う3、マフィア3【凶行】
やってやる。
トコトンやってやるぞ八つ当たり。
「え〜と、それでオマエが、ナントカ商会の頭でナントカマフィアの頭?」
「何を言ってるのかわからないが、言いたい事はわかる。私がオヌシの探し人だ」
俺はマフィアを蹴散らした。
この街のマフィアをしめ上げた。
親玉の居場所を聞き出し………
親玉の所に押しかけた。
アッサリと親玉のほうからも出てきた。
そして………
マフィアの親玉の目の前で、マフィア部下を手当たり次第に派手に燃やしてやった。
召喚『火炎放射器』
燃え上がる火柱。
生きたまま上手に焼けるマフィア達。
阿鼻叫喚の地獄絵図。
「この際、オマエラの人権は忘れて欲しい」
「な、何を言っておる?」
商会の会長でもあるらしいマフィア親玉。
貫禄のある凶悪そうな老人の男。
反射的にボコボコにした。
が、またふてぶてしい。
「俺は君等ともめたところを、勇者に見つかって、勇者パーティーを首になりました」
「………」
俺は堂々と大嘘をつく。
勇者パーティーをクビにされた責任。
それを、マフィアになすりつける。
ただの八つ当たりとハッタリだ!
「俺が勇者パーティーを追放されたのは、どう考えてもテメーらのせいだ。どう責任とってくれんだコラ?」
「とんでも無い言いがかりをつけてくれる」
「言いがかりだぁ?」
「ウチ等マフィアでも、今時そんな脅しのやり方はせんぞ、若いの」
俺が嘘の言いがかりをつけると、
堂々と言い返してきたマフィアの親玉。
白髪の年寄りのくせに手強い。
あ、もしかして言いがかりとバレてる?
なぜだ?
俺が勇者パーティーをクビになったのは、昨日の今日で情報はまだ出回ってないハズ
それとも……
マフィアの情報網なめてた?
もしくは雰囲気で、ばれたか?
それとも老人の年の功で見抜かれた?
まぁいいや。
「マフィアの事など知らん! とにかく責任とれ!」
バレても関係ない。か?
勢いで押し切ろう。
軽く逆ギレして、ごまかす。
兎にも角にも俺は怒りと悲しみを、誰でも良いからぶつけたいだけだから。
「それで……何が望みだ?」
マフィアのボスがおかしな事を言い出した
「あん? 望みだ?」
「言うてみろ。条件が折り合えば、和解出来ん事も無い」
「条件? 和解?」
何言ってんだ、コイツ?
マフィアの老人は手下を大勢倒された。
本人もボコボコにされたのに……
今更和解交渉?
まだ諦めてない?
「そうだ。何が望みだ?」
とマフィアの老ボス。
「何を訳のわからん事を言ってる?」
なんだ? この老人?
「何が欲しくてワシ等に挑む?」
「俺が挑む、だと?」
このジジイ、一体全体なんの勘違いだ?
「何か目的があってワシらに挑んだ? そうだろう?」
「違う。テメ〜の部下に煽られたから潰すだけだ。望み? ね〜よそんなもん。テメーら残らず灰になれ」
「な……!」
絶句するマフィアのボス。
「テメ〜ら幸せか? 俺は、不幸だ!」
断言する俺。
人が心底不幸な時だけに見せる、カラスのような黒い不幸のオーラを振りまいてみせる。
「なにを………」
「頭がハッピィーなら幸せだよなぁ。でも、俺は今、不幸だ! アンハッピィだ」
「………」
「勇者パーティーを追放された。そのせいで俺の未来は真っ黒だ」
「……ほう」
マフィアボスの老人は目を細めた。
ほう、じゃね〜よ。
状況わかって無いなコイツ。
「もしも勇者パーティーに戻れるのならば、俺は片方の金玉を生贄に捧げてもいいくらいだ。そのくらいには未練がある。そのくらいには不幸だ」
「何を言うとる? 金玉捧げて戻れるものでも無いじゃろう?」
目を白黒させるマフィア。
「なにぃ〜! 血も涙も無い事を言うな。アイツにも家族がいるんだぞ」
「アイツ……? なんの話じゃ? 急に話が見えなくなったわ!」
「アイツとは片方の金玉の事だ。アイツには兄弟がいるんだぞ」
「お主の言う事はわからん。何もわからん。 頭おかしいのか? 麻薬中毒症状か? 少し麻薬まわそうか?」
オレの言う事を、マフィアのボスはイマイチ理解してくれない。
しょうがないか。
俺にも自分自身の気持ちが整理出来て無いのだから………
感情を上手く言語化出来て無いのだから。
「兎にも角にも、俺は……俺以上に不幸な人間が見たいんだ!」
「!!!」
「不幸な人間を量産したい! おめでとうございます。オマエはオレのターゲットに選ばれました。今日からアナタは不幸です」
俺は恋も名誉も全て失った。
俺は不幸だ。
だ、か、ら!
