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引っ込み思案な少女と3色のブラス〜初心者の私が全国金賞を掴むまで〜  作者: 宝妖夜るあ


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4/7

4話:5月の青空と、不都合な筋肉痛

4話目になりました!

キャラの紹介

椎名舞花(しいなまいか)

3年4組

部長

クラリネット

髪色:アッシュブラウン

髪型:ハープアップにして、後ろを緩くポニーテール

性格:音楽に対してとても繊細で、クラリネットをまるで歌うような美しいソロで吹く天才肌


黑山将磨(くろやましょうま)

1年1組

チューバ

髪色:深みのあるクラシックダークブラウン

髪型:すっきりと短く刈り上げた。清潔感があるスポーツマンショート前髪の短めで眉毛がキリッと見える男らしい髪型

性格:無口で不器用だけど、誰よりも優しく力持ち

性格が良くて、一見するとちょっと怖そうに見えるが優しい

 

早乙女柚月(さおとめゆづき)

1年2組

クラリネット

髪色:ウォルナットブラウン

艶のある上品な系

髪型:上品なロングストレートヘア

大会のときはポニーテール

性格:ちょっとおっとりしていて世間知らずだが負けず嫌い

 

白鳥恋白(しらとりこはく)

1年4組

フルート

髪色:透明感のあるハニーブラウン

髪型:サラサラのミディアムボブ

性格一見完璧に見えて、実はプレッシャーと戦うお嬢様

育ちがよい。

三年生の美桜先輩に、褒められたいと思っている。


笹崎春

1年3組

男子

トランペット

髪型:ナチュラルマッシュ

髪色:柔らかなココアブラウン

性格人当たりが良く一生懸命な努力家

可愛がられる弟系

明るく親しみやすい

ゴールデンウィークが明け、校庭の桜の木がすっかり端々しい青葉に包まれた5月の上旬。


仮入部という名の【お試し期間】が終わり、ついに私たち1年生が正式に部活動へと加入する【入部式】の日がやってきた。


放課後の南校舎。


窓から差し込む西日は少し汗ばむほど暖かく、廊下の向こうからは早くも夏を予感させるような爽やかな風が吹き抜けている。


けれど、音楽室の引き戸の前に立つ私の心の中は爽やかさとは程遠い、どんよりとした緊張の嵐が吹き荒れていた。


(自己紹介…本当にやるんだよね。どうしよう心臓が口から出そう…)


音楽室の中に一歩足を踏み入れると、すでに音楽室の机はすべて壁際に片付けられ、中央には数十脚の椅子が大きな円を描くように並べられていた。


上級生達が奥側の木の椅子にズラリと座り、私達1年生は手前の席に身を縮めるようにして腰掛ける。


部屋を優しく満たす、古い木製の床のワックスの匂い。


「ーそれでは本日より新体制となります。まずは新入生の一人一人から自己紹介と抱負をお願いします」


部長の  先輩のハキハキとした声が、音楽室の天井に響いた。


その瞬間、1年生の列がピシッと緊張が走る。


端っこの席の子から順番に立ち上がり、「笹崎春

です。トランペットを小学生の時にやってました!抱負は全国大会に行くことです」


「早乙女柚月ですわ。小学校でサックスを吹いていましたわ」


「白鳥恋白です。先輩達に教わりながらフルートを完璧にしたいです」


「俺は黑山将磨です。チューバをやってました。全国大会に行くこと。」


と元気よく挨拶をしていく。


順番がこちらに近づいてくるにつれて、私の心臓はトントンと激しい早鐘を打ち始めた。


喉がガラガラに渇き、頭の中が真っ白になっていく。


私の前の子達が立ち上がった時には、あまりの緊張にセーラー服のスカートの裾をギュッと握りしめた。


「ー次の方、どうぞ」


ついに、私の番が来た。


ガタッと木の椅子を鳴らして立ち上がると、視界にある数十人分の視線が一斉に私へと集中した。


人前で立つのが何よりも苦手な私にとって、それはまるで針のむしろに座らされているような感覚だった。


けれど、円の向こう側で汐織先輩が(大丈夫だよ)と言うように、小さく何度も頷いてくれているのが見えた。


私は胸の奥で一つ深く息を吸い込んだ。


ここで縮こまっちゃダメだ。


自分で決めた道なんだから


「……っ、倉田恋々菜(くらたここな)です!楽器は完全な初心者ですが、先輩たちに追いつけるように一生懸命頑張ります!よろしくお願いします」


最後は少し声が裏返ってしまったけれど、音楽室の壁に届くぐらい、精一杯の声を出した。


「よろしくお願いします!」


と先輩たちが温かい拍手で迎えてくれたとき、張り詰めていた肩の力がようやく抜け、私は崩れ落ちるように椅子に座り直した。


顔がカッと熱いけれど、不思議と胸の奥はスッキリとしていた。


こうして全員の自己紹介が終わり、晴れて吹奏楽部部員としての生活が始まった。


まずはオーボエを持って、先輩と2人きりの幸せな練習が始まるのだ。


ーそう、文字通り、【お花畑】のような妄想を抱いていた私の耳に、部長の先輩の無慈悲な号令が飛び込んできた。


「よし、挨拶はここまで!じゃあみんな楽器はいいだ廊下に並んで。いつものやるよ!」


(………え?いつものって何?)


先輩たちが手慣れた様子でブレザーを脱ぎセーラー服の裾をハキハキと捲りながら廊下へと出ていく。


私達1年生は、何が始まるのかも分からず、ただ不安そうな顔を見合わせながら、ぞろぞろとその後に続いて音楽室の外へと出た。


長い北校舎の廊下。


窓の外には、夕日に照らされた運動部は大変そうだな、なんて他人事のように思っていた次の瞬間、先輩たちは廊下の床に、一斉に横に仰向けになった。


「1年生も同じように横に並んで!はいよーいスタート!」


先輩に促され、私も慌てて床に仰向けになり、言われた通りに上半身を持ち上げるように腹筋をする。


(20回)


そして次は仰向けになり足を持ち上げて床スレスレにキープして20回深呼吸をしながら


(な、なにこれ…っ。?!)


そして手と足を廊下につけて上下に動かす(20回)


音楽室で見せていたあの優しい笑顔はどこへやら、先輩たちが鬼のインストラクターのような鋭い声で廊下に声が響かせる。


周りの1年生からも、「ううう…」「きつい…」という絶望的なうめき声が漏れ始めていた。


(ちょっと待って…これ本当に文化部だよね…?)


私は必死に歯を食いしばりながら、心の中で猛烈に突っ込みを入れていた。


内申点のため、大声を出す運動部を下げるため、大好きなクラシック音楽に静かに関わるためには入ったはずだった。


窓の外で見える陸上部やサッカー部の汗まみれの姿と、今埃っぽい廊下へ必死に震えに耐えている自分たちの姿が、完全に重なって見える。


(話が違う…。吹奏楽部って…こんなにゴリゴリの運動部だったの…?)


5月の爽やかな青空とは裏腹に、私の吹奏楽部生活は全身を襲う凄まじい筋力の痙摩と共に、衝撃的な幕を開けたのだった。





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