第14話 蠱惑
「よし! こんなところかな。明谷くんのおかげでだいぶ捗ったよー。ありがとね」
「僕の方こそヘレナさんのおかげでかなり助かりました」
数時間作業を共にしたこともあり、ヘレナさんとも仲良くなれてきていた。
「そう言ってくれると嬉しいな」
ふふっと笑いながら荷物をまとめる。
「よし、じゃあ帰ろっか」
「ですね」
二人で立ち上がったその時、足元にピンク色の何かがぴょんと跳ねてきた。
「うわ!」
反射的に足をブンブン振りまわす。
なんだコイツは? 蛙? いつの間に?
ようやく足から離れてくれた。
「ちょ! 明谷くん! ダメだよ! 離れて──」
「え?」
時すでに遅し。
奇妙な生物は鳴き声を発すると、体からピンク色の煙を噴出した。
こうなると分かっていれば、息を止める判断ができたかもしれない。
だがもう遅い。吸ってしまった。
……頭がボォーっとしてくる。徹夜した日の朝のような、脳が働いていない感覚。と、同時に体がどんどん熱くなってくる。
「そう言えばヘレナさんは!」
煙の中、姿を探す。
……いた。どうやらヘレナさんも同じらしい。いや、同じというのは適切ではない。
「だめ……我慢できない……私このままじゃおかしくなっちゃいそう……ここまで凄いなんて……」
息を荒らげている。
「あ、明谷……くん」
僕を見た。
汗がヘレナさんの首元を伝ってその先にある谷間へと消えていく。ゆっくりと。蟲惑的に。
「熱い……服、邪魔かも……」
重たそうに体を動かす。
元々薄着だったせいか、ヘレナさんの服は汗で体にピッチリと吸い付いていた。柔らかそうな胸が否応なしに強調されていた。
「!」
突然、首筋にザラザラとしていて柔らかい感触を覚える。……舐められた?
目の前にいるヘレナさんを見ると、
「ふふっ。汗、舐めちゃった」
舌を出して挑発するようにそう言ってくる。
明らかに様子がおかしい。あの夢で見たエミリーさんみたいに。
「だから代わりに──」
そう言いながら媚びるように首元を突き出すと、
「私のも……舐めて?」
上目遣いで僕を見た。
そして僕は──




