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第13話 おねショタ

 目的の場所に着くと、先客がいた。腰まで伸びた黒髪もあってか大和撫子っぽい印象を受ける。外見からして、おおよそ20代中盤あたりだろうか。


「あ、おはようございます」

 その人は振り向いて僕に挨拶してきた。

 髪がふわりと風になびく。包容力のある優しそうな表情をしているその人は、お姉さんという言葉が似合う。


「あ、アッヒョwwwwオヒョwww」


 あっぶな。急に挨拶されたせいでオタク特有のどこぞのネズミの友達みたいな挨拶をするところだった。ギリギリセーフ。


 なぜか目の前の女性は口元を押さえて笑っている。


「カベッサさんから聞いてるかもしれませんが、今日は二人での作業よろしくお願いします」

 そう言って微笑む。


「はい、こちらこそ」

Helena(ヘレナ)です」

「明谷 太郎です。今日はお願いします」


 お決まりの社交辞令を済ませる。


「明谷、太郎……」

 何か考えながら僕の名前を繰り返した。そんな珍しい名前だった?


「あ、やっぱりそうだ」

 何か思い出したような声を漏らす。


「どうかしました?」

「そう言えば『太郎はこの森に関してはプロだから』ってマーシャが誇らしそうに言っていたのを思い出して。今日は頼りにしてますね」

 ヘレナさんはニッコリと微笑みかけてきた。

 今の笑顔で童貞の40%は確実に死んだだろうけど、そんなことより森に関してプロってなんだ? 動物の言葉が分かるアレとか、一話ら辺で森の主みたいなやつと親友って言ってモブのやつが驚くみたいなアレか? うーん、そんなに森くんと仲良くなった覚えはない。


「いえ全くそんなことはないですけど……」

「え?」

 ポカンとしていた。


「マーシャの言うことなんて90割は嘘なので当てにしない方が良いですよ」

「パーセントじゃなくて!?」

「え……? 知らないんですか?」

 僕は心配するようにヘレナさんを見た。


「なんでそんな驚いた顔してるの!? 知らないって何!? パーセントってついに100超えたの!?」


 ……あ、この人思ったよりノリいい。


 冗談もそこそこに僕たちは作業に取り掛かった。今日の作業は薬の素材を集めることだ。


 ▼









 ▽


 作業に取り掛かりしばらくした頃、ふと疑問が湧いた。


「そういえばマーシャとは関わりがあるんですね」

 ヘレナさんは不思議そうに首を傾げた。どういう意味だろうといいたげなそんな表情に見える。


「えっと、そうですね……マーシャに限らず多分この村のほとんどの人とは関わりがあると思います。何か変ですかね?」

「いえ、僕もこの村の人は皆知ってると思っていたんですけどヘレナさんのようにまだあったことの無い人がいたのでちょっと驚いて」


 それを聞いてヘレナさんはこちらの意図を理解したのだろう。仰々しく手の平をポンと叩いた。それ本当にやるやついるんだ……


「確かに! 言われてみればそうですね! じゃあ今日こうして会う機会をくれたカベッサさんには感謝感謝! ですね」

「美味しいヤミー! 感謝感謝!」

「え?」

 何言ってんだこいつって顔をしていた。


「あーいえ。そうですね」


 ……それにしても敬語なの気になるな。


「えっとー明谷さん? 何か気になることでもありました?」

 不思議そうに首を傾げる。さすがお姉ちゃんキャラ。弟くんの気持ちを察するのは得意か。


「あーその、ヘレナさんって僕よりも何歳か年上の方……ですよね? 敬語で話さなくても全然大丈夫というかむしろ敬語じゃない方がいいというか」


 ヘレナさんは『あ、そういう事か。フムフム』といった顔をした。

「あ、そういう事か。ヘムヘム」


 思ってたよりちょっとだけ忍者のたまごだった。


 そして、姉み溢れる表情で柔らかく微笑んだ。

「優しいんですね」


 その日、人類は思い出した。

 姉みとは何か。姉みと似たような言葉にバブみやママみといったものがある事は誰しもが知ることだろう。

 姉みとは、たった一言。読んで字のごとく、姉を持たない全ての人類にとって理想の姉であると判断された状態のことである。

 その判断は、全256項目の条件をクリアした後、国際会議によって決められる。全世界の姉好き一億人の中から選ばれた、平均年齢95歳の全世界の姉好き達による伝統的な国際会議、その名は。

 『お姉ちゃん! 将来ぜったい結婚しようね!』──通称『おねショタ』である。

 とウッキウキペディア、通称ウキキに書いていた。


「えっと、確かに私の方が歳上ですけど明谷さんはそれでいいんですか?」

「僕は何となくその方がしっくりきますけど逆に気を使わせるのも嫌なのであとはヘレナさんの意思に任せます」

「そうですか? じゃあ分かりました。あ、じゃなくてえーっと、うん。分かった!」


 そんなテンプレ過ぎるやり取りをしながら、再び作業へと取りかかるのだった。

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