↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
85/87

コミックス1巻発売記念SS 前編

本日コミックス1巻発売です!お手に取っていただけたら嬉しいです。紙&電子どちらでもお楽しみいただけます。第五話は描き下ろしです。ピクシブでは香月先生オリジナル番外編が更新されますのでこちらも要チェックです!

Amazon→https://amzn.asia/d/0huq9voQ

挿絵(By みてみん)

 ガイルと魔物たちを救った功績でカイヤナイトの首飾りを賜り、ひとまず冥府での定住権を手に入れたアクアマリン。

 ほっとしたのもつかの間、次なる問題に直面していた。


「ど! う! し! て! こんなことになっているのよっ」


 狭い家には朝から魔物たちが押しかけ、あれやこれやと好き勝手に騒いでいる。ゴブリンや狼男といった見慣れた魔物から、見たこともないヘンテコな魔物までいつの間にか上がりこんでいるではないか。

 そしてこれは今日に限ったことではなく、もはやいつもの光景と成り果てていて、アクアマリンの頭痛の種になっていた。

 怒りを滲ませるアクアマリンにお構いなしで、かれらは彼女を取り囲む。


「このあいだの件、聞いたわよ。冬を越す洞窟を探してくれないかしら」

「俺も助けてくレ。換毛期で抜け毛がすごいんダ。家を掃除してくれヨ」

「この書類、ガイル様に届けてくれない? 怒られたくなくて……」

「羽の付け根がかゆいんだよ。掻いてくんねぇか?」 

「お黙りなさいっ! わたくしは召使いでも便利屋でもないのよっ!」


 どうやらガイルの一件で、『〝擬態〟は案外優しい性質で、頼れば助けてくれる』という噂が魔族の間に広がっているようなのだ。

 また一匹、アクアマリンの前に進み出る魔物が現れた。


「ウゴッ、ゥゴゴゴッ、ウゴ……」

「あなたはせめて言葉を話せるようになってから来なさいよっ」


 のろまなゴーレムを叱りつけたアクアマリンはキッと魔物たちを睨みつける。


「冗談じゃないわよ。偽善なんて聖女の真似事をしていた時にやりつくしたわ。もう飽き飽きしているの」


 ガイルの件は事情が事情だっただけだし、助けたというつもりもない。自分がやりたかったからやっただけだ。

 見ず知らずのどこの馬の骨ともわからない魔物を助ける義理などこれっぽちも無い。


「あんたたちなんて知らないわ! よそを当たって! ほらさっさと出ていく!」

「おいっ。話が違うじゃねぇカ!?」

「話も何も無いの! ごきげんよう!!」

「こら模倣ッ――」


 怒るミノタウロスの鼻の先でドアをバンッと閉じる。

 有象無象を追い出してほっと息をついていると、ふと足元に何かが触れた。


「……?」


 下を見ると、なんと赤ん坊が足にしがみついていた。 

 姿かたちは人間にとても近く、耳がとがっていることと小さなツノ、背中に羽が生えていること以外はアクアマリンも馴染みのある見た目だ。

 どうして赤ん坊がここに??


「……もしかして。あなた、置いて行かれたの?」

「ぷぅ」


 慌ててドアを開けて外を確認するが、魔物たちは一匹残らず去ったあとで、深い森の景色が広がっている。


「種族は? 名前は言える?」

「ぷきゅう~」

「……話せないのね」


 こちらの言うことは何となく通じている感触はあるが、まともなコミュニケーションはとれない。

 アクアマリンは頭を抱えた。


(つまり、子守りを押し付けられたということね。赤ん坊なら追い出されないと思ったんだわ)


 今までの人生、子守りなんてしたことない。きょうだいは姉一人だし、アクアマリンは世話されることはあっても年少者の面倒を見たことは無い。


「勝手なことして。冗談じゃないわよ」


 赤ん坊の服をつかみあげ、窓から放り出そうと運んでいくと、察した赤ん坊が騒ぎ始めた。


「ぷきゃぁ、ぷきゃぁ!」


 ムチムチの手足をばたつかせ、追い出されまいと必死に抵抗する。思いのほか力が強い。


「お黙り。ここはわたくしの家なの。恨むなら置いていった親を恨みなさい」

「ぷきゃあーっ!!」


 赤ん坊は大きな瞳いっぱいに涙をためて懇願するようにアクアマリンを見つめている。ぶるぶるとした身体の震えと恐怖心が腕に伝わってきた。


「…………」


 アクアマリンは長いため息をつくと、ゆっくりと赤ん坊を室内に戻した。


「うちにはオモチャも赤ん坊の食事もないのよ。まったく……せめて一緒に置いていきなさいよ」

「ぷきゅっ」


 元気よく床を這いまわり始めた赤ん坊を見つめて途方に暮れていると、コンコンとドアがノックされた。


(もうっ! またなの!?)


 苛立ちが募っているアクアマリンは額に青筋を立てる。音を立てて勢いよくドアを開けた。


「しつこいわねっ! 何度も言うけどわたくしは便利屋じゃないの。帰ってちょうだい!」

「……便利屋?」


 困惑した顔で、しかし品よく立っていたのは。艶のある銀髪に雪のように白い肌、深紅の血を思わせる双眸を持つ美しい青年。

 行きつけのバー『ナイト・ブルーム』の若き店主、吸血鬼のアシュレイだった。

今回のお話は全3話になります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。