い2章、2、反撃を開始する
邪悪な魔法使いめ。魔女め。
オマエは絶対に許さん。
言い負かして泣かせてやる。
俺の口は炎こそ吐けないが、呪いのブレス並みの呪詛は吐ける魔法の口だ。
伊達に『賢者』を名乗ってない。
ぶっちゃけ口で人を呪い殺せる程、悪知恵と性格の悪さには定評がある俺。
今まで何人ものライバルや敵を口や策で呪い潰した実績がある。
そのせいで人類の戦力は削られて魔王軍相手に多少劣勢になった程だ。
呪われた悪知恵と言葉を吐き出す口で、敵も味方も潰す『賢者』それが俺。
【青の魔法使い】相手に常勝不敗の勇者パーティーに、敗北は許されンぞ。
そう、いつもの様に叫ぼうとして……
思いとどまった。
あ……
俺、もう……常勝不敗の勇者パーティーじゃ無かったんだ。
俺が今、口で戦ってる相手こそが正真正銘の勇者パーティーの一員『青の魔法使い』。
常勝腐敗の勇者パーティーメンバー。
腐女子? 貴腐人? だった。
実のところ内心で俺は……勇者パーティー追放が決まり、コイツに負けた悔しさで、泣きそうだった。
が……
だけども、その感情を、怒りと復讐の感情で、なんとかごまかして押し殺してる。
そうでもしないと、『青の魔法使い』に負けて、勇者パーティーから追い出されるのが悔しくて悔しくて……
涙を流してしまいそうだったから。
夜
今日は俺の送別会。
俺を勇者パーティーから送り出す最後の飲み会だ。
俺にとっては勇者パーティーの三人とは、今日で会うのは最後になるかもしれない。
もう………この仲間とは会うことは無いかもしれない。
この飲み会が終わると
俺は勇者パーティーから脱落して一般人になる。
今日までは勇者が、そばにいた。
でも………明日からは、もういないのに。
勇者パーティー4人で騒いで飲んだ。
みんなベロベロに酔いつぶれた。
『青の魔法使い』は終始上機嫌で俺を攻撃してきた。
「アナタ異世界人なのに勇者パーティー追放されるのね。ねぇ、今どんな気持ち?…///」
「………」
が、俺はへこんだふりをしてた。
そんな俺にかさにかかって『青の魔法使い』は攻めかかってくる。
「『賢者』アナタは魔王を倒せないのに、何しに異世界まで来たの? 観光? 観光なの?…///」
「て、テメェ〜。俺が追放されるのはテメェのざんげんのせいだろ」
「自業自得じゃ無い。言いつけられて困るような事をするほうが悪いよね///」
「く!」
一理ある。
確かに俺はやらかしもした。
が認めんぞ。
「そもそもパーティのインフルエンサーみたいな『私』と、パーティのインフルエンザみたいに悪い噂の絶えない『賢者』。どっちがパーティに必要かを考えたら当然よね///」
「誰がインフルエンザだ」
「アナタなんの為に異世界に呼び出されたの? コレからココでどう生きてくの?…///」
「……」
「アナタ『賢者』なのに、試合に負けて勝負にも負けちゃったね〜///」
「……」
「アナタは異世界人としても。高レア職『賢者』としても。皇女の元カレとしても。この世界を救えなかったのよ!///」
「!!!」
この言葉は正直胸に刺さった。
俺には確かに魔王と戦い、そして魔王に勝たなけりゃならない理由があったのに……
「みっともなく未練がましく勇者に執着するなんて、アナタを『元カノ未練賢者』と呼んであげましょうか?///」
「元カノ未練賢者〜? 青の〜テメ〜ふざけんな。ブチ転がすぞ」
「朗報、異世界から召喚されたのに『賢者』無事勇者パーティーを追放されて、役立たずになる。キャハハ…///」
青の奴は容赦なく俺を煽る。
我慢強い俺は我慢してたが……
ついに耐えきれなくなった。
「何の為に俺が異世界へ来たか? 俺が異世界に来た目的? 生きる目的? そんなの決まってる!」