皆にも不幸をおすそ分けしてやりたい。
「お………おヌシは! 自分が不幸ならば、もしや他人を不幸にする権利があると、勘違いしとる口か?」
「ん? そうだが? むしろ不幸を振りまくのは今の俺の義務だと思っている」
「義務? 人間は自分が不幸だからといって、他人を不幸にしていい義務や権利など持ち合わせて無い。ぞ」
ほう?
正論かもしれん。
しれんが……
「マフィアのくせに生意気な」
俺は一蹴した。
マフィアが正論言うなよ。
「マフィアである前にワシは人間じゃ」
「マフィアが人権を主張するな。それに俺はただ単に、出来れば俺自身の手で、不幸な人間を沢山沢山量産したい!」
「!!!」
「だから、このさい人権は忘れてもらいたい!」
「!!!」
肝の座ったマフィア白髪ジジイが、驚愕してた。
キチガイでも見る目で俺を見てる。
ようやく事態を飲み込みやがったか?
俺をゆすりかたかり、もしくは何か目的を持ってマフィアを攻撃してるとデモ思ってたのか?
違う。そうじゃ無い。
そうじゃないんだよ。
コレはただの八つ当たりなんだ。
「良い事を教えてやる。いや、悪い事か」
「悪い話など聞きたくも無いわ」
老人は聞くのを拒否した。
が、それはダメダメ。許さない。
「そっちの都合など知らない。聞いてくれ」
「………」
「いいか。勇者パーティーに入って魔王軍とやり合う連中ってのは、国に戦争仕掛けるよりも危険なことをしてる。難易度が高い事に挑んでる」
「国や人類の為、戦ってる………と? だから何をしても良いと?」
「そういう事を言ってるんじゃない」
何もわかってない。
「じゃあ何だ。何が言いたい?」
「そもそも損得勘定どころか、イロイロ覚悟決まってる。脳がぶっ飛んで無きゃ、国より強え【魔王】になんて挑めねぇんだ」
コレは事実だ。
【魔王】は怖え。
それに挑むスリルを楽しめる奴しか戦場には残らない。
「………」
「マフィア? 知るか。スナック食う感覚で潰すだけだ。マフィア程度と取引なんぞするか、命乞いなんぞ聞くかボケ」
「オヌシ……」
老人は更に顔を歪ませる。
完全に異常者を見る目で俺を見てくる。
そんな目で見るな!
「テメェは目の前に魔王がいても、そうやってズレた態度で命乞いするのか?」
「な……」
「敵を目の前にした魔王討伐隊が、魔王を恐れぬ魔王討伐隊が、【魔王】よりも常識的で優しいわきゃ、ね〜。そうだろ?」
「う……」
「常識で考えろ。魔王に挑もうって連中は……強さはともかく【魔王】よりも凶暴凶悪だから魔王に挑めるんだ。勝てるんだよ」
「……」
「ちなみに俺は……人類の味方のはずのライバル勇者も、俺の邪魔になったから間接的に罠をはって潰した事がある」
「何故そんな事を!!!」
驚愕するマフィア。
【勇者】に手をあげるというのは人間には禁忌らしいが、俺にはその感覚が全くわからない。
人類平等だと地球で洗脳されてるからな。
「全ては目的の為だった」
「それでも、やって良い事と悪い事があるじゃろう」
「ん?」
「勇者の足を引っ張るのは、人類全体にとって損、愚行じゃ」
それはそうかもしれんが………
その愚行は俺の得になるんだよなぁ。
「よく聞け。良いか。俺の行動は愚行じゃない。凶行だ」
「愚行とどう違うんじゃ?」
「美学、美しさがあるかないかだ」
「美学? じゃと〜」
美しくない凶行は愚行だ。
美しい愚行は凶行だ。
「美学のない凶行は忌むべきモノだ。でも凶行なき美しさは弱々しく病的で意味は無い。
凶行とは言うならば、法や治安部隊よりも先に素早く動ける、先手必勝の正義だ。
だから……凶行とは美しさの前ぶれだ。
美しい愚行こそが我が美学。
俺は正義の味方じゃない。
正義に似たような、何かだ。
そう名乗ってれば、凶行を重ねても、たまに責められずに済む。凄く便利だ」
「おい! ちょっと待てヌシが何を言ってるか良くわからない。
狂っとるんか?
いや、じゃが………特に最後のほうは理解できた。お主なんと言った? 完全に確信犯の犯罪者的発想が聞こえたぞ」
「何ぃ? オマエ俺の言葉が多少なりとも理解できたのか? 俺にも何言ってるのかよくわからんのに?」
「ワシにも何を言ってるかは良くわからぬ。しかし……何を言いたいかは、なんとなくわかる」
「そうか……【勇者】からも屁理屈言うなと言われた。何を言ってるかは問題じゃ無い。何をしたいかが問題なのにな」
「目的と手段を間違えとらんか!!!」
目的?
手段?
そんな物はもう失った。
俺は……
そこで初めて俺は、虫を見るような目でマフィアを見た
狂気に染まった自覚のある目で。
マフィアが震えた。




