ってるんだい? 僕、そんなに乱暴じゃないよ」


 俺の正論に老人も勇者も顔を歪めた。


「【勇者】は俺よりも残忍だぞ。勇者パーティーには、悪人を殺しても無罪って特権が全ての国より与えられてるからな」


 長い戦争のせいで治安が狂ってた世界。

 勇者は一種の治安維持部隊だ。

 勇者は正しい。

 勇者に殺された者が悪だ。

 

 ソレがまかり通る。

 その法が成立したほうが、治安が安定する程に、この世界の治安は悪かった。

 勇者の前では等しく皆が善人になる。

 善人にならなければ、ころされるから。


「だから人ぎきが悪いよ。それよりも『青の魔法つかい』を探すの手伝ってよ」

「朝っぱらから、まだ探してたのか? もう夕型だぞ」


『君だって、まだマフィアをいじめてる癖に』と言われた。さらに……


「やっぱり『青の魔法使い』が何処にもいないんだよ」

「い、や、だ。俺はマフィア壊滅で忙しいんだ」

「だよね〜。ハァ〜。自分で探すかぁ」

「ま、待て。ワシを助けてくれたら、ワシが、手下を使って人探しを手伝うから」


 え?

 マフィアのボスがとんでもない事を言い出した。アホかこいつは。

 でも………


「え? ほんと? ラッキー」


 勇者がマフィアボスの提案に食いついた。


「待て待て待て待て。ふざける【勇者】。ソイツマフィア。悪い奴。俺の敵」

「それが何か?」


 勇者が俺の目を真っ直ぐに見てくる。


「何かじゃね〜よ。なにサラッと助けようとしてる?」

「だってさ。君は手伝ってくれないし」


 手伝える訳がね〜。

 『青の魔法使い』が失踪したのは、たぶんと言うか間違いなく俺のせいなのに………

 下手に関わるとヤブヘビだ。


 下手に関わると、俺が泥棒したのと、

 たぶんそれが原因で魔法つかいがトンズラしたのがバレる。

 ………かもしれない。


 勇者は頭が良い。

 考えすぎかもだけども、『君子危うきに近寄らず』だ。


「俺は勇者パーティーをクビにされた。心情的にも……手伝える訳がね〜」 

「そうだよね〜。だから……そこの老人に頼もうかな〜」

「お、おうさ。何でも言ってくれ。だから助けてくれ」


 老人の必死の懇願。

 心が折れてた老人の心が蘇る音がする。

 流石は勇者。

 心が折れた人間を蘇らせるのは、お手の物

 魔王相手に心が折れた人類を鼓舞するのも勇者の役目だ。


 しかし……こんな場面で、そんなスキル使うなよ。

 マフィアの折れた心を、復活させてどうするよ?


「パーティーメンバー『青の魔法使い』がいなくなっちゃた。探すの手伝ってよ」

「分かった。代わりにワシを助けてくれ」

「ん? 良いよ」


 え???

 ちょっと待て。

 アッサリ、勇者とマフィアの契約成立?

 ふざけんな。


「よくね〜だろ。アホ勇者」

「アホって言った〜」

「オマエ〜オマエ〜」

「だって、困ってるのに君は助けてくれないし。老人は助けてくれるって言うし」


 (コイツ!)

 俺が捜索に協力しないと、マフィア潰しを邪魔すると暗に言いやがった。


(くそう。

 知るか。

 ……でも

 くそ……

 勇者には逆らえない。

 実力でも……

 心情的にも……)


「勇者に免じて老人の命は助けてやるよ」

「本当か?」


 と、マフィアのボス。


「え? 何で?」


 と、不思議そうに勇者。


「何が何でなんだ勇者?」

「でも……」

「俺、変な事を言ったか? お前の言う事に従っただけだが」

「何時もの君なら、ためらわずに敵の首をはねて、僕の捜索を手伝うじゃ無いか」

「ヒィ」

 勇者の言葉に震える老人。


 しかし………

 老人などに、かまってられない。


 俺も震えそうになってる。

 ヤバイな。

 俺の何時もと違う不自然な行動。


 俺……もしかして疑われてるか?

 『青の魔法使い』失踪にかんでると?

 疑われてる?

 背中にじっとりと汗が流れる。


 勇者が真っ直ぐに俺を見てくる。

 ヤバイ。

 勇者は頭が良い。

 しかも俺を知り尽くしてる。


 下手すると、俺の不自然行動から、イロイロ推察して悪事がばれかねない。


 そのくらい勇者は頭がキレる。

 バレるとヤバイ。

 上手く……ごまかせるか?


「俺はもう、お前のものじゃないんだよ」

「え?」

「理解しろよ勇者。オマエは俺を捨てたんだ。だから俺もお前に付き合う義理もねぇ」

「え……?」

「お前の為には何もしねぇ。手も貸さねぇ」

「……」

「パーティーを抜けるってのは、そういう事だ。そうだろ?」

「え? でも……」

「でもじゃねぇ。だからもう、お前の知ってる、いつもの俺じゃあ……いられね〜」

「………………………うん。わかったよ」


 勇者はしぶしぶ引き下がった。

 た、耐えた〜〜〜。

 誤魔化せた。


 勇者はトボトボと去っていった。

 そんな勇者の後ろ姿を見るのは辛い。


 しかし……

 くそう……

 マフィアのボスの命は助ける。

 俺はそう言ってしまったんだ。

 勇者の前で……

 勇者との約束を破るとヤバイ。

 マジでヤバイ。

 余計な約束しちまったァ〜。

 

 だから命は助ける。

 ボスの命だけな。

 他は……どうしてくれよう?

 いのち以外は……

 どうしてもいいよなぁ?

 どうしてくれよう?


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