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第11話 戦車かマーシャ

「!」


 目を覚ます。なぜか全身にベッタリと汗をかいている。


 僕は今なにかの夢を見て……何の夢を見ていたんだ?

 思い出せない。何かすごく嫌な、リアルな夢を見ていたような気はするのに……中身が全く出てこない。いや、そもそも夢を見たのか? まるで一秒ごとに夢の内容が消えていっているみたいな感覚だ。


「あ、おはようございます。明谷さん。……ってその汗! 何か嫌な夢でも見たんですか?」

 目を覚ますや否や、心配そうな目でエミリーさんが僕を見た。


「あーまあちょっと嫌な夢を見たかもしれないような気がして……」

「内容は覚えていないんですか?」

「そう、ですね……」


 どうしてか思い出せない。夢を見たのかすら分からない。


「なんだかよく分かりませんけど……えっと……よくある、階段から落ちる〜みたいなやつとかじゃないですか? 私もたまに見ます、怖いですよね……えひえひ」


 相変わらずえひってるのはさておき、「落ちる〜」の言い方が可愛かったからそういうことにしておこう。……まあ、実際気にしてもしょうがないことだ。


 僕はとりあえず汗を流しに一階へと向かった。


 ▼









 ▽


 今日も今日とて一日の始まりは予定を確認する事から始まる。


「森の方で作業がある、か。その前に昨日のことについてカベッサさんに話しておくか」

 僕は一人呟いた。


 昨日のことと言うのは、言わずもがな……なんの事だ? 僕は昨日……何をしていた?


「う……!」

 ズキズキと割れるような頭痛に思わず膝をつく。同時にまるで流れ込んでくるように記憶が戻ってくる。





 ◆


 目に輝きはく、心がここにあるのかすら分からない。それほどに空虚な、まるで──人形。まさにそれだと思った。


「こっちには行っちゃダメって……言われてましたよね?」

 下を向いたまま、呟いた。

 独り言かと疑うほど小さな、消え入るような声だった。無機質で、それでいて冷たい。機械にでも喋らせているのように。


 今気づいた。ここに踏み入るべきではなかったんだ。どうしてだろう? 自分よりも幼い少女に恐怖を感じるのは。


 下を向いて立ち尽くす彼女の変化を見逃さないようにして、少しずつ、少しずつ、距離をとる。


 今この状況で一つだけ分かることがある。

 それは、この得体の知れない存在から逃げなくてはならないということだ。


 彼女は動かない。


 唾を飲む。

 背中と額から吹き出た汗が、まるで氷のようにツゥーと肌を冷たく撫でていく。さっきから心臓の音がいやにうるさい。


 距離を離す。

 少しずつ、少しずつ。草を踏みしめる音さえも立てないようにゆっくりと。


 動かない。エミリーさんはピクリとも動いていない。まるで電池が切れた機械のように。


 なぜ動かない? 何が起きて──


「!」


 こんな異常な状況の中にずっといるせいか、妙な頭痛がし始める。でも今はそんなことより逃げなくては……!


 その時、彼女がゆっくりと顔を上げた。

 しかし様子がおかしい。キョロキョロと周りを確認している。

「ここって柵の奥、ですよね? どうしてこんなところに……?」

 自分自信に言っているのか、それともこちらに聞いているのか。曖昧な言い方だ。


 自分の知っているエミリーさんだと、そう確信できる。

 気が付いた時には、恐怖はさっぱり無くなっていた。砂のお城が波で崩れるようにでは無い。まるで初めから無かったのではないかと思うほどに急に無くなっていた。


「えっと、それで……なんでこんな所に?」


 そう言えば質問されていた事を忘れていた。僕は怒られること覚悟で、事情を説明した。


「そうなんですね。えっと、大丈夫……でしたか? 何も無かったですか?」


 それだけだった。怒るわけでもなく。それどころか不快感の欠片もなく。ただ純粋に、澄んだ青い目が見つめている。


 不思議な気持ちだ。どうして許すことができるのか。どうして心配できるのか。

 分からない。この人の心の清さが。


「ごめんなさい」

 だから、ただただ謝りたくなった。


 目が合った。どこか気まずそうに、恥ずかしがるように微笑むエミリーさん。


「とりあえず戻りましょうか」


 正解が分からない僕は、ただそう言ってぎこちなく笑い返した。


 ◇





 ……………

 そうか、それで村に戻ってその後──





 ◆


 夕暮れが近いらしい。村からだと陽が沈んでいく様がよく見える。

 いつの間にかそれだけの時間が過ぎていた。

 

 ちょうど村の入口に着くあたりで、エミリーさんが思い出したように聞いてきた。


「そう言えば、カベッサさんに頼まれていたものってなんだったんですか?」


 あー、そんなこと言ったな。


「あれ嘘なんです」

「えぇ?! そうだったんですか!」

 目を丸くして驚く。

 全くその可能性を考えていなかったらしい。


「そうなんですよ。……ん?」


 ドタドタドタドタ

 すごい速度ですごい音が近づいてきている。

 戦車かマーシャだろうと思ったが、マーシャだった。

 あれは明らかに怒っている。こうなれば仕方ない……切り札を出すしか。


 詳しくは割愛するが、プンプンなマーシャにおかず一品という条件で何とか許してもらったような気がする。ざっくりこんな感じだったと思う。



「行くぜ海馬(かいばではない誰か)! 俺のターン! ドロー! 俺はポンコツカード! アリスの夕食を全部捨て、暴食のマーシャに献上(ダイレクトアタック)!」


 ◇





 そうだった。昨日はこんなことがあって僕はあの時のエミリーさんの様子がおかしかったことを話そうとしているんだった。

またダメだった

ほんの少し間に合わなかった

もう少し早く制御できていれば……


どうしようか悩んでいたら神様が何とかしてくれた

だけどその代わりもう殺っちゃダメだって言われた

また同じことをすると世界がどうのこうのだとか

まあ私の知ったことじゃない


あと

二回

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