「な〜によ……お姉さんに教えてみ?///」
「感違いするな。俺は魔王討伐では無く、オマエに嫌がらせする為に異世界召喚されたのだ」
「な、なんですって?…///」
「俺がそう言うの得意で何人も地獄に送ってるの見てきたよな。オマエ。魔王の代わりにオマエを地獄に送ってやる」
「!!!///」
俺が宣言すると『青の魔法使い』
は絶句した。
「てかオマエが魔王じゃね? 性格悪いし」
「ふざけんナ。…///」
「俺は………【青の魔法使い】に嫌がらせしてやる。オマエの人世設計を、ぶち壊す為に俺は異世界からやって来たのかもしれない」
「ちょっ。やめてくんない。気持ち悪いんですけど///」
「やめない』
「ストーカーなの? アナタには、お似合いだけど。やっぱりね元カノ未練賢者ね。元カノに執着するのは良いけど、私には執着しないでね///」
誰が元カノ未練賢者だ。
誰がストーカーだ、この野郎。
いや、相手は女だから女郎か。
「オイ青の。オマエは冗談めかしてるが、オマエを必ず不幸にしてやる」
「え?///」
「オマエに恋人が出来たら恋人ごと、子供が出来たら子供ごと呪って凸&凸&凸撃してやる」
俺の暴言に、青の奴は驚いた表情と目で俺を睨んでくる。
当然俺も睨み返す。
実際は今の所、コイツの人生を壊すどころか、俺の人世設計を、この女にぶち壊されたのだが……
「やれるものならやってみなさい。私の恋人をどうにかする?」
「あ?」
「私の恋人が誰かも忘れてるノータリン。返り討ちよ。『賢者』の名が泣くわね///」
「あ……」
しまった。コイツの恋人、レベル250超えの化物勇者だった。
俺の呪いや突撃など軽く跳ね返すだろう。
何と言うミス。
「バーカバーカ///」
「ふん。バカはお前だ」
「何よ! アンタなんて追放されるくせに///」
「オマエも数年、いや数ヶ月後にはそうなるだろう」
「なる訳ないじゃ〜ん///」
「オマエは勇者に散々貢がされ、弄ばれ、大量の保険金かけられて南無阿弥陀仏されるんだよ」
「そんな訳ないじゃん///」
「今の俺を見ろ」
「ん?///」
「勇者に散々弄ばれ、利用され捨てられた俺の姿を見ろ。今の俺の姿が、そのまま、オマエの未来の姿だ!」
「そう言えば!!! ///」
青が勇者のほうを振り向いた。
「だろ。勇者はそう言う奴だ! 腐った貴腐人のオマエには、お似合いだがな!」
実力で負けてても口では負けん。
事実はどうでも良い。
『青の魔法使い』を騙して溜飲が下がればそれで良い。
そんな口喧嘩する我々を、あきれた様子で勇者と聖戦士が見てた。
勇者が……
『そう言えば! じゃ無いよ。なんで僕が悪者扱いなんだ?』
人ぎきの悪いとか言ってて
聖戦士が……
『まぁまぁ。アイツラはそう言う人間だから』と怒る勇者をなだめてた。
『彼は僕の事を恨んで無いと思ってたのに』
『そりゃ無理だ。普通に恨むさ。魔王討伐直前にリストラされるのだから』
『逆恨みだよ。そもそも魔王に挑むレベルも勇気も無いカレが悪いわけで……何故、僕が責められ、あんなに悪口を言われなきゃいけないんだ』
勇者が酒をあおって聖戦士に愚痴をはく。
『まぁまぁ。頭が良くて性格が終わってるモノ同士が本気で口喧嘩を始めたら、あんなもんダロ。なれろ』
『なれないよ』
『俺はなれたぞ。コレが最後の聞き納めだと思うと、まぁまぁ名残惜しい』
勇者と聖戦士の会話が耳に入った。
勇者に反論してやろうとしたが、それよりも先に『青の魔法使い』が俺に再び噛み付いてきた。
「私が腐る? なによ。ふざけないで。アナタなんて世が世なら懲役2〜300年食らっても、おかしくないクズ男のくせに……///」
懲役300年?
おい……なんだそりゃ?
俺そんなに悪いことしたかな?
したかもしれないな。
でも、そんな昔の事は忘れたさ。
ただ今はとにかく……
「その懲役数百年喰らいかねない俺が、コレからの人生かけて、お前の人生ぶち壊してやる。凸撃、楽しみにしてろ凸凸凸」
「ふざけないで! せっかくアンタがパーティーから抜けて、清々しい開放感でせいせいしたのに。ワタシにつきまとわないでストーカー!!! ///」
「誰ががが、ストーカーだって?」
「アンタ///」
おのれ誰がストーカーだと?
やっぱ『青の魔法使い』をやっつけたい。
俺は、ただただ俺の勇者パーティー追放トリガーとなった『青の魔法使い』が憎かっただけなのに。
「俺はストーカーじゃない」
「ストーカーはみんなそう言うのよ///」
「ストーカーって愛情とか必要だろ。俺にはそれが無いからストーカーじゃないな。ただつきまとって復讐してやりたいだけだ」
「ふざけないで。それじゃあストーカーよりも、余計にタチ悪いでしょ。元カノ未練賢者がストーカーとかやめてよね」
チィ。
これ以上『青の魔法使い』とやりあっても、らちがあかんな。
生産的でない。
コイツとここで喧嘩しても得るものがないと今更気がついた。
俺が追放される流れは変わらない。
そろそろ今日中に街を出たアリバイを作る為に、おいとまして一度街を出るか。
本番はこれからだ。
俺は席をたった。
ついで最後に八つ当たりの演説をうった。
「勇者パーティーの皆さん。
今ここで貴方達のパーティーメンバーの善良な一人が、貴方達の手によって追放されようとしています。
俺の追放が貴方達の、さらなる幸福につながりますように。
俺は……青のざんげんのせいで罪なくして追放される!
だが……無実の俺を追放した、貴方たちには……俺の賢者レベリングで強くなった貴方達には……俺の不幸の上に、どうか幸福を」
俺は精一杯の皮肉を込めた呪詛を喋る。
……事実かどうかはどうでも良い。
ただ勇者パーティーに残る3人。
彼らの罪悪感を少しでも刺激出来ればそれで良い。
せめてもの八つ当たりだった。
残念無念の嫉妬心だ。
コイツラは多分、魔王を倒して英雄になる
俺もコイツラみたいに世界を救ってみたかった。
「また、おかしな演説を始めたわね。誰も聞いていないのに///」
「いや、聞けよ。俺の最後の演説くらい」
「そもそもアンタの何処に罪が無いのよ。存在そのものが罪のクセに。図々しい……///」
「存在が罪ってオマエ〜」
「そうだ。私達はアナタの追放を糧に成長して魔王を倒して幸せになってみせるわ。コレで良いんでしょ///」
「全然良くね〜よ」
「アンタって本当に不憫よね///」
酔っ払った青の声を無視しつつ、俺は俺のお別れ会の席を立った。
お別れだ。
勇者パーティーとお別れだ。
後ろ手に三人に手を振りながら、店を後にする。
最後に勇者と、ほぼ酔いつぶれてる残りの二人を、ふとふりかえる。
そこには最後の力で俺に反論した後、酔いつぶれた【青の魔法使い】を甲斐甲斐しく介抱する勇者の姿があった。
その光景に……一瞬振り返った事を酷く後悔する。
少し前ならば、勇者の隣【青の魔法使い】の今いる席には俺が座っていた。
はっきりと俺の居場所を取られた。
嫉妬で狂いそうになる。
確かに元カノ未練賢者と呼ばれても仕方ないかもな。
俺は勇者の隣にいる俺が好きだったから。
その時間だけは輝いていた。
俺自身のしくじりと才能の無さと………
『青の魔法使い』のせいで
俺は輝きを失い今凄く追い詰められてる。
頼るべき仲間を失った異世界人
魔王討伐と言う存在意義を失った異世界人
最愛の恋人を失った。
野望も……
目標も……
何もかも失った。
だから……
さぁあああああ……!
これからだ!
【これから反撃を開始する!】




